ドイツでは、任期満了に伴う連邦議会選挙が4週間後に行われる。最新の世論調査によると、何ヶ月も前から負けを予測されていた社会民主党が支持率トップに躍り出てきている。一方、16年間ドイツを率いてきたアンゲラ・メルケル首相が所属するキリスト教民主党は支持率獲得に苦戦している。
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『RFI』によると、緑の党が当初リードしていたものの、後退し、与党であるキリスト教民主党も、メルケルに代わり新しい党首となるアルミン・ラシェットが説得力に欠け、最下位となっている。代わりに社会民主党がトップに躍り出てきた。社会民主党党首で現財務大臣であるオーラフ・ショルツ氏は、住宅、年金、最低賃金の引き上げなどの社会的側面を強調した選挙キャンペーンを繰り広げている。「就任1年目に1千万人の賃上げと、最低賃金を時給12ユーロ(約1500円)に引き上げることを誓う」と主張している。
米『CNBC』は、ドイツの次期選挙は、今まで以上に予測不可能になっていると伝えている。最新の世論調査によると、社会民主党(SPD)の支持率は23%に上昇した。一方、与党で保守連合のキリスト教民主・社会同盟の支持率は30%台から22%に低下した。社会民主党がキリスト教民主・社会同盟を上回ったのは15年ぶりのこととなる。
コンサルティング会社Teneoのリサーチ部門の副部長であるカールステン・ニッケル氏は、「投資家は、まず、ショルツが中道左派の社会民主党の中では、保守寄りの中道派であることを公言していることを念頭に置く必要があります。社会民主党はキリスト教民主・社会同盟よりも、グリーンエネルギーへの転換やデジタル化、さらには健康や住宅といった分野への投資に積極的です。しかし、健全な財政から逸脱することは、ショルツの選択肢には入っていません。」と述べている。
米『ナショナル・インテレスト』は、ドイツの歴史の中で、保守系与党であるキリスト教民主同盟にとって、世論調査の結果がこれほど悪かったことはないと報じている。2020年4月の時点では、38%の支持率で世論調査をリードしていた。現在は21~24%にまで落ち込んでいる。人気が低下している理由の1つは、非常に弱い首相候補を擁していることだ。現在、ドイツで最も人口の多い州の首相であるアルミン・ラシェットは、これまでのところ、党内と有権者の両方にインパクトを与えることができていない。
一方、社会民主党は近年、ますます極左に傾いているという。党ではザスキア・エスケンとノルベルト・ヴァルター=ボルヤンスを共同党首に、ケビン・キューネルトを副党首に選出した。この3名はいずれも、極端な左翼的な立場をとっている政治家である。社会民主党の党員たちは、党首を選ぶ際に、これらの極左候補を支持し、オーラフ・ショルツを退けた。それにもかかわらず、なぜ「中道派」のショルツを首相候補にしたのか。『ナショナル・インテレスト』は、米国で民主党が中道派のバイデンを大統領候補に選んだのと同じ理由であると主張している。ショルツを使って、穏健派の有権者を動員する狙いがあるという。
現在、有力な世論調査では、社会民主党、緑の党、そして左翼のダイリンケの連立が有力視されているという。ほんの数年前まで、社会民主党は連邦レベルでのダイリンケとの連立を否定していた。それは、ダイリンケが、東ドイツを統治していた旧共産主義政党ドイツ社会主義統一党が名前を変えただけの強硬左派政党だからである。国有化、最高税率75%、NATOからの脱退などの大規模なプログラムを掲げている。数ヶ月前まで、新党首のジャニン・ヴィスラーは、過激なトロツキストグループのメンバーでもあった。
ドイツの首都ベルリンは、すでに社会民主党、緑の党、そしてダイリンケの連立政権となっている。緑の党とダイリンケは、市内に3千戸以上の賃貸アパートを所有する住宅会社の所有権を取り上げる運動を支持している。そして3党はいずれも、1997年にドイツで廃止された富裕税の再導入を目指している。
『ナショナル・インテレスト』は、この3つの政党による連立政権が誕生するならば、ドイツは大きく変わるだろうと伝えている。ドイツの防衛費は他のNATO加盟国に比べてすでに低いにもかかわらず、更なる防衛費を削減することを約束している。メルケル首相がすでに始めているドイツ市場経済の計画経済への転換は、この3党によって大幅に加速されることが予測できる。3党がすでに政権を握っている首都ベルリンでは例えば、家主に既存の賃貸物件の賃料を大幅に引き下げることを強要する法律を可決した。この法律は、一部の不動産所有者の所有権の募集に他ならない。ドイツの最高裁判所はこの法律を違憲としたが、社会民主党とダイリンケは、ドイツ全体に適用される同様の法律の導入を目指している。
さらにベルリンでは、政治的な自由、特にデモをする権利が強い圧力にさらされている。左翼的なデモはほぼ認められているが、例えば政府のコロナウイルス対策を批判するデモは禁止され、警察が力を持って解散させている。3党の連立政権が誕生した場合、ベルリンで起きていることが、ドイツ全体に広がることが予見できる。9月26日の投票結果次第では、今後何年にもわたってドイツの政治的状況を根本的に変える選挙になるかもしれない。
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26日、カブール空港付近で大きな爆発が2回起こり、数十人が死亡した。いくつかの国はすでに国外退避の活動を中止しているが米国は現在も、すべての自国民の居場所を突き止め、8月31日までに脱出させようとしている。
26日の夜、数千人の人々が集まっているカブール空港の近くで、大きな爆発が2つあった。仏
『レゼコー』は、12人のアメリカ人を含む数十人が死亡したと伝えている。この自爆テロは、「イスラム国」グループが主張するもので、米国、オーストラリア、英国がテロ攻撃の「非常に高い」脅威を警告した数時間後に発生した。
『レゼコー』は、アフガニスタンからの避難は、急ぎ足で、そして混乱の中で完了しようとしている、と伝えている。
26日夜には、フランスのマクロン大統領はこの攻撃を強く非難し、バイデン大統領は「イスラム国」グループに報復すると宣言した。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、安全保障理事会の会合を招集した。
タリバンに命を狙われている外国人やアフガニスタン人を脱出させるフライトのペースが、ここ数日で加速しているという。24日から25日までの24時間で約1万9千人、25日から26日までの24時間で約1万3400人が欧米の90機の航空機で脱出した。米政府によると、8月14日以降、総勢9万5700人が避難したという。しかしテロの脅威がタイトなスケジュールに拍車をかけている。米軍撤退の期限である8月31日が近づいており、米国は最後の数日で軍備や兵士の避難を促進する計画を立てている。
状況が悪化していることから、いくつかの国ではすでに避難活動を終了させており、ベルギーは8月14日の空輸開始以来、合計1400人、オランダは1500人の避難を完了させた。カナダとデンマークも自国民やアフガニスタン人の国外退避を完了させている。フランスは27日の夜に最後のフライトを飛ばすことを発表した。マクロン大統領は、あと「数百人」のアフガニスタン人を避難させようとしている。トルコは、米軍と一緒に空港を守っていた兵士の撤退を開始した。
一方、イギリスとドイツはまだ終了時期を発表していない。両国では、既にそれぞれ1万1500人と5200人近くが避難している。米国も避難活動を継続している。25日時点で1500人の民間人がまだ残されており、そのうち500人がフライト出発のために待機していた。米国大使館は、退去を促すメッセージにまだ応答していない約1千人の市民と、大使館に登録していない可能性のある人々の所在を確認しようとしている。
しかし、米国では、カブールの米国当局者が、タリバンが支配する空港外周への入場を許可するために、米国市民、グリーンカード保有者、アフガニスタンの同盟国の名前のリストをタリバンに提供していたことが明らかになり、避難にさらされている。
米議会関係者3人が米誌『ポリティコ』に語ったところによると、リストの提供は、先週アフガニスタンの首都がタリバンに支配されて大混乱に陥った際に、数万人の人々のアフガニスタンからの避難を迅速に行うためのものであったという。また、バイデン政権が空港外の警備をタリバンに頼っていたことも背景にある。8月中旬のカブール陥落以来、約10万人が避難してきたが、そのほとんどがタリバンの多くの検問所を通過しなければならない。
しかし、紛争中にアメリカなどの連合軍に協力したアフガニスタン人を残酷に殺害してきた過去を持つタリバンに具体的な名前を提供するという決定は、米議員や軍関係者の怒りを買っている。匿名を条件に話した国防省当局者は、「基本的に、彼らは協力していたアフガニスタン人を殺害リストに載せたことになる」と語った。「ぞっとするものであり、衝撃的であり、気分が悪くなる」と述べている。
なお、米誌『ナショナル・インテレスト』は、「バイデンは、今月末までに米軍を撤退させるという約束を守らなければならないと思っているようだ。しかし、バイデンは、タリバンが2020年2月29日のトランプ政権との合意を大きく2つの点で破り、今も破り続けていることを忘れてはならない。」と伝えている。
1つ目は、アルカイダとの関係を断ち切るという合意だ。これは一貫して無視されている。タリバンの指導者の中に武装組織グループのハッカニネットワークの上位の人物がいることや、国連が今年の初めに発表した報告書で明らかになっている。2つ目は、ガニ政府や他のアフガニスタン人との和平交渉に真剣に取り組み、権力分立のためのロードマップを作成するという合意を、タリバンは真剣に受け止めなかった。
そのため、同誌は、「バイデン氏は、2月29日の合意で定められていた2021年5月までにアフガニスタンからすべての米軍を撤退させることに法的な義務を負っていない。同様に、他の日付にも縛られていない。それらは目標であって、厳粛な約束や法的義務ではない。さらに、アメリカは今月、数千人の部隊をアフガニスタンに送り返す許可を求めなかった。なぜ米軍は仕事を終わらせる許可を求めなければならないのか。」と問うている。
そして、「同胞や同盟国への攻撃のリスクを回避するために、ワシントンからのこの最新の約束を守れというタリバンの要求に屈することは、何十年もの間、年間何千人もの罪のないアフガニスタン人を殺してきた無法者で殺人鬼、そして麻薬取引集団に、ある種の道徳的優位性を譲歩することになる。」と主張している。
さらに同誌は、そうすることは、タリバンに対するアメリカの影響力を無視することになると伝えている。「第1に、アメリカはタリバンのリーダーが国を統治するための政府機関と本部の場所を把握しており、タリバンが米国人や協力者を標的にした場合、直接報復するための多くの選択肢を持っている。第2に、アメリカと協力者、そして同盟国は、世界の中での優勢な立場にあることでタリバンを外交的に承認する可能性をコントロールしている。第3に、アメリカはアフガニスタン全体、特にタリバン指導者の金融資産のほとんどを掌握している。第4に、NATOの同盟国や日本などと協力して、ペシャワール、クエッタ、ドーハでの豊かな生活に慣れたタリバンの指導者たちが欲しがっている海外援助の財布をコントロールしている。」
同誌は、「アメリカがどれほどの影響力を持っているかを忘れてしまうのは大きな間違いである。10日、20日、30日、あるいは最終的に必要と思われる期間を延長して滞在することは、勇敢な友人や同盟国に敬意を表し、それを守るという意味で正しいことであるだけではない。それは、タリバンだけでなく、世界の他の国々から見ても、アメリカの信頼性を回復するプロセスを開始するために必要なことである。」と指摘している。
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