米大統領選挙の2回目の討論会では、共和党ドナルド・トランプ候補、民主党ヒラリー・クリントン候補が市民からの質問に答える形式で行われた。民主党のクリントン氏が優勢となったが、窮地のトランプ氏も前回の討論会よりうまく乗り切ったとされる。トランプ候補は、過去ビル・クリントン元大統領に性的被害にあい両者から攻撃を受けたとする被害者を参列させ、個人攻撃に時間を割いたが、ヒラリー候補は終始冷静に対処。一方、先週暴露された「ロッカールームでの雑談に過ぎない」というビデオによる女性蔑視発言などで求心力が低下し窮地のトランプ氏も持ちこたえたとの一定の評価が多い。しかしエネルギー問題に触れず低レベルな人格否定に終始する討論会に世界の視聴者からは史上最低の討論会との落胆の声が多かった。
10月10日付米
『デッドラインハリウッド』は「世界のメディア、トランプVSクリントン2回目の討論に米国民主主義の危機」との見出しで次のように報道している。
・大統領候補による第2回討論会に対する欧州を中心とする世界の反応。米国の政治システムはかつてないほど危機的状態。
・英国左派「ガーディアン」紙は「私はジェントルマンだと言いながら侮辱攻撃」と見出しをつけ、今回の討論会は240年の米国共和党の歴史上類を見ない最悪のもの。子どもたちに「公民」の学習機会をとTVを見せていた親は午後9時の討論の山場には子どもたちを寝かせたほうが賢明であるとあせった事であろう。
・英国右派「テレグラフ」紙は、トランプ氏は「クレイジーな候補」でクリントン氏は「ひどい候補」、この異常な基準に従ってのみトランプ氏の勝利とみる。共和党からも見放され、選挙撤退が見えてきたと仮定し、はちゃめちゃをするとの予測からすれば、トランプ氏はなかなかの検討だった。クリントンの周りをぐるぐる回って相手からの人格への攻撃をかわした。低レベルの基準だが、うまくすり抜けた。
・ドイツ「シュピーゲル」紙は、「トランプの心理戦」と見出しをつけ、両候補が繰り返しののしりあった、
政治的ボディランゲージをすべて駆使し、互いに相手を遠慮なく侮辱し合った最悪の選挙戦と報道。
・フランスでは、米国の討論会は大きく報道されつつ、1面は来年のフランス国内の大統領選を憂慮し、有力候補のニコラス・ サルコジ氏とアラン・ジュペ氏の記事だった。「フィガロ」紙はトランプ氏の好きな言葉は 「災難」「大参事」だとし、米国が抱える課題への建設的討論からほど遠く、討論会は弾が低レベルに飛び交うネズミの競争であった。どちらの候補にもなびく有権者はいなかったのではとした。左派「リべレーション」紙はトランプ氏は討論後かつてなく孤立、1年半に及ぶ選挙戦で、両候補への不信感は最も顕著となったと報道。
・イタリア「コリエール・デッラセラ」紙は、「クリントンの大打撃は逃したがトランプは喜べない」との見出しで、「トランプ氏の成功点は、やられっぱなしではなかった点のみ」とした。
大打撃を受けながら未だかろうじて参戦するトランプ氏、代理候補らが強敵だと懸念されるため、トランプは弱体化したまま参戦を続けるとする。
・イタリア「ラ・レプブリカ」紙は、世界の大半の反応と同じであるが、米国の民主主義が病んでいる、両候補の互いへの非道ぶりで討論が終始している。これほどの敵意、侮辱応酬が近年あっただろうか、と報道。結論として、トランプ氏は最初の討論会よりはうまくやった。それこそが彼にとって「災難」となる。
・一方、中国は、「人民日報」オンライン版(英語)で、討論会のニュースには触れず、「トランプ、クリントン第2回米大統領候補者討論会に参加」と見出しをつけ、写真を掲載したのみ。「新華社通信」も同様に写真と要約のみを掲載。「上海日報(AFP通信引用)」は「トランプは開き直ってビルクリントンに向け攻撃」と見出しをつけた。
・「アルジャジーラ」はトランプ氏は最初の討論会より冷静にメッセージを伝えたが、選挙に勝つには、その器を大きくしなければいけないとした。
同日付米国
『ニュースウィーク』は「欧州の反応、ドナルドトランプとヒラリークリントンのTV討論会」
との見出しで以下のように報道している。
・トランプ氏は自分が大統領になったらクリントン氏は刑務所行きだと主張。クリントン氏は、前週金曜に暴露されたトランプ氏の性的暴行を擁護する発言があったテープの件を持ち出した。
・世界中からの反応。英国では、ブレグジット派で独立党ナイジェル・ファラージ党首に注目が集り、同氏は討論会ではトランプ氏が勝ったと示唆。
・スウェーデンのカールビルト元首相は、討論会を見なくてよかったという。テープが暴露されてから、トランプ氏不支持を表明していた。
・フランスでは、コメンテーターが、トランプ氏を長く支持していた極右政党のマリーヌ・ル・ペンに加え、大統領候補で共和党のニコラス・サルコジ氏もイスラム拡大に関して、トランプ氏のレトリック手法を真似ていると指摘。一国主義により世界でのフランスの格下げを進めることで「パリのエリート層」を敵に回しているとした。
・オーストリア出身で共和党のアーノルドシュワルツネカー元加州知事は、共和党員の誇りもあるがそれ以前に米国市民であるとし、トランプ候補を阻止(ターミネート)するべく奔走。
同日付米国
『CNN』は「ドナルドトランプの課題:来月クリントンの人生をめちゃくちゃにすること」との見出しで以下のように報道している。
・日曜夜、トランプ氏は今後30日間クリントン氏を陥れるための手段は選ばないとする脅しを表明。TV討論会では、ビル・クリントン氏と娘が出席する中、ビル氏に暴行されたとされる女性らを出席させ、ビル氏とヒラリー氏が被害者を攻撃したと主張。ヒラリー氏は公然と私的尊厳が傷つけられる危機となる。
・討論会ではクリントン氏は終始平静を示し、トランプ氏が期待するほどの打撃はなかった。クリントン陣営は、トランプ氏のビル氏スキャンダルへの攻撃に極力乗らないように努めた。今後もどんな攻撃をもかわす準備だという。
・CNN/ORCの世論調査では、視聴者の57%がクリントン氏が勝利、34%がトランプ氏勝利と回答。 討論会視聴者の集計のため全国民の集計より数値が高め。
・金曜、10年以上前のトランプ氏の女性への横暴な扱い方が収められたビデオが公開され、共和党の支持が減り、同氏は窮地に。「トランプ氏は否定するが、これがトランプ氏が女性をどう見ているか、彼がどんな人かを示している。」と討論会でクリントン氏。低レベルなTV討論会に嘆きの声が方々から上がり、トランプ氏は支持率を落とす。
同日付英国
『BBC』は「トランプ対クリントン:討論会の勝者は?」との見出しで以下のように報道している。
・両候補の性的不道徳への応酬は、両者ともすぐに自爆するだろう。クリントン氏は対話集会の慣習通りふるまったが、トランプ氏は相手の後ろに回り、相手が話す間しばしば睨みつけ、うろうろ歩き回り、終始十分な時間が与えられないと司会者らに不満をいい、「3対1」だと言い放つ場面も。
・市民からの質問が保険改革に及ぶとクリントン氏は保険改革と法改正を熱弁。一方トランプ氏は現法をこき下ろし、「競争による良い新案」などど言葉を並べただけで負担増加なく、現行の保険の恩恵を得られる具体策は無かった。税制度に関しては、大きくカットするとし、クリントンは増税を述べた。
・シリアへの軍事作戦に関しては、トランプ氏は襲撃しアレッポは勝ち目がないとし副司会者と論争になった。副大統領候補のマイクペンスともシリアで考えが異なるとも発言。
・トランプ氏は、イスラム教徒への対策について、アメリカのイスラム教徒は「何か事件を見たら報告する」義務があると発言。シリア難民は「トロイの木馬」、メキシコから違法薬物も入ってくる、非登録移民の多くは犯罪者だとした。クリントン氏は米国への難民を受け入れるとし、トランプ氏のイスラム教徒入国禁止撤回をついた。
・市民は外交、税制、保険改革面でクリントン氏と考えが異なっても大方は一致。エネルギー政策の要の環境や気候変動への言及がなかった。
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