先月のパリでのテロ事件以来、ヨーロッパによるイスラミック・ステイトへの攻撃が一層強くなってきている。ドイツは自国の憲法の制約から直接の攻撃はできないが、支援という形での参加が先週金曜日に議会で可決された。各メディアは以下のように報じている。
12月4日付
『CNN』によれば、ドイツは4日に議会でイスラミック・ステイトへの攻撃における支援を強化する議決がなされたという。議決の内訳をみると、賛成445票、反対146票、棄権が7票だったという。そして、ドイツは第二次世界大戦後に制定された憲法により他国での戦闘の参加が禁じられており、空爆などの直接的な攻撃はできないが、支援の形での参加を強化する方針だという。例えばハイテク機械を搭載した偵察機をシリア上空に飛ばし、他国軍が空爆の標的を定めるのを助けることが挙げられるという。また、これに伴い直接軍事行為は行わないものの、1200人のドイツ兵が派遣される予定だという。
今回の投票はフランスから支援を求められたメルケル首相が協力を約束したことを追認したものだという。今回の兵の派遣では、先述の偵察機に加えて、他国の航空機に対する燃料補給や、フランス軍の空母、シャルル・ド・ゴールの海洋上での護送を行うことが予定されているという。
12月4日付
『ヤフー.com』も、ドイツ議会が他国に協力する形でイスラミック・ステイトへの攻撃に参加することを報じているが、やはり憲法上の制約からあくまでも間接的な支援にとどまることを報じている。同記事はメルケル首相と同じ政党に所属し、外務委員会の委員長をを務めるレットゲン氏の議会での発言を載せている。「我々は長いこと傍観者の立場であったが、軍事的にも外交的にも行動を起こすことが我々の責務である」。
同記事は「BBCニュース」の記事を引用し、ドイツ軍はシリアの内外の、議会が承認を与えた地域内で活動をする予定だと伝えている。例えば地中海東岸、紅海、およびそれらの隣接地域が挙げられている。ドイツは昨年から、イスラミック・ステイトと戦うクルド族に対して支援を行ってきている。それまでドイツは紛争地域に武器支援を行っておらず、この決定がドイツの軍事的政策の大きな転換点であったと、同記事は伝えている。先月13日のパリのテロ事件以来、ヨーロッパのリーダー達はテロ集団への攻撃を強化すべきだという強い世論に後押しされているという。イギリスも先週の木曜日にシリアにあるイスラミック・ステイトの拠点への、アメリカによる攻撃への参加を決定したばかりである。
イスラミック・ステイトへの攻撃はアメリカ、フランス、トルコ、イギリス、だけではない。最近ではオーストラリア、バーレーン、カナダ、デンマーク、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦も参加していると同記事は伝えている。
しかしながら、今回のドイツの軍事的支援に対しては、国内でも反対の意見もあるという。反対派はドイツ国内でのテロの恐れが高まると主張しているという。また、イスラミック・ステイトへの攻撃が強まれば強まるほど、イスラミック・ステイトへの支援が集まる可能性もあると指摘する者もいるという。
今回のドイツの軍事的支援は1億4500万ドル(約179億円)に上る見込みだという。
12月4日付
『デイリーコーラー』(アメリカ)はドイツが今回の軍事的支援の一環として6機のトーネードという全天候型多用途攻撃機を配備する予定であると伝えている。ドイツの国防相であるライエン氏は「我々の目標はイスラミック・ステイトを封じ込め、彼らの拠点を破壊し、彼らの持つ世界的な影響力を断つことだ」と語ったという。同氏は、シリアのアサド大統領との関連性について尋ねれらると、「今回の派遣はアサド大統領、およびその軍隊とは一切関係が無いことを強調しておかなければならない」と語ったという。ただ、この意見に関してはアメリカのケリー国務長官からは「アサド大統領はしかるべき時が来れば退陣の可能性もある」との発言がなされており、ヨーロッパ諸国内でも意見は完全に一致しているとは言えないという。
ヨーロッパ各国ではイスラミック・ステイトへの攻撃に参加する動きが加速化している。この動きが強まればいずれ日本も参加する可能性がゼロとも言えまい。
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