アゼルバイジャンとアルメニアが一触即発の臨戦態勢
アゼルバイジャン西部の地域であるナゴルノ・カラバフ。地理的にはアゼルバイジャンとアルメニアの両国に接し、国連はアゼルバイジャンの領土とするものの、アルメニア人が多く居住する。この地域をめぐっては両国間で紛争の対象となっている。2国間の紛争は100年以上前に遡り、1994年に停戦合意がなされていたが、小さな諍いは絶えなかった。そんな中、当該地域で両者が軍事衝突し、両国併せて、子どもを含む少なくとも30人が死亡した。これにより両国間の緊張関係は一気に高まり、一触即発の状態となっているという。各メディアは次のように報じている。
4月2日付
『デイリーコーラー』(英)は、同地域で軍事衝突が起き、少なくとも30人が死亡したと報じる。この軍事衝突は現地時間の4月2日に勃発し、両国が互いを停戦合意を破ったと主張しているものの、事実関係は明らかにされていないという。
今回問題となっている地域の名前のうち、「カラバフ」はトルコ語やペルシャ語で「黒い庭」を、「ナゴルノ」はロシア語で「山」を意味するという。...
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4月2日付
『デイリーコーラー』(英)は、同地域で軍事衝突が起き、少なくとも30人が死亡したと報じる。この軍事衝突は現地時間の4月2日に勃発し、両国が互いを停戦合意を破ったと主張しているものの、事実関係は明らかにされていないという。
今回問題となっている地域の名前のうち、「カラバフ」はトルコ語やペルシャ語で「黒い庭」を、「ナゴルノ」はロシア語で「山」を意味するという。名前も複数の言語に由来することからも分かるように、この地域は複数国家の支配を受けてきた歴史がある。二国間の同地域をめぐる争いは1923年、両国がそれぞれ独立国家となった頃に始まった。しかしその後同地域は1923年にソ連に支配されることとになった。ソ連の共産主義の崩壊とともにこの地域は宙に浮いた状態となり1991年から1994年にかけて再び戦争が再燃、1994年にロシアが仲介役となり停戦合意が成立した。しかしながら、戦争勃発前もアゼルバイジャン領とされる同地域の居住者でアゼルバイジャン人が占める割合は25%にすぎず、同地域内ではアルメニア人の独立運動が盛んに行われてきた背景がある。
今回の緊張状態を受けて、アゼルバイジャンと国境を接するロシアは両国に対し、自制と対話を促している。
4月2日付
『ザ・ガーディアン』(英)は同地域での平和維持に関し、欧州安全保障協力機構(OSCE)が関わってきたものの、効果はほとんど上がっていないと報じる。OSCEとは北米、欧州、中央アジアが加盟する世界最大の地域安全保障機構である。和平交渉はロシア、アメリカ、フランスを中心に進められていたが、実質的には膠着状態にあったとされている。
今回の軍事的衝突は1994年の停戦合意以来最大規模のものであったという。
4月3日付
『BBC』(英)は今回の衝突を受けて、ロシアのみならずトルコのエルドアン大統領がアゼルバイジャン側支持のコメントを発表したと報じる。アルメニアは18世紀、オスマントルコ帝国の侵入を阻止した歴史がある。その際、トルコ側は否定しているものの、アルメニア人の「大虐殺」があったとされる。また、宗教も7割以上をキリスト教徒が占め、トルコとの関係は良好とは言えない。一方でアゼルバイジャンは民族的にトルコに近く、トルコとは友好関係にある。エルドアン大統領はまた、前出のOSCEを「状況を楽観視しすぎていた」と批判する。「OSCEが適宜、適切な対応をしていれば今回の事態は防げたはずだ。しかしながらOSCEの組織としての弱さが今回の事態を招いたといえる」。
アルメニアは宗教的立場からもロシアに近いといえる。他方アゼルバイジャンはトルコと親しい。今回の件で、シリア和平交渉でも意見を異にするロシアとトルコの関係がさらに悪化する可能性も考えられる。また、トルコはNATO加盟国であり、2005年に準加盟国となったロシアとの関係が悪化すれば、NATO内部にも影響を及ぼす事態もあり得よう。
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オバマ大統領最後の大仕事か、イギリスのEU残留を求めて訪英
「Brexit」(ブリグジット)などという造語ができるほど、イギリスのEU離脱問題はイギリス国内やEU圏のみならず、世界からも注目を集めている。そんな中、イギリスのEU離脱に対しかねてから懸念を表明していたオバマ大統領が、イギリス国内で行われるEU離脱の国民投票(6月23日)の1か月ほど前に訪英し、イギリス国民にEU離脱を思いとどまるよう働きかけるのではないかとの情報が飛び交っている。オバマ大統領の介入に、EU離脱賛成派は猛抗議を繰り広げいてる。各メディアは以下のように報じている。
3月13日付
『デイリーコーラー』(英)は、EU離脱の国民投票が行われる約1か月前の4月に訪英し、イギリスのEU残留のためになんらかの行動を行う予定であると報じている。これに対しては、離脱賛成派の議員からは訪英反対の声が上がっている。保守党のボーン議員らは「他国の問題に口出しするのはおかしい。言いたいことがあっても、胸の内にしまっておくべき」と語っている。
オバマ大統領はドイツで行われる技術系のサミットに出席する途中で訪英する予定であることが「インディペンデント」紙のキャメロン首相側への取材により明らかになっている。...
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3月13日付
『デイリーコーラー』(英)は、EU離脱の国民投票が行われる約1か月前の4月に訪英し、イギリスのEU残留のためになんらかの行動を行う予定であると報じている。これに対しては、離脱賛成派の議員からは訪英反対の声が上がっている。保守党のボーン議員らは「他国の問題に口出しするのはおかしい。言いたいことがあっても、胸の内にしまっておくべき」と語っている。
オバマ大統領はドイツで行われる技術系のサミットに出席する途中で訪英する予定であることが「インディペンデント」紙のキャメロン首相側への取材により明らかになっている。この「絶妙な」タイミングでの訪英に、かねてから強い懸念を表明していたイギリスのEU離脱問題にオバマ大統領が一切コメントしないというのは考え難いだろう。昨年7月にもオバマ大統領はイギリスのEU離脱問題についてのコメントを発表している。「イギリスがEUの一員であることにより、アメリカは環大西洋地域の強固な安定性が保たれていると確信することができた。第二次世界大戦後、世界をより安全で発展的なものにする上で、イギリスのEUでの存在は重要な要素であり、アメリカはイギリスのEU残留を切望している」。
同日付
『ポリティコ』(ベルギー)は、イギリスが国民投票を間近に控えて神経をとがらせていると報じる。EU離脱派は、イギリスにとって大事な時期にオバマ大統領がやってくることにより世論が大きく変わることを恐れている。オバマ大統領が訪英してこの問題に言及することを食くい止めようと、オンライン上ですでに1万6000人の署名を集めている。他方、EU離脱反対のオズボーン財務大臣は「EU離脱によりもたらされる影響は計り知れず、経済状況の悪化も懸念される。オバマ大統領がこの動きを食い止めてくれれば」と語っているという。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)はアメリカの大統領候補の一人であるクルーズ氏が今回のオバマ大統領の訪英予定を酷評している旨報じている。同氏はイギリスのEU離脱がアメリカの安全保障に悪影響を及ぼすかどうかには明言を避けたものの、演説の中でイギリスへの介入は米英関係の悪化、信頼関係の破壊をもたらすと批判している。
EUは世界のGDPの約3分の1を占めており、EUを離脱することはイギリス経済にとって得策とは思われない。ではなぜイギリスではEU離脱の世論が強まっているのか。その大きな理由の一つとして挙げられるのが、EUの財政規律強化であるといわれている。これはドイツが中心となって進めているものであり各国の債務危機を招くような財政規律のゆるみを防止すべく定められている。規律に反した場合には是正措置などの介入もありうるというものである。イギリスはユーロを導入していないので直ちにこの財務規制を受けることはないが、ドイツが牛耳るEUへの反発は強いものとみられている。
しかし、このままイギリスがEUを離脱することになれば、イギリス経済の弱体化、アメリカとの関係の変化のみならず、イギリスを失ったEU自体の方向性など、懸念材料は山積みである。国民投票まで目が離せない状況が続く。
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