中国は、韓国や日本と同様、出生率低下による人口減少問題に直面しつつある。そこでこの程、出生率低下阻止のため、女性の卵子凍結や体外受精等を公費で支援する出生促進政策を実施することになった。
6月15日付
『ロイター通信』、6月16日付英国
『ザ・テレグラフ』紙は、中国当局が近年の出生率低下に伴う人口減少問題に対応するため、体外受精等を支援する出生促進政策に踏み切ることにしたと報じている。
北京市人民政府は6月15日、近年の出生率低下を食い止めるため、7月1日以降公費で様々な出生促進政策を実施する旨発表した。
同政府傘下の医療保障局の独信副局長(ドゥエ・シン)によると、体外受精、受精卵移植、精子凍結・保存措置等、16に上る様々な不妊治療行為を保険で賄う等で支援するという。
同政策実施に至る背景として、今年1月、中国の2022年における人口が14億1,180万人と、前年比▼85万人(出生数956万人、死者数1,041万人)と初めて減少に転じたことが挙げられる。
すなわち、2022年出生率が1千人当り6.77人と、直近60年間で初めて前年より大幅に減少(2021年は7.52人)した上、2023年も減少傾向が続くとの予測が明らかになっている。
(編注;2021年の米国における出生率は11.06人、英国10.08人、インド16.42人)
これに先立って中国国家衛生健康委員会(1949年前身設立)は昨年8月、出生率向上のため地方政府に対して具体的な施策実施に向けてのガイドラインを発信していた。
これに沿って中国北東部遼寧省政府(リャオニン)も5月、7月1日以降出生率向上のための支援策を講じると発表している。
ただ、これら支援策の対象は婚姻女性とされていて、未婚の女性は対象外となっている。
この措置に対して、中国政府政策顧問らが今年3月、未婚の女性に対しても卵子凍結・体外受精等の支援を認めるよう提言していた。
かかる状況下、未婚の35歳の北京市在住の女性が北京市公立病院を相手取って、自身の卵子凍結要請が拒否されて権利が侵害されたとして裁判を起こしている。
一方、中国では1979年から施行された一人っ子政策(注1後記)のため、男女間に異常なアンバランスが生じていて、男性が女性よりも3,700万人も多く、婚姻の減少にも繋がってしまっている。
更に、同政策の弊害として、少子高齢化が進む状況となっていて、2035年までには60歳以上の高齢者(注2後記)が4億人超となると見込まれている。
(注1)一人っ子政策:1979年から2014年まで実施された産児制限政策。原則として一組の夫婦につき子供は一人までとする計画生育政策。家父長制の中国では、同政策下で男児が最優先された。2015年から2021年までは一組の夫婦につき子供二人までとされていたため、俗に二人っ子政策と呼称。
(注2)高齢者:国連の定義は60歳以上で、世界保健機関(WHO)では65歳以上。日本の雇用関連の法律上では55歳以上、医療制度上は65~74歳が前期高齢者、75歳以上が後期高齢者と規定。
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既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳)は、自身が議事堂襲撃事件扇動容疑や機密文書の無許可持ち出し等で訴追の恐れがあるだけでなく、オーナー企業に対して脱税に伴う罰金刑が科される等、窮地に追い込まれている。しかし、米共和党員は、多少悪でも強いカリスマを求めているのか、直近で行われた世論調査の結果、依然トランプが他候補を圧倒し2024年大統領選の共和党候補筆頭となっている。
1月18日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、「ドナルド・トランプ、2024年大統領選共和党候補予備選で2桁以上のリード」と題して、様々なスキャンダルに見舞われているものの、依然共和党有権者からの支持率が他を圧倒して最も高いと報じている。
直近で共和党有権者に対して行われた世論調査の結果、ドナルド・トランプ前大統領が半分近くの48%の支持を集め、依然2024年大統領選共和党予備選候補の筆頭となっている。
データ収集・分析会社の『モーニング・コンサルト』(2014年設立)が1月14~16日の間、共和党有権者3,763人から得たアンケートの結果、次のように、2位となったロン・デサンティス氏(44歳、フロリダ州知事、2019年初当選)を17%も引き離している。
●ドナルド・トランプ:48%
●ロン・デサンティス:31%
●マイク・ペンス:8%(63歳、前副大統領、2017~2021年在任)
●リズ・チェイニー:3%(56歳、ワイオミング州選出下院議員、2017年初当選、反トランプ急先鋒)
●ニッキー・ヘイリー:2%(50歳、元国連大使、2017~2018年在任)
●テッド・クルーズ:2%(52歳、テキサス州選出上院議員、2013年初当選)
●グレッグ・アボット:1%(65歳、テキサス州知事、2015年初当選)
●クリスティ・ノウム:1%(51歳、サウスダコタ州知事、2019年初当選)
●マイク・ポンペオ:1%(59歳、元国務長官、2018~2021年在任)
●ティム・スコット:1%(55歳、サウスカロライナ州選出上院議員、2013年初当選)
●グレン・ヤンキン:0%(56歳、バージニア州知事、2022年初当選)
上記調査結果は、昨年12月18日時点のものと大差なく、トランプは48%を維持したが、むしろ2位のデサンティスが前回の33%より若干下げている。
ただ、今回トランプを支持した有権者のうち44%は、2番手候補としてデサンティスを支持しており、また、デサンティス支持者のうち37%がトランプを次点としている。
なお、上記のうち、2024年大統領選への出馬を表明しているのはトランプだけで、デサンティスは何も具体的なことを言っていないが、トランプはデサンティスを目の敵にして集中砲火を浴びせている。
すなわち、デサンティスが2019年にフロリダ州知事選で対立する民主党候補に僅か3万3千票差で当選できたのは、トランプ自身が推薦したお陰であって、これなくば敗退していた等々と訴え、“もしデサンティスが自身の対抗馬として大統領選に打って出るというなら、それ相応の覚悟で対応する(叩き潰すというニュアンスの表現)”とコメントしている。
一方、デサンティスは、“(共和党員同士の)内戦”を全否定しただけでなく、同前大統領を批判することも拒んでいる。
1月17日付英国『ザ・テレグラフ』紙(1855年創刊)は、「デサンティスからペンスまで、2024年米大統領選共和党候補の顔ぶれ」として、各々の立候補予定者について詳報している。
ドナルド・トランプ前大統領は昨年11月、他の誰よりも先に2024年大統領選への出馬を正式表明し、他候補の立候補を思い止まらせる作戦に出た。
しかし、正式表明は未だなれど、共和党の著名政治家の多くが立候補するとみられている。
ひとつには、トランプが立候補した場合、2024年時点で78歳の高齢となることから、共和党にとって不利と見る向きがある。
更に、2022年秋の中間選挙で、共和党が上院を牛耳られなかっただけでなく、下院でも辛勝となったことから、多くの一般有権者がトランプに反発した結果だと評価されているからである。
そこで、トランプの対立候補をみていくと、まずフロリダ州知事のロン・デサンティスが最有力候補に挙げられよう。
デサンティスが依然44歳と若く、また、同州知事選挙で競合相手の民主党候補に大差をつけて勝利していることから、特に若い有権者からは、間違いなくトランプより多くの支持を得られると見込まれている。
また、デサンティスが、ヒスパニック(メキシコ系、ラテンアメリカ系米国人)やかつて民主党員だった人からの支持を新たに取り付けていることも大きい。
いくつかの世論調査の結果では、2024年大統領選共和党候補予備選が最初に実施されるアイオワ州及びニューハンプシャー州では、デサンティスがトランプをリードしている。
次に、マイク・ペンス前副大統領。
彼の場合、2021年1月6日の議会で2022年大統領選の結果を承認する手続きの際、トランプの命令に反して任務を全うしたことから、穏健派から称賛されていることが大きい。
特に彼の回想録の中で、議事堂に乱入した急進的なトランプ支持者らから追われた際、何とか逃げおおせた経緯を述べているが、当該蛮行を止めようとしなかったトランプを“無謀”だと非難している。
ペンス自身、大統領選で共和党候補を有利に導くのはトランプよりも自分だと述べているが、一方で、トランプ時代の副大統領であったことから、一般有権者からの支持は高くない。
次は、かつてのトランプ派を任じていたニッキー・ヘイリー元国連大使。
彼女は元サウスカロライナ州知事(2011~2017年在任)であったが、トランプから国連大使に任命されてからは、国連の舞台で一貫してトランプの“MEGA(米国を再び偉大に)”政策を認知させるべく奮闘してきた。
ただ、2021年1月6日の議事堂乱入事件発生以降は公にトランプを非難するようになっていて、(自身の立候補は別にして)共和党は“トランプ方針に従うべきではない”と主張していた。
しかし、間もなく前言を翻し、“共和党にはトランプが必要だ”と言い出しており、大統領選立候補の可能性を含めて、彼女の話には一貫性がない。
次はテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)。
共和党の重鎮のひとりであるクルーズは、党内穏健派から強い支持を受けている。
ただ、2024年選挙時には、上院議員の改選時期に重なるため、まだ態度を決めかねている。
同氏は、上院議員3期目を狙うと表明しているものの、大統領選共和党予備選に打って出る可能性を否定していない。
同氏はトランプの出馬表明について、“予備選を実施しないで本選に臨もうとしているが、対立候補は出てくる”としながらも、“時期尚早で、まだ様々なことを議論する必要がある”とコメントしている。
次にマイク・ポンペオ元国務長官。
トランプの忠実な部下だったこともあり、トランプから目の敵にされることはないとみられる。
長官退任後、体重を大幅に落としてイメージ戦略を展開し、直近では、新刊を持ってメディア回りをして大統領選共和党予備選への出馬を仄めかしている。
なお、同氏は今春までに出馬するかどうか態度を鮮明にするとしている。
次はラリー・ホーガン前メリーランド州知事(66歳、2014~2022年在任)。
ホーガンは、立候補を取り沙汰されている他の候補者と違って、遠慮なくトランプを強硬に批判している。
そこで、反トランプ運動を展開していく上でも、2024年の予備選に打って出ることを前向きに検討していると公言している。
同氏は、昨秋の中間選挙での共和党苦戦結果を受けて、“自身がこれまでメリーランド州で勝ち取ってきたように、共和党はもっと幅広い人たちに支持を訴えていく必要がある”と『CNN』のインタビューに答えている。
最後に、ブライアン・ケンプ現ジョージア州知事(59歳、2019年初当選)。
ケンプは2020年、トランプから大統領選の同州選挙結果を覆すよう命令されたことに従わなかったことで名を挙げた。
ただ、トランプから敵視され、昨秋の中間選挙では、トランプ推薦候補として送り込まれた刺客と同州知事選共和党予備選を戦う必要に迫られたが、見事勝利し、その勢いを駆って本選でも民主党候補に勝って再選を果たしている。
ケンプの場合、新型コロナウィルス対策や、他州に先駆けての行動制限解除等の政策について、多くのジョージア市民から支持を得ていたことが勝因と言える。
特に、昨今の二党対立が顕著の中、民主党員からも支持を取り付けていたことが大きい。
そこでケンプは、“(反トランプ風が吹き荒れる中)もしタフな知事選で勝利できなかったならば、2024年大統領選での共和党候補勝利の可能性が断たれただろう”とし、“しかし、勝利できたことから、2024年への道は続いている”と公言している。
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