中国の春節、厳しい大気汚染削減規制で花火(爆竹)業界も石炭産業も寂しい正月【米・中国メディア】(2018/02/12)
2月16日からいよいよ中国が春節(旧正月)を迎える。当局予想では、3月中旬までの1ヵ月間でのべ30億人が飛行機・鉄道・バス等で大移動するという。そして、春節の風物詩のひとつである爆竹(注後記)がここかしこで鳴らされるのであるが、近年習近平(シー・チンピン)指導部が強化してきた大気汚染削減規制のため、多くの都市部で爆竹が禁止され、寂しい春節となる模様である。同じく、大気汚染の元凶と非難された石炭鉱山も多くが閉鎖されつつあることから、この業界にとっても厳しい春節となりそうである。
2月12日付米
『ロイター通信米国版』:「千年も続く中国の花火業界、禁止措置に対応して伝統文化も大きく変化」
中国南東部の湖南省(フーナン)瀏陽市(リュウヤン)では、唐時代(618~907年)であった1,400年程前から花火(爆竹)産業が盛んで、中国全土の需要の3分の2を占めていた。
爆竹は主に、春節期間の15日程、中国各地で正月を祝う行事として用いられ、それによって悪霊が追い払われると信じされてきた。...
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2月12日付米
『ロイター通信米国版』:「千年も続く中国の花火業界、禁止措置に対応して伝統文化も大きく変化」
中国南東部の湖南省(フーナン)瀏陽市(リュウヤン)では、唐時代(618~907年)であった1,400年程前から花火(爆竹)産業が盛んで、中国全土の需要の3分の2を占めていた。
爆竹は主に、春節期間の15日程、中国各地で正月を祝う行事として用いられ、それによって悪霊が追い払われると信じされてきた。
しかし、習近平指導部は近年、中国都市部に蔓延する大気汚染対策に重点を置いてきて、その元凶となる自動車の排気ガス、野外でのバーベキュー、更には石炭燃料による暖房設備の使用にも厳しい規制を敷いている。
そして、春節の風物詩である爆竹についても、昨年から中国全土の444都市で使用を禁止し始め、また今年も使用制限の対象地域をより拡大している。
更に、習指導部が打ち出した反腐敗政策のお蔭で、企業が春節時に全従業員に祝いの花火を贈る習慣もすっかり下火になったことから、中国全土で静かな春節を迎えることになるとみられる。
また、不幸なことに、湖南省の別の都市で2014年に起きた花火工場の爆発事故で12人死亡、33人重軽傷になった上、昨年1月にも5人が死亡する花火売り場での爆発事故が続いたことから、当局の取り締まりが更に厳しくなった。
その結果、瀏陽市の花火製造・販売会社は、2015年末の946社が今や558社まで半減してしまっている。
ただ、瀏陽市含めて生き残った企業は、輸出向けに舵を切っており、昨年11ヵ月の輸出実績は6億8,100万ドル(約742億円)に上るという。
一方、2月11日付中国
『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「中国の石炭産業、大気汚染規制に震える」
中国北部の山西省(シャンシー)は中国最大の石炭生産量を誇っているが、昨年10月に同省当局が石炭の販売・輸送・使用を禁止したことから、27鉱山が閉鎖された。
『新華社通信』報道によると、省当局は省都の太原市(タイユワン)において、その禁止措置によって200万トン以上、一年当りの消費量の90%を削減する意図であるとする。
更に、中央政府も、より厳しい罰金規定を定め、大気汚染排出規制に躍起になっている。
ただ、省内の市民は、新しい暖房設備を準備する前に石炭ストーブを撤去させられたため、数万人の住民が暖房設備のない厳冬を迎えているという。
また、暖房用燃料として天然ガスに殺到したため、価格が暴騰した上、供給不足の事態も引き起こされている。
(注)爆竹:音響花火の一種。古代中国で、火にあぶった青竹の破裂音で悪鬼を退散させた風習に始まり、のち火薬を短い竹筒に詰めるようになった。もとは元日に用いたが、のち、広く慶事・祝祭日に用いられ、中国、台湾ほか東南アジアによくみられる風習。
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インド人プロボクサー、中印間緊張緩和を願って敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルト返上を申し出【米・英・ロシア・インド・中国メディア】(2017/08/08)
8月1日付Globali「習主席、中国固有の領土・領有権は“1ミリたりとも”譲らないと決意表明」で触れたとおり、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、今秋開かれる「中国共産党第19回党大会」を控え、国内における統率力の基礎固めを意図して、強い決意表明を行った。同指導部の意思の固さを反映してか、長い間国境問題を抱えているインドのヒマラヤ地方で6月に発生したインド軍との睨み合いは、これまでになく一歩も引かない状況である。そしてこの程、中印間の緊張を苦々しく思っていたインド人プロボクサーが、ダブル・タイトル戦において僅差の判定で破った中国人ボクサーに対して、両国間の平和を願って、二つのうちひとつのベルトを返上したいとの申し出を行った。海外メディアが挙って称賛している。
8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。...
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8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。
結果、僅差の判定でシン選手の勝利となり、二つのタイトル保持者となった。しかし、6月末からインドのヒマラヤ地方で両国間の睨み合いが続いていることから、“平和を望むメッセージ”として、これまでマイマイティアリ選手が保持していた東洋スーパー・ミドル級のチャンピオンベルトを返上したいと申し出た。
中印間では、1962年に起こった国境紛争以来、中印国境2,174マイル(約3,480キロメーター)の主だったところで緊張状態が続いている。そして中国は、インドの好敵手のパキスタンと同盟強化した上で、武器も供給していることから、中印間国境問題は益々混沌としてきている。
同日付英『ザ・テレグラフ』紙:「インド人プロボクサー、平和の象徴として、中国人ボクサーから奪取したWBOチャンピオンベルト返上を提案」
ムンバイ(インド)で行われたダブル・タイトル戦で勝利した後、元北京オリンピック銅メダリストのシン選手は、“中印友好の印”として、WBO東洋スーパー・ミドル級チャンピオンベルトをマイマイティアル選手に返したいと申し出た。
インドのヒマラヤ山麓のドクラム(インド北東部のシッキム州の東、北は中国、西はネパール、東はブータンに挟まれた地域)におけるインド・中国両軍の睨み合いは、ほぼ2ヵ月が経過する。そもそも、中国軍が国境付近の道路の拡幅工事を一方的に進めたもので、インド側は、安全保障が脅かされるとして一歩も引かない構えである。
シン選手の申し出に多くのメディアが称賛したが、インド国粋主義者はこれを支持せず、ヨガのババ・ランデヴ尊師は、ボクシングのタイトル戦だけでなく、ドクラムの攻防でもインドが勝利することになるとツイートしている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「インド人プロボクサー、敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルトを返すと申し出」
8月5日にムンバイのナショナル・スポーツ・クラブで行われたタイトル戦は、3人の審判の判定が、96:93、95:94、95:94と非常に僅差の勝負であった。
なお、『インディアン・エクスプレス』紙によると、シン選手の申し出は、WBO本部に判断が委ねられることになり、どうなるか明らかではないという。
8月7日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「ヴィジェンダー選手にとっては国境での緊張緩和が重要」
ヴィジェンダー・シン選手にとって、WBOアジア太平洋スーパー・ミドル級及び同東洋スーパー・ミドル級二つのタイトルを獲得したことより、ヒマラヤ山麓国境付近で揉めている中印間の緊張が緩和することの方が重要だとする。
なお、両選手はお互いのファイトを称え合い、両者の間にはわだかまりも何もない。
8月6日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「ヴィジェンダー・シン選手、中印緊張緩和のため“アジア激戦区”の勝利を捧げると表明」
ヴィジェンダー・シン選手は、2016年7月からWBOアジア太平洋スーパー・ミドル級王者となっている。キャリアは30ラウンド(デビューは2015年6月)で、これまでのタイトル戦は9戦全勝。一方、マイマイティアル選手は24ラウンド(同2015年4月)で、キャリアではシン選手が一歩先んじていた。
(注)WBO:プロボクシングの世界王座認定団体の一つ。世界ボクシング協会(WBA、1962年設立、本部はパナマ)から分裂して1988年に設立された。本部はプエルトリコのサンフアン。その他、世界ボクシング評議会(WBC、1963年設立、本部はメキシコシティ)、国際ボクシング連盟(IBF、1983年設立、本部はニュージャージー州スプリングフィールド)がある。
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