昨年末の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)において196ヵ国・地域が合意した、温室効果ガスの排出を今世紀後半までに“実質ゼロ”にすることを目指す「パリ協定」が制定されて4ヵ月が経過した。そして、「国連アースデイ」(注1後記)に合せて、「パリ協定」の署名式がニューヨークの国連本部で開催され、175ヵ国・地域の首脳や閣僚らが出席し、同協定書に署名した。
4月22日付米
『Foxニュース』の報道「175ヵ国・地域代表が国連に集結し、パリ気候変動協定に署名」:
「・国連本部において4月22日、175ヵ国・地域の代表が出席して、気候変動対策に関わるパリ協定に署名。
・環境問題に関し、これ程多くの国・地域の代表が署名するのは初めてのこと。
・同協定発効のためには、少なくとも55ヵ国以上、かつ、その温室効果ガス排出量が世界全体の55%を上回ることが条件。
・世界トップの温室効果ガス排出国の米国(編注;2014年時全体の16.9%)及び中国(同27.5%)の両国は、年内の批准を目指す意向。
・国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、温室効果ガス削減は待ったなしの事態であり、早期の批准が必要と発言。」
4月23日付米
『AP通信』の報道記事「175ヵ国・地域代表が画期的なパリ気候変動協定に署名」:
「・中国は、今年9月に中国で開催される主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)までに批准すると発表。
・米国は年内に批准すると再度表明し、カナダ、メキシコ、豪州代表も同様に追随。
・パリ協定制定に尽力したフランスのフランソワ・オランド大統領は、最初に同協定に署名した上で、各国に今夏までの批准を求めたいと発言。
・一方、アカデミー主演男優賞受賞者で、国連平和特使かつ環境保護活動家のレオナルド・ディカプリオ氏は、これ以上の議論も検討も不必要、各国代表には帰国後速やかに(批准手続きという)行動を取って欲しいとアピール。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ英国版』オンラインニュースの報道記事「世界アースデイに、175ヵ国・地域代表が国連本部でパリ協定の書名」:
「・昨年12月12日に、196ヵ国・地域代表がパリに集い、地球上の気温上昇を摂氏2度以下に抑えるための各国対策を決めたパリ協定を制定。
・そして、世界アースデイの4月22日、国連本部に175ヵ国・地域代表が同協定の署名式に出席して署名実施。
・中国、米国に続いて、世界3位の温室効果ガス排出国であるインド(編注;2014年時5.9%)代表も、年内の批准を公表。
・しかし、欧州連合(EU、加盟28ヵ国)代表は、まず全加盟国がそれぞれ批准してからでないとEUの批准手続きは取進められず、早期批准は容易ではないとコメント。」
同日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「行動の時:気候変動に立ち向かうパリ協定が佳境」:
「・英国エクセター大学(注2後記)の気候変動分野が専門のステファン・ハリソン教授は、以下の懸念を表明;
-パリ協定では、地球上の気温を産業革命前より摂氏2度以内に抑えること、更に、1.5度以下とすることも努力目標としているが、いずれも達成には非常に困難を伴うこと。
-同協定批准が、気候変動対策というより政治的思惑に左右されかねず、例えば米国においては、民主党は気候変動をもたらした科学的研究結果を支持しているが、共和党の多くはこれを受け入れておらず、従って、誰が次期大統領になるかによって、批准の可否が微妙であること。
-一方、気候変動を人間がコントロールできる期限は間近に迫っており、景気動向や政治的思惑等で(気候変動対策につき)足踏みする猶予は全くないこと。」
同日付中国
『チャイナ・ナショナル・ニュース』の報道記事「中国と米国が国連パリ協定署名式に出席」:
「・フランスのオランド大統領が最初に署名した後、気候変動の影響を最も受けている島国代表らが署名。
・米国は、ジョン・ケリー国務長官が、2歳の孫を連れて署名し、この若い世代のためにパリ協定発効が必須とアピール。
・中国と米国代表は、両国とも年内の同協定批准をするとし、同協定を2016年末か2017年には発効させるよう、他国をリードしていくと表明。
・今年の3月は、観測史上気温が最も高い月となっており、2016年通年でも史上最高気温となる恐れ。更に、今年のエルニーニョ現象で、干ばつ、洪水、大嵐など異常気象が世界各地で発生しており、気候変動対策は待ったなしの状況。」
2014年時の世界の温室効果ガス排出量(合計355億トン)の上位10ヵ国は以下の
とおりである。
1位中国(27.5%)、2位米国(16.9%)、3位インド(5.9%)、4位ロシア(4.7%)、5位日本(3.8%)、6位ドイツ(2.2%)、7位韓国(2.2%)、8位サウジアラビア(1.9%)、9位イラン(1.8%)、10位カナダ(1.7%)。
なお、EU(28ヵ国)合計では3位(約11%)となる。
(注1)国連アースデイ:地球環境について考える日として提案された記念日。2009年の国連総会で、4月22日を「国際母なるアースデイ」とすることが採択され、翌2010年から実施。
(注2)英国南西部のデヴォン州、エクセターにある国公立大学。競争率は8倍にも及ぶ英国屈指の人気校の1つ。また、2015年のThe Times Good University Guideでは総合7位、大学教育の質では5位となっており、英国の名門大学の1つ。
閉じる
4月21日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用)の報道「香港のジャーナリスト・グループ、主務編集者の突然の解雇を非難」:
「・香港記者協会は4月21日、
『明報』紙のNo.2編集主幹である姜国元(カン・クォクユアン)氏の突然の解雇に抗議を表明。
・会社側は経費節減のためのリストラと説明しているが、同紙労組は、姜氏が“パナマ文書”をめぐる特集を掲載したためだと反発。
・同紙は4月20日付の一面で、“パナマ文書”に掲載された香港の政治家や財界人の実名を報道。」
同日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』の報道「突然の解雇で香港の報道の自由に危機」:
「・
『明報』紙記者によると、姜副主幹は4月20日、北京政府寄りと言われるマレーシア人のチョン・ティエン・シオン編集長から解雇通告を受けたが、同編集長は2年前、中国政府を非難する記事を掲載したことで解雇されたケビン劉(ロー)元編集長の後任として就任。
・劉元編集長は2014年2月、闇の組織に雇われた2人組の暴漢に襲われ重傷。
・なお、4月20日に国境なき記者団によって発表された報道の自由度ランキングで香港は、世界180ヵ国・地域中69位の評価。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙の報道記事「香港紙の編集者、パナマ文書記事報道のため解雇」:
「・香港記者協会を含めた8つの労組は、姜氏は過去数十年にわたり、香港における大論争となった事態について先陣を切って報道してきたベテラン編集者で、
『明報』紙は姜氏の解雇について、読者や世間に対してきちんと説明すべきと要求。
・また、姜氏の報道姿勢が非難されるなら、香港における報道の自由は全く擁護されないことになると非難声明。」
同日付中国
『チャイナ・ナショナル・ニュース』(『ラジオ・フリー・アジア(米議会出資
の短波ラジオ放送局)』の報道引用)の報道記事「パナマ文書報道で香港の編集者が解雇さ
れ、香港メディアが騒然」:
「・香港記者協会のシャム・イェーラン主席(会長に相当)は、姜氏の編集方針は必ずしも経営幹部の望む方針と一致していた訳ではなく、何らかの衝突があったものと推測されると発言。
・また、近ごろのジャーナリズムを囲う環境は非常に厳しいものになっているともコメント。
・香港は1997年に英国から返還された際、一国二制度(表現や組合活動の自由、本土と異なる司法体制や入国管理等)が保証されたが、新興政治活動グループが独自の政策や香港の独立性を訴え始めて以来、香港政府当局によって、表現の自由が以前より制限されている状況。」
(注)2014年1月及び2月のジャーナリスト更迭事件:無料テレビ局の新規免許交付に当り、中国政府を批評してきた
『香港テレビ』だけが不交付となった件について、連日非難報道した大手紙
『明報』の編集長ケビン劉氏が2014年1月に突然更迭され、また、香港政府に対する辛口評論で知られるラジオ局
『商業電台』のベテラン司会者李慧玲(リー・ウェイリン)女史も同年2月突然解雇された。
閉じる