何十年もの間、中東で完全に孤立していたイスラエル。しかし、昨年、トランプ前大統領の仲介でイスラエルとアラブ諸国のアラブ首長国連邦、バーレーン、スーダン、モロッコとの間に、アブラハム合意と呼ばれる国境正常化が実現した。これにより、イスラエルとアラブの近隣諸国との間の貿易が活況を呈している。
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『レゼコー』紙は、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界で厳しい経済状況が続く中、10月3日に、エジプト航空によるエジプトとイスラエルを結ぶ新規路線が開設されたと伝えている。こうした2国間の交流が正常化されていることは、1年前にイスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーンの間で締結され、後にスーダンとモロッコも加わったアブラハム合意によって、利害関係者を超えたダイナミクスが生み出されていることを物語っているとも報じている。
9月30日には、バーレーンの国営航空会社ガルフ・エアが、イスラエルへの初の商業飛行を開始している。同日、イスラエルの大臣が初めてバーレーンを訪問した。ラピド外相は、ザヤニ外相とハマド国王と会談した。また、バーレーンの駐イスラエル大使が着任した数週間後には、首都マナーマでイスラエル大使館を開設している。
イスラエル統計局によると、ゼロからスタートした両国の貿易関係は、今年の最初の7ヶ月間で30万ドル(約3千万円)に達した。春には、バーレーンの電力・水道局とイスラエルの国営水道会社Mekorot社が300万ドル(約3億円)の契約を締結した。Mekorot社は、海水淡水化および自動制御システムのコンサルティングおよび設置を行う。これは、Mekorot社とアラブ諸国との間の初の商業協定となる。
アラブ首長国連邦の場合は、イスラエルとの貿易額が、航空、金融サービス、サイバーセキュリティ、文化などの分野で、7ヶ月間だけで投資を除いて6億ドル(約666億円)に達した。アラブ首長国連邦の軍事企業エッジ・グループは、イスラエル航空宇宙産業と対ドローンシステムの開発契約を結んだ。また、ドバイ警察は、10月1日に開催された万博会場の警備にイスラエルのテヴェル・エアロボティクス社のドローンを使用している。アラブ首長国連邦は、イスラエルに100億ドル(約1兆円)の投資ファンドを設立している。
モロッコとイスラエルの間では、イスラエルの輸出額が2021年上半期に1300万ドル(約14億円)に達し、2020年の同時期と比較して62%増加した。イスラエル輸出協会は、中期的には年間2億5000万ドル(約278億円)の輸出を見込んでいる。
7月、モロッコは、イスラエルの強みの1つであるサイバーセキュリティの分野で協力協定を締結した。翌月には、ラピド外相が首都ラバトに連絡事務所を開設するために訪問した際に、文化、スポーツ、観光の分野で他の協定が締結された。両国にはまもなく大使館が開設される予定となっている。
イスラエルの『タイムズ・オブ・イスラエル』は、イスラエルと合意締結国との間の貿易は拡大しているが、最も期待されているのは、アラブ首長国連邦とイスラエルの関係だと報じている。数十億ドルの資金が投入され、数十件の商談が成立したアラブ首長国連邦は、現在、イスラエルにとって地域最大の貿易相手国となっており、二国間の貿易額は6億ドル(約666億円)を超えている。UAEのアブダッラー・ビン・トゥーク・アール・マッリー経済相は、今後10年間で2国間の経済活動が1兆ドル(約111兆円)以上になると予想していると述べている。
イスラエルとその他のアラブ諸国とも貿易が活発化している。例えば、2021年上半期には、2020年と比較して、イスラエルとヨルダン間の貿易が約65%、イスラエルとエジプト間の貿易が30%以上増加している。近接性と可能性を考えると、これらはまだ非常に控えめな数字だが、その成長は需要があることを示している。
しかし、『タイムズ・オブ・イスラエル』は、中東の域内貿易率は世界で最も低い水準にあると指摘している。ヨーロッパやアジアでは域内貿易がそれぞれ68%、60%を占めているのに対し、中東の域内貿易は全体の10%にも満たない。このように経済統合が進んでいないため、物流やサプライチェーンが分断され、貿易や投資の障壁が高く、規制体制もまちまちで、新型コロナウイルスや気候変動などの共通の課題に対する取り組みも調整されていないという。そして、よりつながりのある中東の果実を得るために、政府間の定期的な対話と協力を支える持続的な構造がなければ、アブラハム合意はその可能性を十分に発揮することができないとしている。
一方で、『タイムズ・オブ・イスラエル』は、1990年代の中東ではもはやないとも指摘している。石油やガスに恵まれた国々は、経済を多様化し、「スタートアップ国家」を作ろうとしている。それは、労働力として参入する若い革新的な世代に力を与え、燃料を供給し、ハイテク雇用を創出し、健康、エネルギー、モビリティなどの国家的な大問題を解決するものだという。アラブ諸国は、イスラエルを、一人当たりのスタートアップ企業数が世界で最も多く、300社以上のグローバル多国籍企業を研究開発センターに投資させるなど、世界的な強国を築くための成功例として注目している。2020年のアブラハム合意の前後6ヶ月の間隔で同じ質問をした比較調査によると、主要な湾岸アラブ諸国では、イスラエルとのビジネスを行うことに対する国民の支持率が急激に上昇した。アブラハム合意に加盟していないサウジアラビアでは、4倍にもなったという。
この地域の貿易拡大を支援するためには、米国の支援を受けた地域のリーダーたちが一丸となって、経済協力の新たなパラダイムを打ち立て、そのビジョンを支える統治構造を構築する必要がある。アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、多国間の経済・貿易フォーラムであり、関税の引き下げ、旅行、税関、サプライチェーンネットワークの改善、優れた公共統治とスマートな規制の推進に貢献しています。加盟国には、紛争の歴史を持つ東南アジアの国々も含まれている。APECが設立されてからの30年間、米国の支援もあって、この地域のGDPは2倍以上、貿易額は7倍に増加し、貿易の3分の2は加盟国間で行われている。『タイムズ・オブ・イスラエル』は、中東地域がこのアジア太平洋経済協力会議(APEC)を参考にすることができると指摘している。
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イスラエルでは、12日の閣議に先立ち、2人の大臣が、国内の多くの場所で導入されているワクチン・パスポートの提示義務は、医学的な理由よりも、ワクチン接種を促すためにあると話している会話が、オンになっていたマイクでキャッチされ、全国に生中継された。
イスラエルは、世界で初めてワクチン・パスポートを発行した国である。グリーンパスと呼ばれたワクチン接種証明書は、6月に廃止されたが、国内で新型コロナウィルスの感染が再び拡大したことを受けて再導入され、8月20日から、レストラン、プール、屋内のすべての娯楽施設、公園を除くすべての公共の場所への入場の際に提示が義務付けられた。ワクチンを接種していない12歳以下の子供がこれらの場所に入場するには、検査結果で陰性であることを証明する必要がある。
こうした中、米『ナショナル・ファイル』とイスラエル『タイムズ・オブ・イスラエル』によると、12日、イスラエルのニツァン・ホロヴィッツ保健相は週1回の閣議が始まる前に、同僚のアイェレット・シャクド内務相とワクチン・パスポート制度について話し合っていた。その会話を、ワイヤレスマイクがキャッチし、全国放送された。ホロヴィッツ氏とシャクド氏は、イスラエルのチャンネル12ニュースのマイクに会話が拾われていたことに気づいていなかったという。
先月末に、3回目のブースター注射を受けない市民は、いずれワクチン・パスポートの認定を受けられなくなると発言していた保健相は、レストランやプールなどの屋外席にワクチン・パスポートを適用することは、実は疫学的に正当な理由がないという点で、内務相と意見が一致した。そして、「問題は、予防接種を受けない人たちにある。彼らに少しでも影響を与えなければ、この状況を打開することはできない」と指摘し、イスラエルの多くの場所でワクチン・パスポートが必要とされているのは、単に国全体にワクチン摂取を強制するためだと認めた。さらに同氏は、「ある種の普遍性」を持つグリーンパスに例外を設けることは、そもそもパスポートの科学的妥当性を疑われることにつながると主張した。
また、保健相は「例えば、60歳から65歳未満の、危機的な状態にある人が病院に運ばれてきた場合、間違いなくワクチンを接種していない人だ。60から65歳以上では、だいたい3分の2がワクチン未接種、3分の1がワクチン接種済みだ。新型コロナは、もはやワクチンを受けていない人にとっての一大事である」と内務相に説明した。
エラザール・スターン情報相が2人の会話に加わり、「(ワクチンを受けていない人が)コロナウィルス病棟のベッドを占有しているのは苛立たしいことだ」と述べ、「集中治療室では、そうですね」と保健相が答えている。
保健省が10日に発表した数字によると、60歳以下の場合、3回目のワクチンを接種していない人は、重症化する確率が約3倍、何も接種していない人の場合は確率が約10倍に上がるという。また、60歳以上の人では、3回目のワクチンを接種すると、2回接種の人に比べて、重症化する可能性が10分の一になり、未接種の人に比べると40分の一になるという。
『ナショナル・ファイル』は、イスラエルの閣僚は、ワクチン・パスポートが予防接種率を高めるためのさおになると主張しているが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの新しい研究では、このような制度の下では、予防接種を受けることに消極的な人は、さらに消極的になることが確認されたと伝えている。研究を行ったメンバーの一人であるポラット博士は、「ワクチン・パスポートのような公衆衛生上のインセンティブが心理的欲求を苛立たせるものであれば、例えば、人々に自分の決定に対する自由意志の欠如を感じさせることで、逆説的に人々の接種意欲を低下させる」と述べている。
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