菅義偉首相(72歳)は2月2日、新型コロナウィルス(COVID-19)問題沈静化のため、発出中の緊急事態宣言適用期間を更に1ヵ月延ばすことを決定した。この措置に伴い、今夏に予定されている東京オリンピック・パラリンピック大会の開催を不安視する声が益々高まっている。しかし、大会組織委員会代表含めて、主催者側はあくまで開催ありきとするコメントを発信していると欧米メディアも報じている。
2月3日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「日本、緊急事態宣言延長決定で、東京大会開催は益々未確定」
日本政府は2月2日、COVID-19問題の深刻化が続いている1都9府県に対する緊急事態宣言を、3月7日まで延長することを決めた。
1月初めに緊急事態宣言が出されて以降、東京都等では新規感染者数が漸減傾向にあるが、医療専門家からは、重症患者含めて受け入れ先の病棟が依然ひっ迫したままとの指摘がなされている。
そこで、菅義偉首相が同宣言を更に1ヵ月延長する旨発表した訳だが、これに伴って、今夏に予定されている東京大会の開催を危ぶむ声が益々強くなってきている。
ただ、国際オリンピック委員会(IOC)は先週、あくまでも予定どおりの開催の意向を表明している。
すなわち、IOCのトーマス・バッハ会長(67歳、ドイツ人弁護士、元フェンシング選手)は、“直近数日間に、国際スポーツ連盟、各国オリンピック委員会と協議し、また、アスリート代表組織からの報告を踏まえた結果、関係者全員が東京大会を今夏に予定どおり開催する意向であることを確認した”と強調した。
更に、同会長は、“主催する日本側(政府、大会組織員会、日本オリンピック委員会)からも同様の決意表明がなされている”とも付言している。
2月2日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「東京大会組織委員会代表、“何が何でも”大会を開催すると宣言」
東京大会組織委員会の森喜朗会長(83歳)は2月2日、現下のCOVID-19問題継続の最中ながら、今夏の東京大会は予定どおり開催されると宣言した。
同組織委員会が同日開催した、大会関係者や与党・自民党議員らとの会合で発言したもので、同会長は、“やるかやらないかという議論ではなく、如何にして(問題なく安全に)開催するか、に焦点を絞るべきである”と強調した。
また、同会長は、COVID-19問題が依然継続していること、及び、開催する場合の感染防止対策について、“この二つの大きな問題を最優先課題として、対応を図っている”とも付言した。
『共同通信』と『TBS』が各々直近で行った世論調査の結果、大会の再延期、あるいは中止すべきとする回答が約80%に上っており、以前に『共同通信』が行った際の懸念表明が33%であったことから、開催を不安視する声が急増していることが分かった。
一方、3月下旬から予定されている、大会の伝統的な行事である聖火リレーについて中止を求める声が上がっているが、この点についても森会長は、ソーシャルディスタンシングが保てるよう、観客を減らすとかのマイナーチェンジは必要だが、予定どおり実施することになる、とコメントした。
なお、『AP通信』の報道によると、大会の“重要なスポンサー”であるコカ・コーラ及びトヨタ自動車の意向から、大会中止との議論は葬り去られているという。
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本邦では、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大が続く中、本来率先して範を垂れるべき政治家や官僚トップが、自粛などどこ吹く風といった行動に出ておりながら、反省と口ではいうものの一切責任はとっていない。しかし、同じく防疫失敗で感染拡大が深刻なスウェーデンでは、防疫対策等非常事態に当たるべき役所の庁が、市民に自重を求めていたクリスマス期間中に旅行をしていたことが判明し、更迭されてしまっている。
1月7日付米
『AP通信』:「スウェーデンの高官、COVID-19感染流行の最中にスペインにクリスマス休暇旅行して更迭」
スウェーデンの高官トップが1月6日、クリスマス休暇を利用してカナリア諸島(アフリカ大陸北西岸沖のスペイン領)に旅行したことが発覚し、辞任に追い込まれた。
市民を緊急事態から擁護することを目的とした政府機関、スウェーデン非常事態対応庁(MSB)のトップであるダン・エリアセン長官(59歳)で、COVID-19感染拡大が続くスウェーデンで、クリスマス休暇での旅行を自重するように政府通達が出されていたにも拘らず、リゾートとされる同諸島に旅行していたことが現地メディアの報道で明らかになった。
同長官は、“COVID-19危機下にあって、社会がどう対応することが重要であるかについて、認識が甘かった”と反省の弁を述べている。
昨年末、COVID-19感染拡大に喘ぐスウェーデン政府の指示を受けて、MSBは大多数の同国市民宛のメッセージで、クリスマス休暇中の旅行の自重を訴えていた。
同長官は、スウェーデン夕刊紙『エクスプレッセン・デイリィ』(1944年創刊)のインタビューに答えて、“感染症流行の期間中、旅行含めて多くのことを諦めてきた”としながらも、息女が暮らす同諸島への旅行は止むを得ないことだったと弁解した。
その上で、同長官は、“重要なことは、MSBのトップである自分が範を垂れなかったことである”と反省するコメントを出している。
同長官は辞任発表直前の1月5日朝、任命責任者であるミカエル・ダンベルグ内務大臣(49歳)と面談したが、今回の行動に対して厳しい批判の声を受けて、これ以上長官に留まれないと判断したものとみられる。
ダンベルグ大臣は公共メディア『スウェーデン・テレビ(SVT)』(1956年設立)に、“MSBは、感染症防疫対策の重責がある部署だが、エリアセン長官は大きな判断ミスを犯してしまったと言わざるを得ない”とコメントしている。
スウェーデンは元々、他の欧州諸国と違って、市民の自主性に任せるとして、強制力の伴う都市封鎖措置等は講じてこなかった。
しかし、同国の感染者は46万9,748人、死者8,985人(致死率1.9%)と、スカンジナビア半島の他国に比し非常に多くなっている。
(編注;ノルウェー感染者5万2,967人・死者465人・致死率0.9%、フィンランド感染者3万7,549人・死者576人・致死率1.5%)
一方、1月6日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「スウェーデン高官、海外のゲイ・フェスティバル参加は“必要”だったと発言して四面楚歌」
エリアセン長官は、クリスマス休暇中の旅行自粛政策を発令する立場にありながら、カナリア諸島に旅行に出ていたことが発覚した際、“COVID-19対策期間中、多くのことを諦めてきたが、今回の旅行は必要なことだった”と釈明した。
息女がそこに暮らしていたことや、旅行中のソーシャルディスタンシングを常に保っていたことにも言及していたが、後日判明したインスタグラム投稿の写真から、ラス・パルマス(同諸島州都)でゲイ達と新年を祝うお祭りに参加していたことが分かった。
同長官は、SVTレポーター、ゲイ活動家のエリック・ギャリー(29歳)、ゲイのメディア番組司会者フレデリック・ソデルホルム(29歳)と酒を酌み交わしながら盛り上がっていた。
このスキャンダルが発覚した1月6日現在、スウェーデン日刊紙『アフトンブラデット』(1830年創刊)・世論調査会社デモスコップ共同調査の結果によると、同長官を支持する人は僅か6%であった。
偶然にも、同じタイミングでのステファン・ロベーン首相(63歳)の支持率も38%から31%まで下落している。
ただ、この背景には、同長官のスキャンダルとは別に、国を挙げての外出自粛キャンペーンの最中にも拘らず、モーガン・ヨハンセン法務大臣(50歳)が大掛かりの買い物に出ており、マグダレーナ・アンデルセン財務大臣(53歳)がスキーに出かけ、更に、ロベーン首相自身もショッピングモールに出掛けていたという事態が判明していることもある。
デモスコップのカリン・ネルソン代表(60歳)は『アフトンブラデット』紙のインタビューに答えて、“国民に旅行や親戚等に会いに行くことを自重するよう求め、また、多人数で集まることも止めるよう要求しているにも拘らず、我が国の閣僚らの行動をみると、正にダブルスタンダードに他ならない”と非難している。
なお、エリアセン長官が苦境に立たされたのは今回が初めてではなく、2011年にスウェーデン移民局長を退いた時には社会保険庁局長に横滑りし、2015年には社会保険庁から警察庁長官に異動し、そして2018年に警察庁長官を退任させられた際にはMSB長官に就任している。
スウェーデンの調査報道ウェブサイト『ストッパ・プレサルナ』は、“エリアセン氏は、いつも解任される度に平然と(何もなかったかのように)次の官職に在り付いていることで有名”だと報じている。
また、同長官が10代の頃、バッド・ブー・バンドというパンクロック・グループに加わっており、1979年には「バンコクでFxxxing」というヒット曲を出していた。
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