米国抜きのTPPの行方は?(2)<米・英・NZ・シンガポール・アジアメディア>
5月5日付
Globali「米国抜きのTPPの行方は?」の中で、“米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11ヵ国による首席交渉官会合が、5月初めにトロント(カナダ)で開催された。日本と豪州が中心になって、米国抜きでもまずTPPを発効させ、米国が将来復帰できる道を残しておく戦略で会合をリードしようとしたが、メンバー国間に温度差があり、結局具体的進展はみられなかった”と報じた。そしてこの程、アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会合開催の機会に、TPPメンバー国による閣僚会議を開いたが、今年11月開催のAPEC首脳会議までに、TPPを早期に発効させる選択肢につき各国で検討した上で再度協議するとの共同声明を出しただけで終わっている。
5月21日付米
『CNBCニュース』:「TPPメンバー国、米国抜きでの協定締結に向けて努力することを確認」
ハノイ(ベトナム)で開催されたAPEC閣僚会議の機会を捉えて、TPPメンバー11ヵ国の担当閣僚が別途会合を開き、TPPを“迅速に”発効させる方策について検討していくことで合意した旨、5月21日に共同声明として発表した。今年11月中旬にベトナムで開催されるAPEC首脳会議までに、当該検討結果を持ち寄ることとなった。...
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5月21日付米
『CNBCニュース』:「TPPメンバー国、米国抜きでの協定締結に向けて努力することを確認」
ハノイ(ベトナム)で開催されたAPEC閣僚会議の機会を捉えて、TPPメンバー11ヵ国の担当閣僚が別途会合を開き、TPPを“迅速に”発効させる方策について検討していくことで合意した旨、5月21日に共同声明として発表した。今年11月中旬にベトナムで開催されるAPEC首脳会議までに、当該検討結果を持ち寄ることとなった。
ニュージーランドのトッド・マクレー貿易担当相は、米国の離脱でTPPが無効になったとは考えておらず、引き続きTPP発効に向けて努力していく意向だと語った。また、豪州のスティーブン・シオボ貿易・観光・投資担当相も、米市場に期待してのTPP発足であったが、TPP協定そのものの意義は依然高いものであるから、まだ先に進む余地があるとした上で、将来米国が復帰することに期待したいと表明した。
しかし、TPPメンバー11ヵ国の共同声明を受けて、米国のロバート・ライトハイザー通商代表は、米国のTPP離脱の決定には何ら変更がなく、トランプ政権は関係国と二国間交渉を行う方針であるとコメントしている。
同日付英
『ロイター通信英国版』:「TPPメンバー国、米国拒絶にも拘らずTPP発効に向けて前進することで合意」
TPPメンバー11ヵ国は、引き続きTPP発効に向けて協議を継続していくことで合意したものの、メンバー国間では、米国抜きのTPPについて評価がかなり分かれている。例えば、ベトナムやマレーシアは、米国の大市場へのアクセスを求めてTPPに署名したことから、米国が離脱した以上、TPP内条件の再協議を要求している。
なお、TPP11ヵ国は7月に日本で首席交渉官会合を持ち、11月のメンバー国首脳会議での提案に繋げられるよう協議を続ける予定である。
同日付ニュージーランド
『ニュージーランド・ヘラルド』紙:「TPPメンバー国、ハノイでの会合で次の首脳会議での決定に向けて検討課題と日程案につき合意」
ハノイでのTPPメンバー11ヵ国閣僚会議を終えて、マクレー貿易相は5月21日、メンバー国間にバラツキはあるものの、TPP発効に向けてまとまっていこうとしていると語った。また、同貿易相は、米国抜きの場合のTPPの有益性について評価するよう事務方に指示したという。
なお、ニュージーランドとしては、同国の農家・輸出業者のためにTPPのような自由貿易協定に加わっていくことが重要であり、もしそうでないと、既に優遇取引協定を有している豪州他に競争力で負けることになるとしている。
同日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「シンガポール、TPP発効に向けて努力することを全面支持」
TPPメンバー11ヵ国の共同声明とは別に、シンガポールのリン・フン・キァン通商産業相は、TPPは加盟国に有益となるだけでなく、発効後のTPPに非メンバー国を誘致することもできるので、何としてでもTPPを前進させるために検討を続ける旨表明した。
なお、同相は省庁高官に対して、TPPを速やかに発効させるために必要な選択肢を導き出すべく、今後数ヵ月かけて検討するよう指示を出した。
同日付アジア
『アジアン・コレスポンデント』オンラインニュース:「TPPメンバー国、米国抜きでのTPP発効に向けて努力していくことで合意」
当初12ヵ国が署名したTPP協定であるが、米国の離脱宣言もあって、これまでに批准したのは日本とニュージーランドのみである。両国は、基本合意までに費やした過去7年間の交渉を無駄にしないためにも、TPP発効に向けて前進すべきと主張している。
一方、ベトナムとマレーシアは、米国の大市場へのアクセスに期待してTPPに署名したため、米国抜きの場合には、TPP内条件の見直しが必要だと表明している。
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中国、南シナ海問題でのASEAN抱き込みに前進<米・ロシア・シンガポール・中国メディア>
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)はこの程、南シナ海海域で各国の活動を規制する「行動規範(COC)」の枠組みの草案について合意した。ただ、紛争解決の仕組みや法的拘束力については今後の協議課題とする一方、領有権問題は当事国間で解決するとし、日米含めた域外国の干渉を許さない原則が含まれていることから、中国の思惑どおりの草案に行きついたものとみられる。
5月19日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「中国とASEAN、南シナ海問題に関わるCOC枠組み合意」
中国外交部は5月18日、中国とASEANが、南シナ海領有権問題に関わるCOC枠組みについて合意したと発表したが、COC詳細については言及しなかった。関係国代表が、中国の貴陽(クイヤン、中国南西部貴州省の省都)で協議して草案をまとめたもの。
シンガポール外務省のチー・ウィー・キォング事務次官は、当該草案は8月にフィリピンで開催されるASEAN外相会議で承認されるとした上で、COCがより意味のある内容となるよう協議していくことになると語った。...
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5月19日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「中国とASEAN、南シナ海問題に関わるCOC枠組み合意」
中国外交部は5月18日、中国とASEANが、南シナ海領有権問題に関わるCOC枠組みについて合意したと発表したが、COC詳細については言及しなかった。関係国代表が、中国の貴陽(クイヤン、中国南西部貴州省の省都)で協議して草案をまとめたもの。
シンガポール外務省のチー・ウィー・キォング事務次官は、当該草案は8月にフィリピンで開催されるASEAN外相会議で承認されるとした上で、COCがより意味のある内容となるよう協議していくことになると語った。
一方、中国外交部の劉振民(リゥ・チェンミン)副部長(副大臣に相当)はテレビのインタビューで、中国・ASEAN全ての関係国にとって実りのある草案合意だったと述べる一方、今後のCOC協議には域外国の干渉は許さないと、米国を想定して釘をさすコメントを行った。
米国務省のアンナ・リッチー=アレン報道官は、今回合意したのはCOCの枠組みのみと了解しており、今後国際法、特に“海洋法に関する国連条約(UNCLOS、注後記)”に則ったCOC取決めがなされることに期待すると表明した。
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国とASEAN、南シナ海に関わるCOC枠組み草案に合意」
今回のCOC枠組み草案の合意は、2002年に中国・ASEAN双方が「行動宣言(DOC)」を締結してから15年後のことで、第14回中国・ASEAN高官会議でなされたものである。
ただ、シンガポール外務省のキォング事務次官は、COC枠組み草案について、当初6月末とした目標よりは早く合意に至ったとコメントした。
同日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』:「ASEAN・中国間の南シナ海に関わるCOC枠組み草案が完成」
2002年のDOC締結以来15年も経ったが、今回のCOC枠組み合意に向けての本格的交渉は、業を煮やしたフィリピン前政権が、2013年に領有権問題を常設仲裁裁判所に提訴したことを契機に始められたものである。
ただ、今回のCOC枠組み草案には、法的拘束力が含まれているか不詳である。中国外交部の劉副部長はこの点を問われて、詳細につきコメントすることはできないと回答している。
なお、シンガポールは、2015年からASEAN・中国間の仲介役の任に当っていて、今回中国とともに共同議長を務めた。
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』:「南シナ海に関わるCOC枠組みに合意」
今回のCOC枠組み草案合意に当り、中国外交部の劉副部長とシンガポール外務省のキォング事務次官が共同議長を務め、関係国の総意をまとめるに至ったものである。
一方、中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は5月18日、今週日本とニュージーランドが発表した南シナ海に関わる声明について、“域外国の全く不適切な声明”とした上で、日本は南シナ海含めて余計な緊張を高める行動に出ているだけだと非難した。
なお、今回の中国・ASEAN高官会議の共同議長を務めたシンガポール外務省のキォング事務次官は、関係国の努力が実ったもので、今回のCOC枠組み合意が、南シナ海海域の平和と安定に寄与していくものと期待すると語った。
(注)UNCLOS:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して、1982年4月に第3次国連海洋法会議にて採択され、1994年11月に発効した条約。165の国・地域と欧州連合が批准。日本は1996年6月に批准。しかし、米国の他、トルコ、ペルー、ベネズエラなどは未締結。
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