英国の欧州連合離脱(Brexit)決定から1年経ち、英政府と欧州連合(EU)との離脱に向けた具体的交渉が始まっている。英国側は当初、通商交渉の並行協議を強く望んでいたが、直近の総選挙での与党惨敗、更に、EU側の強い抵抗を受けて、離脱時の条件交渉に絞らざるを得ない状況となっている。一方、この交渉結果を待つ以前に、欧米の銀行はもとより、日本の野村ホールディングス・大和証券は既に、その営業拠点をロンドンからドイツ他の主要都市に移転する決定を下している。
6月22日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「野村ホールディングス、EU拠点のフランクフルトへの移転決定」
野村ホールディングス(アジア最大の投資銀行・証券持株会社)は6月22日、Brexitの影響に鑑み、EU拠点をロンドンからフランクフルトに移転させるとの計画であることが明らかになった。同社は、今月から移転に向けて準備に入るという。
同社はこれまで、EU拠点の移転先として、ミュンヘン・ルクセンブルグ・パリも検討していたが、欧州中央銀行のあるフランクフルトを選択したもので、モるガン・スタンレー(ニューヨーク本拠の世界的な金融機関グループ)、ゴールドマン・サックス(ニューヨーク本拠の世界最大級の投資銀行)、シティグループ(ニューヨーク本拠の、世界160ヵ国以上で金融事業を営む企業を傘下に収める持株会社)も同様の検討を行っている。...
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6月22日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「野村ホールディングス、EU拠点のフランクフルトへの移転決定」
野村ホールディングス(アジア最大の投資銀行・証券持株会社)は6月22日、Brexitの影響に鑑み、EU拠点をロンドンからフランクフルトに移転させるとの計画であることが明らかになった。同社は、今月から移転に向けて準備に入るという。
同社はこれまで、EU拠点の移転先として、ミュンヘン・ルクセンブルグ・パリも検討していたが、欧州中央銀行のあるフランクフルトを選択したもので、モるガン・スタンレー(ニューヨーク本拠の世界的な金融機関グループ)、ゴールドマン・サックス(ニューヨーク本拠の世界最大級の投資銀行)、シティグループ(ニューヨーク本拠の、世界160ヵ国以上で金融事業を営む企業を傘下に収める持株会社)も同様の検討を行っている。
なお、野村は今年3月末現在、EU全体で3,026人の従業員を抱えているが、拠点変更に伴う、ロンドンからフランクフルトへの異動は100人未満に止まるという。
一方、その他の日本の金融機関の移転検討状況は以下のとおり;
●大和証券:フランクフルト、あるいはダブリン(アイルランド首都)への移転を検討中。
●三菱UFJファイナンシャルグループ:アムステルダム(オランダ)に拠点変更。
●みずほファイナンシャルグループ:同上。
6月23日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』:「Brexit決定後1年が経ち、フランクフルトが国際金融企業の多くの移転先に決定」
国際金融関係者によると、スタンダード・チャータード銀行(ロンドン拠点)、野村ホールディングス、大和証券グループが、既にフランクフルトに拠点を移す決定をしており、また、シティグループ、ゴールドマン・サックス、モるガン・スタンレーも、同市への移転を優先的に検討しているという。
フランクフルトはこれまで、ドイツ銀行(ドイツ最大の銀行)、欧州中央銀行、BaFin(ドイツ連邦金融監督庁)の本拠が置かれ、また、ロンドン以外では唯一、銀行取引のうち複雑なディリバティブ事業が可能な都市と認められていた。
まだBrexit後の状況が明らかになった訳ではないが、国際金融大手としては最悪の場合を想定して、2019年のBrexit正式移行前に、欧州圏内のビジネス展開を図っていく必要があるとみられる。
国際シンクタンクのブリューゲル(正式名ブリュッセル欧州世界経済研究所)の分析では、Brexitに伴い、ロンドンは1万人余りの銀行業務及び2万人余りのその他金融関係業務に加えて、1兆8,000億ユーロ(3兆1,900億シンガポールドル、約225兆円)の金融資産を失う勘定になるという。
その他の大手国際金融機関の動向は以下のとおり;
●バンク・オブ・アメリカ:移転先候補として、フランクフルト・マドリッド・ルクセンブルグ・アムステルダムを検討しているが、未だ結論出ておらず。
●JPモルガン・チェース:ロンドンから500~1,000人の銀行業務をダブリン・フランクフルト・ルクセンブルグそれぞれに移転。
●UBS(スイス本拠):英国の5,000人のうちの1,500人余りをフランクフルトに異動させることで検討中。
●HSBCホールディングス:ロンドンの投資事業の約20%(従業員5,000人のうちの約1,000人)をパリに移転予定。
●バークレーズ(ロンドン本拠):ロンドンの一部をダブリンに移すことを検討中。
●ロイズ・バンキンググループ(ロンドン本拠):ベルリン支店を強化し、ロンドン事業の一部を移転。
●クレディ・スイス:ダブリン支店を強化。
●中国銀行(中国第3位の商業銀行):アイルランドへの移転につき同国政府と打合せ中。
●みずほファイナンシャルグループ:アムステルダムとダブリンへの移転を検討中。今年1月、アムステルダム在のオランダ支店をみずほ欧州銀行に格上げし、ベルギー・オーストリア・スペインをカバーする拠点とする決定済み。
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5月21日付Globali「米国抜きのTPPの行方は?(2)」の中で、“アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会合の機会に、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)メンバー11ヵ国による閣僚会議を開いたが、今年11月開催のAPEC首脳会議までに、TPPを早期に発効させる選択肢につき各国で検討した上で再度協議するとの共同声明を出しただけで終わっている”と報じた。そして今度は、元々TPPに属していない中国が、米国抜きのTPPに将来はないとの判断の下、中国中心の地域包括的経済連携(RCEP、東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓印豪NZの16ヵ国)を前進させるべく、メンバー国閣僚会議を開催したが、特に関税の自由化率に強く反対するインドなどの抵抗もあって、目立った進展はみられなかった。なお、会合の成果の点で、日本・中国メディアと米英他メディアの報道内容に開きがみられる。
5月22日付米
『ロイター通信米国版』:「中国主導の貿易協定で対立が表面化」
APEC閣僚会合の機会を捉えて、中国が主導するRCEPメンバー国が5月22日、ハノイ(ベトナム)で閣僚会合を開催したが、メンバー国間の対立が表面化しただけで、大きな進展はみられなかった。
RCEPは2012年から協定成立に向けて動き出したが、RCEPメンバーのうちTPP加盟国がTPP交渉を優先したことより、具体的進捗がみられなかった。しかし、今年初めの米国のTPP離脱宣言を受けて、中国がRCEPに注力し始めたものである。RCEPは、日中韓印豪NZとASEANを加えた計16ヵ国がメンバーで、総人口35億人余りを誇る貿易圏となる。
TPPに比べてRCEPは、協定対象となる知的財産権事業や電子商取引等の制約が緩く、しかも労働者の権利や環境規制などの条件も付されていないにも拘らず、例えばインドは、自国の競争力が失われるとして、関税の自由化率について真っ向から反対している。
会合後にニュージーランドのトッド・マクレー貿易相は、進展がない訳ではないが、年末までに合意まで漕ぎ着けるのは至難の業だと語った。
同日付英
『メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「アジア太平洋地域の閣僚、貿易協定合意に向けて会合」
RCEP閣僚会合に出席したインドネシアのラモン・ロペス通商産業相は、世界に保護主義の波が押し寄せている今こそ、RCEP協定合意に向けて前進することが重要だと述べた。また、ベトナムのチャン・トゥアン・アイン商工相も、保護主義が広がりつつある中、世界最大規模となるRCEPが成立すれば、世界に開かれた自由貿易の大切さを発信できることになると語った。
5月23日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「RCEP閣僚会合で不協和音」
中国主導のRCEPは、2013年から都合17回交渉会議が開かれたが、思わぬ障害などもあって2015年末成立との目標を達成できていなかった。
今回新たにハノイで閣僚会合が持たれたが、今度は関税の自由化率の点で大きな隔たりがあることが露呈した。同会合関係者によると、インドを含めた数ヵ国が、関税率低減あるいは撤廃によって、中国との競争力を失って大幅収入源となることを懸念しているという。
5月22日付中国
『新華社通信』:「ベトナムでRCEP第3回期間閣僚会合開催」
ベトナムがホスト国となって、RCEP第3回期間閣僚会合が開かれ、域内の取引対象商品・生産物・投資などのルール作りについて協議が持たれた。
中国商務部の鐘山(チョン・シャン)部長(商務相に相当)は、中国はこの程開いた“一帯一路”国際フォーラムで示したとおり、RCEPにおいても、域内の平和的協力、開かれた取引、相互に学び収益を分かち合う関係構築に向けて取り組んでいく方針であると表明した。
同会合の議長となったベトナムのチャン・トゥアン・アイン商工相は、RCEPの目指すところは、アジア太平洋自由貿易協定の設立であることを確認し、今後その目標に向かってメンバー国が様々なレベルで協議を続けていくこととなったと述べた。
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