総務省の3月31日発表では、2月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.2%下がって2.8%となり、1994年12月以来、22年2ヵ月振りに2%台となった。一方、2月の消費者物価指数(生鮮食品除く)も前月比+0.2%と直近2年間で最速のペースで上昇している。数字的には吉報とみられるものの、日本の賃金体系、労働人口の縮小等の現実より、日本の景気回復には依然力強さが感じられないと、海外メディアは報道している。
3月31日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本の超低レベルの失業率もエネルギー価格上昇で色褪せ」
日本の総務省が3月31日に発表した2月の失業率は、主要7ヵ国はもとより他のどの国も羨む2.8%と、1994年以来の低レベルであった。 しかし実態は、少子高齢化に伴う労働人口の縮小が背景にあり、安倍晋三首相は、これを補完するために、結婚退職した女性や高齢者の再就業を後押しする政策を実行しようとている。
ただ、これらの就業者はパート・タイムが多く、従って、失業率が低下しても労働賃金の上昇に結びついていない。
また、2月のインフレ率も+0.2%と、昨年の下落(編注;2016年平均▼0.3%)より持ち直したものの、日銀の黒田東彦総裁が掲げた目標値の年率+2.0%には程遠い。
同日付中国
『シナ(新浪)英字ニュース』(
『新華社通信』配信):「日本の失業率が22年振りに2.8%に下がるも、世帯消費は3.8%下落」
日本の厚生労働省の3月31日発表では、2月の有効求人倍率が1.43と1991年7月以来の高水準となった。
また、2.8%と低失業率を記録しても、労働人口が前月より▼0.3%減の6,483万人へと縮小している。
更に、企業が将来の成長性や収益性を懸念して賃金引き上げに消極的であることから、各世帯も消費に慎重となっていて、2月の消費額は前年同月比▼3.8%下落した。
同日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「日本の2月の消費者物価指数が直近2年で最高」日本の2月の消費者物価指数(エネルギー価格は含むも生鮮食品を除く)は前年同月比+0.2%と、直近2年では最速の上昇率であった。
ただ、多分にエネルギー価格の上昇が背景にある。
日銀は、賃金上昇を背景とした物価上昇を期待しているが、状況は厳しい。
すなわち、2月の失業率が2.8%と低水準となっても、世帯消費は▼3.8%下落しており、日銀としては依然金融緩和政策見直しを検討できる状況にない。
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オバマ大統領が主導してワシントンで開催された核保安サミット(注後記)が、4月1日に閉幕した。同サミットでは、目標達成は道半ばとは言え、核物質がテロリストに渡らないよう国際社会が管理を強化するとした共同宣言が採択されている。
4月2日付米
『AP通信』の報道記事「オバマ氏及び世界の首脳が核保安とテロとの戦いを宣言」:
「・4月1日に閉幕した核保安サミット後に記者会見したオバマ大統領は、核テロの脅威は国際社会への最大の挑戦であり、核保安を優先課題として関係各国が一致団結して当ることが肝要と表明。
・ただ同大統領は、核兵器のない世界を作るとの自身の提唱については、未だ道半ばとコメント。
・米国は、二十年前に741トン保有していた高濃縮ウランを2013年時点で586トンまで減らしており、また、日米合意の上で、日本の原子炉の研究用施設で保管の、高濃縮ウラン数百キログラムを米国に輸送して処分したことも公表。
・ただ、核保有国の雄であるロシアが参加しない核保安サミットでの共同宣言の実効性には疑問。
・一方、オバマ氏退陣もあって、核保安サミットは今回で終了し、今後の開催については、国連などの国際機関に委ねられる。」
同日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』の報道記事「オバマ氏、核テロの脅威に警戒が必要と発言」:
「・4月2日の定例会見でオバマ大統領は、まだテロリストグループに、核兵器に転用可能な核物質などは渡っていないが、アル・カイーダは手に入れようとしており、国際社会が一丸となってこれを阻止することが肝要と発言。
・米国はこれまで、核兵器150発相当の高濃縮ウランやプルトニウムを撤去して処理。
・また、十数ヵ国が高濃縮ウランやプルトニウムを適正に処理していることも称賛。
・しかし、世界にはまだ高濃縮ウランやプルトニウムが多くの軍事・民生用施設に分散して保管されており、テロリストグループに渡らないようにするため警戒が必要。」
同日付英
『ミラー・オンライン』の報道記事「オバマ大統領、過激派組織イスラミックス
テートが核爆弾を入手すれば確実に使用すると警鐘」:
「・オバマ大統領は、過激派組織イスラミックステート(IS)が核爆弾を手に入れれば、これを確実に使用し、多くの罪のない人達が犠牲になることから、世界にとって非常な脅威と表明。
・従って、国際社会は以前にも増して、核兵器に転用可能な核物質の保管・管理を厳重にすることが必須と付言。
・また、キャメロン首相は、ベルギーのテロ攻撃をみるまでもなく、テロリストグループによる核兵器使用の恐れは確実に高まっており、これまで多くの首脳会議で遅々として進まなかった核軍縮や核不拡散等、今こそ国際社会が真剣に協議、合意をすべきときと強調。」
同日付ロシア
『イタルタス通信』の報道記事「国連事務総長、2016年核保安サミットの結
果を歓迎」:
「・核保安サミットに出席していた国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、2016年核保安サミットの共同宣言を歓迎すると表明。
・国連としても、核兵器によるテロ攻撃には非常な脅威を感じており、2004年の国連安全保障理事会決議1540(大量破壊兵器不拡散に関する決議)の採択、2005年の核テロリズム防止条約(放射性物質等を所持・使用することを犯罪とし、それらを行った者の処罰・引渡しの協力を定める条約)の締結、また2006年の世界反テロリズム国連戦略を設定して対応。」
同日付中国
『チャイナ・ナショナル・ニュース』の報道記事「オバマ氏、核テロリズムを
深刻に懸念」:
「・オバマ大統領は、核テロリズムの脅威を深刻に訴えると同時に、大統領選共和党候補の一人であるトランプ氏が、日韓も核装備すべき等の暴言を吐いていることに対して、外交や核保安政策を全く理解していない人に大統領になる資格はないと酷評。
・しかし同大統領は同時に、今回の核保安サミットにロシアが代表を送らなかった点について、米ロ関係の改善ができなかったとして反省の弁。
・なお、同大統領は、世界各地に2千トンを超える高濃縮ウランやプルトニウムが保管されていること、そしてその一部の保安状況が良くないことから、テロリストグループが奪取に来る恐れがあると警鐘。
・一方、本サミット前に同大統領と習主席が会談し、南シナ海問題も討議され、米国側が、昨年の習氏訪米時の説明(人工島の非軍事拠点化)と異なると指摘したが、習氏は、一部を取り上げての偏った見方、批判であると反論。」
同日付中国
『シナ(新浪)英字ニュース』(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「習主席、
世界の核保安関与強化を強調」:
「・核保安サミットに出席した習主席は、核の安全管理で、中国が政治的な関与を強化し、核テロの脅威に対して国際的な協力を積極的に推進していくと演説。
・核テロリズムの防御には一国だけで対応することは困難で、今こそ国際社会が一致団結することが肝要と強調。
・今回が核保安サミットの最終回となるが、同主席は、中国が第1回サミット以降の6年間、核保安のための対策に深く関わってきていること、また、核保安サミット後の今後の核保安対策を万全に行っていくことが重要であるとも付言。」
(注)核保安サミット:世界の各国が連携して、核兵器の製造に適する品質の核物質であるプルトニウムやウランなどが、核テロリズムに使われないように安全や保全を確保し、その維持と管理を厳格に行うことを目的とする国際会議。2009年4月、オバマ米大統領がプラハ(チェコ)において演説を行い、核テロは地球規模の安全保障に対する最も緊急かつ最大の脅威とした上で、核保安サミットを提唱したもの。第1回が2010年4月に開かれ、今回が4回目。
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