北欧メディアがみる難民財産押収(2016/02/05)
難民問題に苦慮する欧州では、受け入れ制限を強化する動きがみられる。中でも1月に、一定額以上の所持金や貴重品を没収する法案をデンマークが通過させた事は物議をかもし国際的な非難をよんだ。またスウェーデンも8万人の難民を国外強制送還する決定をした。
デンマークの
『ザ・ローカル紙』では「法律が誤解されている」と「恥ずべき」と賛否が分かれる。反移民や反イスラムを掲げるデンマーク国民党が現在の連立与党を構成するが、既に2005年当時の内閣に閣外協力を行い、デンマークはその時から移民規制へと向かった。
今回の資産押収の法律はその政治状況を反映するとも理解できるが、難民受入れに積極的だったスウェーデンを含む他国でも似た法律が存在する事をスウェーデンの
『ザ・ローカル紙』は伝える。...
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デンマークの
『ザ・ローカル紙』では「法律が誤解されている」と「恥ずべき」と賛否が分かれる。反移民や反イスラムを掲げるデンマーク国民党が現在の連立与党を構成するが、既に2005年当時の内閣に閣外協力を行い、デンマークはその時から移民規制へと向かった。
今回の資産押収の法律はその政治状況を反映するとも理解できるが、難民受入れに積極的だったスウェーデンを含む他国でも似た法律が存在する事をスウェーデンの
『ザ・ローカル紙』は伝える。
スウェーデン「ザ・ローカル紙」は「スウェーデンには不名誉なデンマークの法案と似た法律がある」と見出しをつけて「デンマークは、難民の貴重品を没収する事を認める容赦のない法律で、国民は赤っ恥に苦しむ」と批判的な見方を示すと同時に、スウェーデンでも同様の規則が20年以上存在する事には驚きをもって報じる。
スウェーデン版「ザ・ローカル紙」によると、スウェーデンの場合、1994年以来資産や収入があるとみられる難民には、食費や宿泊費を負担するよう求める。亡命受入れ法の下で、スウェーデン移民局は「難民滞在費用の妥当な支払い」を求める権限を付与され、雇用収入や資産がある者は誰でも妥当な額を支払う。また、移民局の広報担当によると「難民の収入の下限が明記されていない点でスウェーデンの法律の方がデンマークより厳しい」が、「没収の条項は殆ど適用されておらず、支払った人は皆無」で、「所持金なしと申告すれば、移民局が海外で調査する術はない」と広報担当は明かす。形骸化した法律だったため、世間を騒がす事がなかったようだ。
また、中道右派移民受入れ擁護のシンクタンク「ミグロ」のレビンダー氏が「スウェーデンとの最大の違い」として、「デンマークの法律は警察に難民を捜査させ、見返りなしの完全没収を行う」点と、「完全に任意で、滞在費を全額支払っている場合でも資産や所持金を押収させる」点を挙げ、問題点である事を示す。
またスウェーデン「ザ・ローカル紙」によると、スウェーデン以外にノルウェー、ドイツ、英国、スイスなどでも似た法律がある。昨年大量の移民が押し寄せたドイツのバイエルン地方では、現金と貴重品を一律750ユーロと引き換えに没収する。バイエルン社会省の広報担当は「難民は到着時に書類、貴重品、所持品の検査を受け、検査を拒否すれば警察がよばれる」事を確認した。ノルウェーでは、5000ノルウェークローネ以上の所持金をもつ亡命申請者は社会福祉を得る権利を失う場合もあるという決まりがあり、この部分に限れば「ノルウェーの法律はデンマークより厳しい」と弁護士の見解を引用し、スイスでも亡命申請受入れ費用を支払う事が求められる。
難民に冷たい事を敢えて示そうとしたデンマーク。イスラム社会に排斥的なサインを送り状況を悪化させるのか、破綻を避けるためのやむを得ない措置なのか。難民受け入れをプラスとするのに必要な法整備は何か。具体的に考えさせられる問題でもある。
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スウェーデンメディアが報じる「アサンジ」周辺(2015/03/17)
スウェーデン検察が、ウィキリークス創始者のアサンジ氏の尋問を、ロンドンで行う事を発表した。突然の方向転換の背後について、スウェーデンメディアが報じる。
『ザ・ローカル紙』によると、「アサンジ氏はスウェーデン検察がロンドンに来て取り調べを行うか、テレビ電話による尋問を以前から求めていた」が、「英国外務省がこの可能性を歓迎して、スムーズな取り調べへの計らいを申し出た」にも関わらず、「ストックホルム検察は今まで通常の法的慣行ではないと主張し続けた」。この突然のスウェーデン検察の方向転換には、「アサンジ氏に対する容疑の多くの罪状が2015年8月に“出訴期限”を迎え、法的手続きが開始される」事を考慮したスウェーデン最高裁判所の決定がある。...
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『ザ・ローカル紙』によると、「アサンジ氏はスウェーデン検察がロンドンに来て取り調べを行うか、テレビ電話による尋問を以前から求めていた」が、「英国外務省がこの可能性を歓迎して、スムーズな取り調べへの計らいを申し出た」にも関わらず、「ストックホルム検察は今まで通常の法的慣行ではないと主張し続けた」。この突然のスウェーデン検察の方向転換には、「アサンジ氏に対する容疑の多くの罪状が2015年8月に“出訴期限”を迎え、法的手続きが開始される」事を考慮したスウェーデン最高裁判所の決定がある。「スウェーデン検察の発表の数日前に、スウェーデン最高裁は、アサンジ氏がスウェーデン送還に抵抗し続けるために、アサンジ氏の欧州国内での逮捕状取り下げの訴えを、審理する事に合意した」とザ・ローカル紙は報じている。
「アサンジ氏の弁護人のサミュエルソン弁護士が、この決定が今回の起訴におけるアサンジ側の勝利との見方を示した」と伝え、「理論上は最高裁決定による勝利で、アサンジ氏は逮捕の心配なくエクアドル大使館を出る事が可能になり、エクアドルへの安全な道程を認められたのも同然」とアサンジ側の一定の勝利と評するも、「実際は、英国警察はエクアドル大使館に政治亡命を求めた当時の保釈条件違反で、アサンジ氏を拘留可能」な点を指摘し、アサンジ氏の今後は以前不明と言える。
ウィキリークスも「米国の起訴が続いており、例えスウェーデン移送請求が取り下げられても、英国はアサンジ氏をいずれにせよ逮捕する」とツイッター上で述べた。
『スウェーデンラジオ』は「エクアドル大使館では、取り調べの質の低下を招く」が、「今最も重要なのは時間だが、ロンドンでの取り調べ以外に取るべき措置がないため、捜査上の欠陥を受入れる必要があると考えた」と、スウェーデン検察幹部ナイ氏の見解を引用し、苦渋の決断だった事を示すが、「将来裁判が行われれば、アサンジ氏はいずれにせよスウェーデンに滞在する必要がある」、「DNA採取をナイ検察長官が要求した」と報じるように、妥協点となったと見られる。しかしサミュエルソン弁護士によると、2010年に既に採取サンプルを提出している。
ローカル紙は、「アサンジ氏の見張りと警備費用が累積で1億2千5百万クローナ(1500万ドル)で、英国納税者となっている事は英国にとってフラストレーション」とクレッグ英副首相の言葉を報じ、費用問題の現実を示唆する。
ローカル紙は「アサンジ法律チームの陳情では、アサンジ氏は2年間大使館から一歩も外に出られず、窓によりかかる事すらできなかった事を挙げ、亡命を求めて以来アサンジ氏の自由が不当に制限された点に焦点が当てられた」と、人権大国スウェーデンの司法に対する論点を明かした。
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