ニューヨーク州司法省はこれまで、トランプ前大統領が保有する大手複合企業トランプ・オーガナイゼーション(TO、1923年前身設立)の脱税問題等について調査を進めてきた。そしてこの程、ニューヨーク州裁判所が同省の申し立てを認め、証拠書類等提出を求める召喚状に十分応じていないとして罰金を科すとの命令を下した。
4月25日付
『CNBCニュース』は、「NY州地裁判事、同州司法省の訴えを認めて、トランプ財閥の不動産鑑定書類を提出するよう不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールドに命令」と題して、TO保有資産の評価を行ったクッシュマン&ウェイクフィールド(C&W、1917年設立の世界最大の総合不動産サービス企業)に対して、同評価関係書類をNY郡地裁に提出するよう召喚状を発令したと報じた。
NY州地裁のアーサー・エンゴロン判事(2015年就任)は4月25日、NY州司法省が民事事件調査の一環で証拠書類として提出を求めていたTOのいくつかの不動産鑑定資料について、同評価を行ったC&Wに対して当該資料を同地裁に提出するよう召喚状(文書提出令状)を出した。
C&Wはこれまで、関係証拠書類の提出を拒んできたが、同令状に従って5月27日までに提出が義務付けられる。
同省報道官によると、同判事は上記発令の数時間前、同省のレティシア・ジェームズ長官がドナルド・トランプ前大統領(75歳)個人に対して要求していた関係書類提出の不提出を理由として、罰金を科すとの命令も下している。
それによると、同前大統領には、当該関係書類を地裁宛に提出するまでに要した期間に対して、1日当たり1万ドル(約128万円)の罰金が科されることになる。
これに関して、同長官は、“本日は二度も、何人も法を超越することは認められないとの真っ当な司法判断がなされた”と評価した。
更に同長官は、“我々が調査対象としているドナルド・トランプ及びTOに便宜を与えたと疑われるC&Wの行為に関して、地裁もその調査が妥当と判断した”とし、“我々の調査は、今後も怯まずに続けられる”と強調した。
一方、C&Wはメールによる声明で、“本日の召喚状は承知しているが、NY州司法長官の求めに従って真摯な対応をしていないとの主張は全く事実無根である”と表明した。
同社は更に、“同省の調査に協力すべく、これまで多くの時間、人員、費用を割いていて、数万に及ぶ情報提供をしてきている”とも強調した。
しかし、ジェームズ長官は、4月8日にC&Wに対してTOに関わる証拠書類提出を求める申し立てを行ったが、“C&Wは、TOの3件の重要な不動産に関わる鑑定書類の提出を拒んでいる”と主張している。
それは、NY州ウェストチェスター郡のセブン・スプリングス高級宅地、ロスアンゼルスのトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ、及びマンハッタンの40ウォール・ストリート超高層ビル(通称トランプ・ビル)で、同長官は声明で、“TOがこれらの不動産に関し米連邦内国歳入庁(国税庁に相当)に対して、詐欺的もしくは誤解を与えかねない評価報告を行ったとの証拠がある”とし、“この評価報告によってTOは税額控除を得ているが、この評価にC&Wが行った鑑定が利用されている”と糾弾した。
また、同長官の声明によると、“C&Wは2010年及び2012年、TO所有のトランプ・ビルを2億~2億2千万ドル(約256億~282億円)と評価していたのに、2015年には、同ビルを5億5千万ドル(約704億円)と鑑定していて、TOは当時、ラッダー・キャピタル・ファイナンス(LCF、2008年設立の不動産投資信託)から融資を受けるために当該鑑定評価を利用していた”という。
TOのアレン・ワイゼルバーグ最高財務責任者(74歳)の次男のジャック・ワイゼルバーグはLCFの重役である。
そして、アレン・ワイゼルバーグ及びTOは昨年、2005年以降同CFO及び他のTO重役への報酬に対する課税回避の罪で起訴されているが、同CFO及びTOとも、罪に問われることはないとの申し立てを行っている。
4月26日付『ザ・ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年設立)は、「ドナルド・トランプの長年の鑑定人であるC&Wに対して、NY州司法長官の申し立てに従って関係書類提出命令」と題して、C&W及びトランプに対するNY州地裁の決定について詳報している。
NY州司法省がリリースした声明によると、“C&Wは過去十数年にわたり、トランプ及びTOの求めに応じて疑義ある鑑定を行ってきた”とし、“これに基づき、トランプは数億ドル(数百億円)の融資や税制優遇措置を享受してきた”という。
そして、例えばC&Wは、トランプ・ビルの評価を2012年には2億2千万ドルとしていたのに、2015年には3倍以上の5億5千万ドルだと鑑定しているが、その評価変更理由等の説明や関係書類に関わる同司法省の要求をことごとく拒否している、と同省は言及している。
今回の同地裁命令によって、C&Wは関係書類を5月27日までに提出する義務が生じる。
一方、同地裁は、トランプ個人に対して、NY州司法省の求める関係書類を提出していないことから、当該書類提出日まで1日当たり1万ドルの罰金を科すとの命令を下した。
トランプが、この罰金支払いに応じるか未だ定かでないが、アリーナ・ハッバ代理人弁護士(38歳)は、4月25日地裁命令を受けて、可及的速やかに事情説明を記載したトランプ個人の宣誓供述書を提出すると表明している。
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既報どおり、ドナルド・トランプ大統領の大統領補佐官(安全保障問題担当)だったジョン・ボルトン氏(71歳)の暴露本が物議を醸している。“無能”呼ばわりされた当の大統領のみならず、韓国では、安倍晋三首相が実は米朝首脳会談に否定的で朝鮮半島統一を妨害しようとしていたと新たな非難の声が上がっている。そして今度は、安倍首相自身が同大統領と会談した際、同首相実父の安倍晋太郎氏(1924~1991、元官房長官、外相)が実は太平洋戦争時に神風特攻隊に志願していたという話がでたと記載されていることが分かった。
6月25日付
『ザ・ビジネス・インサイダー』(2009年設立)オンラインニュース:「前大統領補佐官、暴露本の中で安倍首相実父が神風特攻隊志願したものの叶わずと言及していたと記載」
ドナルド・トランプ大統領は、2019年の主要20ヵ国首脳会議(大阪サミット)の機会を捉えて安倍晋三首相と会談した際、同首相から実父が第二次大戦時に神風特攻隊(注後記)に志願していたが、それが叶わなかったことを残念がっていたという話を聞いていたという。
今週発刊された、前大統領補佐官のジョン・ボルトン氏執筆の回顧録「それが起きた部屋(ホワイトハウスで起こった様々な事態)」の中で言及されていたもので、同大統領は、“安倍氏の実父が神風パイロットであったことを正直に話してくれた良かった”と発言したという。
記載内容によると、実父安倍晋太郎氏は1944年に高校卒業後、神風特攻隊に志願したが、彼自身の訓練が修了する前に終戦を迎えてしまい、夢が叶わず、とても残念がっていたという。
その後同氏は東大法学部に進学し、新聞社に入社して政治記者のキャリアを積んだ後、政治家となって外相も務めたという。
ボルトン氏は回顧録の中で、“トランプ大統領は、日本人は総じてタフだが、安倍氏が特にタフな理由が分かったと述べていた”と記載している。
更に同大統領は、神風パイロットは酒や薬を飲んでから機上したのかとの自身の質問を安倍氏が否定し、ただ愛する国を守る純粋な気持ちだけで、片道分のみの燃料を積んだ小型機に乗って鉄製の戦艦に体当たりした、との話を聞いていたく感激していたという。
なお、神風パイロットは約3,800人が犠牲になったが、1945年8月に旧日本軍が降伏するまでの3ヵ月間だけで、米軍側の犠牲者は5千人近く、戦艦30隻が撃沈、そしてその他数百隻も損害を被っている。
特に、米海軍の最悪の損失は、1945年4月6日の沖縄戦の際に受けた神風特攻隊の組織的攻撃によるもので、第5艦隊の空母は避けられて小型戦艦が次々に撃沈された。
このときの攻撃だけで、神風パイロット約2千人が戦死している。
(注)神風特攻隊:第二次大戦時、大日本帝国海軍によって編成された爆装航空機による体当たり攻撃部隊(特別攻撃隊)と直接掩護並びに戦果確認に任ずる隊で構成された攻撃隊。1944年10月編成当初の目標は、敵空母の使用不能であり、初回の攻撃でその目標を達成したが、フィリピン中部のレイテ島付近での戦闘で敗戦したことから、目標を敵主要艦船に広げて、1945年1月下旬には全ての敵艦船が目標になった。
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