11月25日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「南シナ海をめぐる現況」
<中国、領海内無断航行の米軍艦に警告>
中国外交部(省に相当)の耿爽(グァン・シュアン)報道官は11月22日、米軍艦が南シナ海の中国領海内を立て続けて無許可航行したとして、厳重に抗議した。
同報道官によると、11月20日には南沙(スプラトリー)諸島の中国領海内に米軍の沿海域戦闘艦“ガブリエル・ギフォーズ”が“違法侵入”し、また翌日には駆逐艦“ウェイン・マイヤー”が西沙(パラセル)諸島の領海内に侵入したとしている。...
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11月25日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「南シナ海をめぐる現況」
<中国、領海内無断航行の米軍艦に警告>
中国外交部(省に相当)の耿爽(グァン・シュアン)報道官は11月22日、米軍艦が南シナ海の中国領海内を立て続けて無許可航行したとして、厳重に抗議した。
同報道官によると、11月20日には南沙(スプラトリー)諸島の中国領海内に米軍の沿海域戦闘艦“ガブリエル・ギフォーズ”が“違法侵入”し、また翌日には駆逐艦“ウェイン・マイヤー”が西沙(パラセル)諸島の領海内に侵入したとしている。
同報道官は更に、中国人民解放軍南部戦区が両艦をそれぞれ追尾し、可及的速やかに立ち去るよう警告を発したと付言した。
<フィリピン、中国の電力配送会社による電力網支配に懸念>
フィリピンのリサ・ホンティベロス上院議員(野党・自由党)は、万が一南シナ海における領有権に関わり、中比間で問題が生じた場合、中国の電力配送会社がフィリピンにおける電力供給を勝手に停止する等の暴挙に出ないか懸念すると表明した。
フィリピンの国営電力配送会社は現在、中国国家電網公司(注後記)によって40%の株式を持たれている。
しかし、耿報道官は11月22日、この懸念に対して、現在中比関係は“元の良好な関係に戻り、更に改善している”として一蹴した。
<中国が海の環境破壊を進めていると非難>
米バージニア州のオールド・ドミニオン公立大学(1930年創立)所属の海洋生物学者、ケント・カーペンター氏はフィリピンの『ABS-CBNテレビ』のインタビューに答えて、中国が南シナ海の岩礁に人工島を建設したことで、深刻な海洋環境破壊が発生しつつあると表明した。
岩礁を大量の土砂で覆ったためにサンゴが窒息死するだけでなく、その土砂が周辺にも流れ出すため、サンゴ自身が再生することも阻害することになると強調した。
その結果、サンゴが死滅した周辺海域には魚類も寄りつかず、よって漁業も成り立たなくなるとも付言した。
<フランス、中国海軍が海洋覇権をあからさまに態度で証明と批評>
フランスのクリストファー・プラズック海軍大将は、インドメディア『ザ・ヒンドゥー』紙のインタビューに答えて、現在中国海軍は、海洋覇権をあからさまな態度で表していると批評した。
同大将によると、中国海軍はアデン湾に出没する海賊の取り締まりのために軍艦を派遣してきているが、攻撃型原子力潜水艦等、海賊退治には大袈裟な戦艦が加わっているという。
更に、海賊はかなり撃退できたが、依然中国海軍は同海域に軍艦を配備したままであり、海賊取り締りを口実として、海洋覇権をあからさまに表す態度に他ならないと非難している。
なお、フランスはインドと共同で、インド洋における監視体制を立ち上げるべく協議を進めている。
(注)中国国家電網公司:世界最大の電力会社であり、太陽光発電や風力発電といった新エネルギーの設備容量も世界一。2018年の米経済誌『フォーチュン』の世界企業500社売上高番付で2位となっている。2002年設立で本社は北京。
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インドネシア向け高速鉄道では中国に敗退し、また、国産小型ジェット機でも中国側に追随され、「クールジャパン」戦略(日本政府による対外文化宣伝・輸出政策で使用される用語)で何かと中国に邪魔をされてきている。しかし、人口で世界第2位の大国インド向け新幹線は、ほぼ日本が成約に漕ぎ着ける見通しとなったと、米・インドメディアが伝えた。
12月8日付米
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「12月8日付「日経」によると、インドネシアの高速鉄道建設計画では中国に敗れたものの、インド向け新幹線では、日本がほぼ契約を勝ち取る見通しとなったという。日本は、総工費9,800億ルピー(約1兆8千億円)と見積られる、ムンバイ(西部最大都市)とアーメダバード(北西部工業都市)間505キロメーターを結ぶ高速鉄道建設計画に対して、1兆円を超える円借款を供与する提案を行っている。安倍首相が今週インドを訪問し、モディ首相との首脳会談で最終合意を目指すという。なお、同建設計画は2017年に着工し、2023年に完工予定である。」と報じた。
同日付米
『NYSEポスト』証券取引ニュースは、「外務省は、安倍首相のインド訪問は、年次首脳会談出席のためとしているが、同首相はモディ首相との12月12日首脳会談において、インド初の高速鉄道に日本の新幹線を採用することにつき最終合意したい意向である。新幹線導入によって、ムンバイ・アーメダバード間の所要時間(8~10時間)が僅か2時間程に短縮される。なお、同新幹線は2007年に台湾で導入されているが、もしインド向けが成立すれば、2例目の新幹線輸出となる。」と伝えた。
また、同日付米
『クォーツ・ニュース(大西洋メディア社配信)』は、「新幹線建設費用として、インドに提案している1兆円を超える円借款について、適用金利は1%以下と破格である。なお、この円借款を供与することになると、直近10年で年1,000億円増えてきたインド向け円借款貸付残高(注1後記)が、これまで最高だったインドネシアを抜いて1位となる。」と報じた。
一方、同日付インド
『ザ・ヒンドゥー』(南インドの一般紙、1878年創刊)は、「国際協力機構(JICA、注2後記)とインド鉄道省は、2年前から高速鉄道建設の採算性評価作業を行ってきた。なお、日本の新幹線の採用が決定されると、国際入札が開かれることになり、JR東・川崎重工・日立のコンソーシアムが応札するとみられる。」と伝えた。
記事中にもあるとおり、新幹線輸出の2例目になるかどうか注目されるが、目下米国やマレーシアなどでも進める新幹線導入計画が左右されることになるため、政府としても形振り構わず成約を目指している。特に、インドネシア高速鉄道建設が、中国による6,000億円の無保証ローン提案によってひっくり返されたこともあって、インド向け商談に関し、安倍首相自らのトップセールスで以て最終合意を勝ち取ろうとしている。
(注1)円借款貸付残高:政府開発援助(ODA)と違って、返済義務のある低金利ローンで、2012年現在の貸付残高は29兆円余り。最大はインドネシアの2兆円、2位インド1兆5千億円、3位中国1兆円、4位フィリピン8千億円、5位タイ4千億円。
(注2)JICA:2003年10月設立の外務省所管の独立行政法人(前身は国際協力事業団)。開発途上地域・国向けの技術協力、円借款、無償資金協力の援助方法を一元的に担う、総合的なODAの実施機関。
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