先週、今週と報じたとおり、親中政策を取るロドリゴ・ドゥテルテ比大統領は、総論で巨額の中国経済支援を期待する一方、各論ではフィリピン権益を何とか守ろうと模索している。これに対して日米のみならず英国も、南シナ海において一方的に勢力を拡大している中国に対して、領有権問題を抱えるフィリピンなどを後押しして、中国を牽制する政策を取っている。ところが、肝心の同大統領がまたしても、在マニラ中国大使を慮って、フィリピン在住の中国人実業家を前にして、中国の南シナ海軍事拠点化を容認する演説をし、米国等を落胆させた。
2月20日付米
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「フィリピンのドゥテルテ大統領、中国の南シナ海軍事基地は米国にとってのみ脅威となると発言」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は2月19日、フィリピン在住の中国人実業家の会合に出席して、中国の南シナ海軍事基地は米国にとってのみ脅威となるかも知れないが、フィリピンとしては懸念を抱いておらず、中国とは外交交渉で領有権問題を解決できると強調した。
更に同大統領は、今や経済力・軍事力で大国となった中国に戦いを挑むような愚かなことは考えておらず、むしろ中国との親交関係回復に注力したいとも付言した。
なお同会合には、在マニラ中国大使の趙剣貨(チャオ・チアンホァ、52歳)氏が列席していた。
2月19日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『ロイター通信』配信):「ドゥテルテ比大統領、南シナ海の中国軍事施設を軽視」
ドゥテルテ大統領は、フィリピン在住の中国人実業家を前にして、中国が南シナ海人工島に建設した軍事施設は、周辺国への対抗というより、米軍に対する防衛上のものだと演説した。
同大統領は更に、南シナ海におけるフィリピン権益を守ろうとしないとの批判に対して、(軍事大国の中国に対し)無駄な戦いを挑んで、同国民の生命を犠牲にすることはできないと強調した。
また同大統領は、先週同国政府見解として、ベンハム隆起(ルソン島北東側の大陸棚)内の海山に中国名を冠することに反対すると表明したことに関し、同隆起がフィリピンに帰属することは明らかで、一方、同隆起内の地形等の調査の結果、中国が中国名を付けるのは中国の勝手だとして、これに対しても軽んずる発言をしている。
演説の最後に同大統領は、もし中国が望むなら、“中国フィリピン省”とでも名付ければ良いとのブラックジョークを飛ばした。
*編注;同大統領の演説では、“Province of the Philippines, Republic of China(直訳すると、中華民国フィリピン省)”と発言しており、“People’s Republic of China(中華人民共和国)”とすべきところを単純に言い間違えただけなのか、それともこの表現もブラックジョークの一部と考えられるのか、本記事を執筆した『ロイター通信』記者に照会したいところではある。
2月20日付フィリピン『ザ・サン・スター』紙:「ドゥテルテ大統領、領有権問題のある南シナ海での中国による軍事拠点化を軽視」
米国他関係国が南シナ海における中国の軍事拠点化に懸念を表明する中、ドゥテルテ大統領がこれを許容すると取れる発言は、2月19日に開催された、中国・フィリピン商工会議所創立20周年記念式典において行われた。
なお、同大統領は以前から、大国中国に戦争を挑むようなことはしないと発言している。
また、同大統領府のハリー・ローク報道官は今週、人工島の施設はやがてフィリピンに譲渡されると期待しており、その際は中国側に謝意を表明したいと発言している。
一方、同日付中国『新華社通信』:「フィリピンのドゥテルテ大統領、中国・フィリピン商工会議所のフィリピンへの貢献を称賛」
ドゥテルテ大統領は2月19日、中国・フィリピン商工会議所の創立20周年の記念式典に出席し、同会議所がフィリピンの貧困対策に大きな貢献をしたと称賛する演説をした。
同会議所は特に、フィリピン南部のマラウィ市(ミンダナオ島北西部、イスラム過激派と国軍の戦闘が頻発)の被災住民らへの住居提供などで同政権を後押ししている。
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