政治問題に殆ど介入しない英国のエリザベス女王(90歳)が昨年10月英国を公式訪問中だった中国高官らが「大変無礼だった」と漏らした映像が公にされた。雨の中行われたバッキンガム宮殿でのイベントで、ルーシー・ドオルシ警察高官が昨年中国の習近平国家主席の訪英の際の警備責任者だったと紹介されると、女王が「それは不運ですね」と発言。また、バーバラ・ウッドワード駐中大使が同席する会合を中国側が(訪問を中止するとして)退席した件に関して非礼な態度だったとした。公に他国の代表を非難するのは普段の女王らしくないが目に余ったようである。両国は中国側の貿易や投資を促す目的を含む習氏訪英を「大成功」としている。
5月11日付米
『ビジネスインサイダー』(AP通信引用)は「エリザベス2世、中国高官を無礼」との見出しで以下のように報道している。
・当発言は王室公認の3局のカメラマンに記録され、放送された。女王に近しい2人のリポーターは発言を聞き逃していたが、ビデオを見ると聞き取れたという。
・英国側高官が女王にドオルシ氏は「相当中国側に手を焼いていました」と伝え、ドオルシ氏が女王に「試練でした」というと、「分かります」と女王はすぐ様返答した。...
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5月11日付米
『ビジネスインサイダー』(AP通信引用)は「エリザベス2世、中国高官を無礼」との見出しで以下のように報道している。
・当発言は王室公認の3局のカメラマンに記録され、放送された。女王に近しい2人のリポーターは発言を聞き逃していたが、ビデオを見ると聞き取れたという。
・英国側高官が女王にドオルシ氏は「相当中国側に手を焼いていました」と伝え、ドオルシ氏が女王に「試練でした」というと、「分かります」と女王はすぐ様返答した。
・ウッドワード駐中大使が同席する会合を中国側が訪問を中止するとして退席した件に関して、ドオルシ氏が「席を退ったんです」というと、女王は「とんでもない」と答えた。ドオルシ氏は「非常に失礼で、外交的ではなかったと思います」と言った。
・録音されるほどの声だったと女王が気が付いていたかは不明。思慮深さで国民から信頼され憲法上の立場を厳格にわきまえているため、女王の世界情勢観は分かりにくいが、今回少なくとも中国の貿易強化を狙い英中の関係強化のため訪英した中国代表団には不快を覚えたという事が明らかとなった。
・女王の発言は両国間で波紋をよび、中国外交部ル・カン報道官は女王の発言に対し、明言は避けたが昨年の訪英は良好側の関係者の多大な努力で「大成功」に終わったと述べている。しかし、中国側は女王の発言に敏感に反応しており、厳重なネット情報統制により「BBC」の当件に関する記事も検閲が掛けられている様子。"英国側は両国に緊張感はあったが、「中国との関係は今回の訪英でさらに強化される」とし、概ね成功とした。
・女王は習夫妻を宮殿内を案内し、豪華な晩餐の席ではシェークスピアのソネットをとり上げ、2国間の輝かしい「友好関係」を語った。当時、公式には緊張感は走らなかったが、チベット仏教の最高指導者ダライラマを支持する後継者チャールズ皇太子は公式晩さん会を欠席。
・過去の中国批判発言で、チャールズ皇太子は1997年中国への香港返還式の際自身の日記に、中国上層部を「老朽した蝋人形のようだ」と表現、1986年フィリップ皇太子は中国に留学中のイギリス人学生に中国に長く滞在すると「(中国人みたいに)目が細くなりますよ」と述べたと報道された。
同日付英
『BBC』は、「女王の中国高官を無礼とする発言が撮影されていた」との見出しで以下のように報道している。
・中国の政府報道官が訪英を2国関係の「黄金時代」の始まりとしていた。今日もその時代は続くかと数回質問され、報道官は賛成も否定もしなかった。ロンドンの中国大使館は2国間は「業務上」は良好関係に努力したとした。
・昨年中国側の訪英での晩餐会で女王はこれを「画期的瞬間」と称賛し、アングロ・中国関係の更なる発展を宣言。「黄金時代」の幕開けとなる貿易関係強化目的の訪英だと思われた会合は、女王の庭園内での会話により裏方にとって試練の時であったことが明らかとなった。
・王室はプライベートでの会話とされる発言にコメントを発表していないが、中国との関係強化のため全党一丸で当たってほしいと強調。
・中国のこの件に関する報道は検閲されており、地方メディア局に女王の服装等に触れた記事があるのみ。ソーシャルメディアでは投稿が多かったが、オンライン検閲によりその多くが削除された模様。中国語でなく英語を使用し検閲を免れたユーザーが女王の発言を拡散している。
同日付中国
『サウスチャイナモーニングポスト』は、「習近平の訪英失態、女王が中国高官を無礼と発言」との見出しで以下のように報道している。
・「BBC」放送の字幕によると、「それは不運だったわね」と女王はドオシー警察高官の任務に対して発言。ドオシー氏は「中国側にはとても手を焼きました」と述べた。初の女性駐中大使ウッドワード氏に対して大変無礼だった。
・注目された習氏の300億ドルを締結した訪英での女王の(晩餐会で賞賛の意味での)「画期的瞬間」は今後の英中関係を表現している。
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アキノ現大統領の任期満了に伴うフィリピン大統領選挙が5月9日行われ、ダバオ市長のドゥテルテ氏が当選確実となった。ドゥテルテ氏はダバオ市長として犯罪の街として知られたダバオ市の犯罪を大きく減少させたことで強いリーダーシップを評価されて当選したものと思われるが、「犯罪者は殺す」などの暴言を繰り返しており、米国大統領候補のトランプ氏を思い出させるキャラクターの持ち主である。現アキノ大統領の下でフィリピンは高い経済成長を達成したが、その恩恵は富裕層に留まっており経済格差についての一般大衆の不満が高まっている。大衆が求める荒っぽいが強力なリーダーシップを誇示するポピュリストへの支持が拡がるという風潮が世界のあちこちで発生しているようだ。
5月9日付
『ニューヨークタイムズ』は、「フィリピンで聞くロドリゴ・ドゥテルテ氏の声に聴きなれた傾向」という見出しで、フィリピン大統領選挙開票でドゥテルテ氏がリードしているが、同氏はこれまで国政の経験はなく個別の政策を中心に選挙運動を進めたり、暴言を吐くなどトランプ候補に類似していると報じている。同氏は選挙期間中過去にダバオであったオーストラリア人美人女性宣教師強姦殺人の犯人を羨ましがったり、妻二人とガールフレンドが二人いると精力絶倫を誇示したり、犯罪者を殺せと発言したりしており、非合法の殺人団への関与の疑いもある。アキノ現大統領の控えめな姿勢とは対照的で支持を得ているが、アキノ大統領はドゥテルテ大統領が独裁政権の再来となるかもしれないと警告していると報じている。
5月10日付フィリピンの
『マニラブレティン』(ロイター通信引用)は、「異端市長ドゥテルテ氏、フィリピン大統領選勝利」という見出しで、扇動的市長であるドゥテルテ氏が犯罪を撲滅するという公約に対する支持を得て次期大統領の地位を確実なものにしたと報じた。ドゥテルテ氏は南シナ海における中国との紛争については、日本、オーストラリア、米国を巻き込んで中国との交渉を進めると述べている。また犯罪と麻薬の撲滅以外には具体的な政策が明確ではないが、外国資本規制の緩和や農業や地方の開発を優先すると表明していると報じている。
5月10日付香港の
『サウスチャイナモーニングポスト』は、「開票率90%で硬派ドゥテルテ氏5百万票の差でフィリピン大統領選勝利の見込み」という見出しで、犯罪の増加と非効率な公共サービスに不満を持つ中間層の支持を受け硬派ドゥテルテ氏が大統領選勝利の見込みと報じた。並行して行われた副大統領選挙では過去の独裁者マルコスの息子が優勢であり、フィリピン政界には非正統派のドゥテルテ、マルコス政権誕生の衝撃が走っていると報じている。
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