土葬が主流のアメリカで、環境にやさしい新たな埋葬方法として昨年、遺体を有機還元する堆肥化が合法となった。実証試験では、遺体を4~6週間で手押し車2台分の土に変える事が出来たという。一方、火葬は大量の二酸化炭素を排出する。今後堆肥化が埋葬の新たな選択肢となるのだろうか。
2月16日付英国
『ガーディアン』は「人間堆肥が未来の死後ケアに」との見出しで以下のように報道している。
堆肥処理は、バナナの皮や珈琲豆のかすには最適とされるが、人の堆肥など環境に優しい死後ケアの選択肢が今模索されている。米国科学振興協会(AAAS)の会議で、ワシントン州立大学の土壌学と持続的農業学のリン・カーペンター・ボッグス教授は、「死は大きく環境に影響を与えるものではないが、別の新たな選択肢も模索する事が可能だ。...
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2月16日付英国
『ガーディアン』は「人間堆肥が未来の死後ケアに」との見出しで以下のように報道している。
堆肥処理は、バナナの皮や珈琲豆のかすには最適とされるが、人の堆肥など環境に優しい死後ケアの選択肢が今模索されている。米国科学振興協会(AAAS)の会議で、ワシントン州立大学の土壌学と持続的農業学のリン・カーペンター・ボッグス教授は、「死は大きく環境に影響を与えるものではないが、別の新たな選択肢も模索する事が可能だ。」としている。
ワシントン州は、最近になり米国内で初めて人間の堆肥を合法化。イギリスでも葬儀関係者からは、グリーン埋葬などの埋葬や火葬への要望が高まっているとの報告がある。
来年シアトルで世界初の人間堆肥の会社となる予定の「リコンポーズ」社の顧問でもあるカーペンター・ボッグス教授は、6体の遺体堆肥処理の安全性や効果に関する試験的プロジェクトからのデータを紹介。自然有機還元として知られるプロセスでは、遺体を4~6週間で手押し車2台分の土に変える。遺体は再利用可能な6角形のコンテナーに木材チップ、アルファルファ、藁と一緒に入れられる。湿度や二酸化炭素、窒素、酸素が厳密に制御され、好熱性の微生物が好む完璧な環境が保たれ、分解を促進するしくみ。ペースメーカーやシリコンなど人口のもの以外なら、骨や歯に至るまで、堆肥となることが確認されたという。土には、生物学的な安全性の基準となる大腸菌群も微量に含まれ、親族が安全に散骨出来るか、花や野菜の堆肥に適するかは検討が必要。
火葬では80万バレルの石油(ロンドン、ローマ間の燃料に匹敵)を燃やすこととなる。また火葬には防腐剤が地下にしみこんだり、棺で木や金属など自然資源を使うという問題がある。
同日付米国『サイエンスニュース』は「試験結果からみる遺体の堆肥化の効用」との見出しで以下のように報道している。
人の死体は微生物の格好のえさである。そこで6体の遺体に対し、木材チップや有機物を使って分解する試験的研究が行われた。 2月に出た結果では、堆肥または自然有機分解は、地球にやさしい遺体の処理方法だということが示された。防腐加工には毒性流体が必要となるため遺体の処理には問題がある。だが火葬も多くの二酸化炭素を排出する。しかし、微生物が土に分解する堆肥処理は、素晴らしい選択肢となりえる。
昨年ワシントン州が死後の自然有機分解を認める最初の州となり、シアトルの企業「リコンポーズ」社が堆肥にためまもなく遺体の受付を開始する予定である。
6遺体の試験によると、植物性物質を入れたコンテナー使い、分解を進めるための最適な状態を保つため、規則的に回転させると、4~7週間後には微生物の働きで遺体が骨になるのだという。
動物の死体は土壌の栄養を豊富にするが、この方法を人にも応用、微生物の活動から出る熱が危険な病原菌の死滅にも役立つ。畜牛を堆肥とした試験では、温度計の針が飛び、木材チップが焦げるくらい温度が非常に高くなった。高温でも死滅しないのは、プリオン(突然変異したタンパク質)で、病気を引き起こすおそれがあり、クロイツフェルト・ヤコブ病を持つ人には堆肥処理は向かないという。人へ堆肥をどの範囲まで応用できるか、ワシントン州以外の議会でも議論が進んでいるという。
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