AP通信「軽犯罪での実名報道しない」(2021/06/16)
世界にニュースを配信しているAP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。インターネット上に個人情報が長期間残り、当事者の社会復帰などの妨げとなるのが理由だという。殺人等の重罪事件については、市民の安全を考慮しこれまで通り実名報道を行うとしている。
6月15日付米国
『ザ・ヒル』は「AP通信、今後は軽罪事件での容疑者の実名報道をしない」との見出しで以下のように報道している。
AP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。同社は、ネット上に実名情報が長期間保存され、当事者の求職や社会復帰の妨げとなりかねないというのが理由だという。
また読者にとり有益な情報であるか検討し、必要ないと判断される場合は、公平性を維持したうえで、追加記事には犯人確保という以上の報道はしない。...
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6月15日付米国
『ザ・ヒル』は「AP通信、今後は軽罪事件での容疑者の実名報道をしない」との見出しで以下のように報道している。
AP通信社は、軽犯罪事件については今後、容疑者が逮捕されても実名を報道しない方針を示している。同社は、ネット上に実名情報が長期間保存され、当事者の求職や社会復帰の妨げとなりかねないというのが理由だという。
また読者にとり有益な情報であるか検討し、必要ないと判断される場合は、公平性を維持したうえで、追加記事には犯人確保という以上の報道はしない。実名を非掲載とする以外にも、実名が出ている軽罪記事へのリンクも付けも行わず、(読者の目を引くように)特徴的だという基準で顔写真を掲載することはないという。
これらの措置は軽犯罪のみに適用され、殺人等の重大事件については、市民の安全を考慮し、これまで通り実名報道を行うとしている。
同日付オランダ『BNOニュース』は「AP通信が軽罪容疑者の実名報道中止へ」との見出しで以下のように報道している。
世界最大手ニュース機関の一つであるAP通信社は15日、今後軽犯罪などの報道においては実名を公表しない旨を発表した。また、見た目の理由から顔写真を掲載するのも止める方針だという。「AP通信のニュースは広範囲に配給されており、記事内で実名が報じられた容疑者が後に求職や復帰をする際に困難となる可能性がある」と標準担当副社長ジョン・ダニシェフスキー氏は声明で述べている。
軽犯罪について、追加報道がされない場合には、容疑者の実名は今後伏せて報道されることとなる。これは、詳細が特異だと判断される記事にも適用される。
容疑者の実名情報は一般的に地元住民以外には価値がないと判断される。顔写真により人物が特定できるという理由から、写真も掲載しない方針だという。また、容疑者の見た目から判断し、写真や記事を掲載することも止める。このような顔写真は、ローカル局のウェブサイトの写真ギャラリーに使用されることもあり、ニュースの価値や市民の安全という理由よりも、酷い写真だということに注目が集中する傾向があるためだという。
弁護士でテレビタレント、そして今年のニューヨーク地方裁判官に立候補しているパーソナリティのエリザオリンズは、AP通信の決定について「とても大きな動き。市民を守る弁護士として、事件が解決し何年経っても報道により人生を狂わされた人を見てきた」と述べている。
また、同日付米国『AP通信』は、「軽罪に関する報道として、裸や酔ってバーで踊り逮捕された人などの報道があるが、地域限定や全国的に関心は集めるものの、翌日には忘れられてしまう程度のものだ。だが、逮捕者の名前は容疑が取り下げられたり、釈放されてからもネット上に永久的に残っており、そのため仕事を得る機会を失ったり、クラブに所属したり起業する際に妨げとなることもある。」
「ボストングローブ紙など他の機関でも同様の動きがあり、ネット上に名前が残っている人からの要望からという場合もある。2018年の Dwyerの調査によると、ニュース機関の8割では、アーカイブから記事を削除する規定が約5年前からあるが、明文化はされておらず社内での議論も十分ではない。」としている。
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カナダで拡大する中国の影響力(2021/06/03)
香港の民主化を庇護するカナダの団体「アライアンス・カナダ・香港」は5月31日、カナダの下院カナダ・中国関係特別委員会に報告書を提出し、中国による影響力拡大のための活動がカナダの広範囲に及んでいるにもかかわらず、ほとんど気づかれていないと警告した。
カナダ紙
『ナショナル・ポスト』によると、「アライアンス・カナダ・香港」代表のシェリー・ウォン氏は5月31日、下院特別委員会に対し、中国共産党が近年、外国でも世論を動かし、批判の目をそらすために広範囲に及ぶ取り組みを行っていることに対して警告した。中国の指導部は、自国の地政学的な地位を高めるために、カナダを含む外国の政治家、学者、メディア、その他の機関を支配しようとしているという。同氏によると、こうした取り組みは一般大衆にはほとんど気づかれず、中国が人権や知的財産に関する国際ルールを無視しているにもかかわらず、カナダの中国への依存度がさらに高まっていると警告している。...
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カナダ紙
『ナショナル・ポスト』によると、「アライアンス・カナダ・香港」代表のシェリー・ウォン氏は5月31日、下院特別委員会に対し、中国共産党が近年、外国でも世論を動かし、批判の目をそらすために広範囲に及ぶ取り組みを行っていることに対して警告した。中国の指導部は、自国の地政学的な地位を高めるために、カナダを含む外国の政治家、学者、メディア、その他の機関を支配しようとしているという。同氏によると、こうした取り組みは一般大衆にはほとんど気づかれず、中国が人権や知的財産に関する国際ルールを無視しているにもかかわらず、カナダの中国への依存度がさらに高まっていると警告している。
ウォン氏は、「企業、非営利団体、学界、政治家、メディアなど、既得権益を持つ機関が中国政府を怒らせることを恐れる限り、脅し、検閲、脅迫は続くでしょう。中国は事実上、自国の権威主義を海外に輸出しているのです」と委員会に語った。
同氏によれば、中国政府に対する批判者は、さまざまな強制的な戦術によって黙らされるケースが増えているという。アライアンス・カナダ香港を設立したウォン氏は、かつて香港を支配しようとする中国の動きを批判したことで、脅迫電話を受けたことがあるという。「反体制派には安全がありません。職場でも、自宅でも、社会の中でも、そして海外のカナダでも安全ではないのです」。
また、カナダは「自国の機関、政治、社会に影響力を行使するために中国が築いたネットワークについて知識や理解が不足している」と述べ、その結果、カナダに影響を与えようとしている中国の取り組みに誰も気が付かないでいると指摘した。
「アライアンス・カナダ・香港」の報告書は、中国が海外の民主主義の国に支配力を行使している7つの主要分野について詳しく述べている。1つ目は、「一帯一路」構想に戦略的貿易インフラの相互接続を含めるなどして、カナダでの政治的影響力を確立しようとする分野だ。報告書は、バンクーバー空港近くに建設された47万平方メートルの「世界商品貿易センター」を例に挙げ、これは貿易関係の主導権を握り、戦略的利益を拡大するという中国政府のより広範な戦略に適合すると指摘している。
中国はまた、カナダの天然資源やその他の資産に巨額の投資を行うことを約束しているが、こうした取り組みによって、カナダの政治家が中国の指導力を批判する意欲が低下しているという。カナダのトルドー首相は、中国に対して軟弱な姿勢をとっていると批判されているが、これはカナダが農産物などの輸出で中国に大きく依存していることに起因していると言われている。
報告書は、中国が影響力を持つ2つ目の分野として、「海外エリートの囲い込み」を挙げている。この取り組みは、「関わる機会を作り、政策決定に影響を与え、共産党国家にとって有利な世論を形成する」ことを目的としているという。
中国共産党は、いわゆる「ソフトパワー」戦術に年間約100億ドル(約1兆円)を費やし、学術的手段やその他の方法で世論を揺るがそうとしている。北京のコンサルティング会社「Development Reimagined」 によると、中国共産党は過去 15 年間で約 500 の孔子学院を海外の大学キャンパスに設置し、中国語や歴史などの授業を通じて中国文化を広めてきた。中国はまた、学界、特に研究開発の分野でその影響力を拡大しており、多くの場合、「学者や研究者を長期的な支配的関係に閉じ込めるような資金提供」を通してその影響力を拡大している、と報告書は述べている。カナダのあらゆるレベルの政治家は、このような取り組みを徐々に認識するようになってきたが、「不適切な連邦規制」がこのような資金提供の継続を許しているという。
カナダ紙『グローブ・アンド・メール』によると、報告書では、中国の海外に対する影響力の調整を行う機関「統一戦線工作部」が、中国系カナダ人や政治家、学者、ビジネスリーダーを威嚇し、協力させるために、様々な組織の精巧なネットワークを指導、管理している様子が詳しく紹介されている。「統一戦線は、カナダでNGOや市民社会などの仮装グループを作り、活用している。これらの組織は、地域のための合法的な活動組織を装いながら、香港の国家安全保障法を称賛したり、北京オリンピックへの反対意見を非難したりするなど、親中的、共産党寄りのメッセージを積極的に広めている」という。また、統一戦線傘下の組織により嫌がらせや脅迫が行われるだけでなく、WeChatや中国語のメディアを通して、ウイグル人、チベット人、台湾人、民主主義を支持する香港人、中国本土の反体制派に関する誤情報が流されているという。
ウォン氏は委員会に対し、カナダ連邦政府が中国の反発を恐れることなく、米国やオーストラリアが採用しているような影響力を制限する措置を取らない限り、こうした影響力の行使は続くだろうと述べた。そして、オーストラリアのように、外国の国家のために活動する人や組織に外国代理人として登録することを義務付ける法律を作るべきだと主張した。そして、外国からの影響に関する政府機関を設立し、法律の調査と施行、公的調査の開始、外国からの影響に関するデータの収集などの権限を与えるべきだと提言した。
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