近年、自動車の世界販売台数の競争は、トヨタとフォルクスワーゲン(VW)の間で熾烈になっていた。しかし、これまで何度か触れたとおり、VWの得意とする新興国の景気後退、更には、9月に発覚した排ガス不正問題に遭って、VWの年間販売台数が落ち込み、トヨタが4年連続の世界一となることが確実となったと各国メディアが伝えた。
1月8日付米
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「VW、13年振りに販売台数下落」との見出しで、次のように報じた。
「・VWは1月8日、2015年の世界販売台数が、2002年以来落ち込むと発表。
・昨年12月の販売台数は834,800台と5.2%下落し、2015年通年で990万台となり、前年比▼2%落ち込む。
・景気後退に遭った新興国の落ち込みが激しく、ブラジルは通年で▼38%以上、ロシアも▼37%下落。...
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1月8日付米
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「VW、13年振りに販売台数下落」との見出しで、次のように報じた。
「・VWは1月8日、2015年の世界販売台数が、2002年以来落ち込むと発表。
・昨年12月の販売台数は834,800台と5.2%下落し、2015年通年で990万台となり、前年比▼2%落ち込む。
・景気後退に遭った新興国の落ち込みが激しく、ブラジルは通年で▼38%以上、ロシアも▼37%下落。西欧州で+4.8%と奮起したが、上記落ち込みをカバーできず。
・中国においても、通年で▼3.4%と355万台の販売に落ち込み、年間+5.2%、361万台販売と健闘したGMの後塵を拝す。
・VWは排ガス不正問題の影響についてコメントを避けているが、米国内ではディーゼル車を販売しておらず、また、通年でも▼4.8%と2004年以来の落ち込み。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙は、「VW世界販売台数、排ガス不正問題が響いて▼2%下落」との見出しで、以下のように伝えた。
「・VWの2015年世界販売台数は993万台と、2014年の1,014万台より▼2%下落。
・排ガス不正問題の影響もあろうが、それは9月下旬に発覚したことで、むしろ新興国の大幅下落が影響大。
・VWは2014年にトヨタに僅かに競り負けて2位(3位はGM)となったが、2015年上半期は僅かながらもトヨタを上回り、年間首位を狙っていたが、目下の見込みではトヨタの首位は揺るがず。」
同日付中国
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英語版)』は
『ロイター通信』記事を引用して、「VWトップ、米国の排ガス不正問題解決に自信」との見出しで、次のように報じた。
「・VWグループ乗用車部門トップのディエス会長は1月7日、排ガス不正問題対象となった約50万台のディーゼル車を規制に適うよう適正に措置することで、米当局の了解取得に自信と表明。
・同氏は、ラス・ベガス(ネバダ州)で開催中の“コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(全米家電協会が毎年1月に開催)”に出席して会見。
・米司法省は1月4日、米環境保護法違反の罪で、VWに対し最高480億ドル(約5兆7,600億円)の罰金支払いを求めて提訴。」
一方、同日付米
『サン・フランシスコ・クロニクル』紙は、「VW、州要求の情報提供拒否」との見出しで、以下のように伝えた。
「・排ガス不正問題で、米司法省とは別に、多くの州がVWの責任追及、特にトップ関与の有無について調査中。
・この一環で、VWの電子メール等の提出を求めるも、VWはドイツのプライバシー法を盾に拒否。
・米国同様、ドイツのプライバシー法は厳しく、国外、ましてや欧州連合(EU)外に関連情報の持ち出しは困難。
・VWの新トップのミューラーCEOが就任時、会社の信用回復と透明性確保に全力を挙げると発言したにも拘らず、ドイツ法を盾に情報提供を拒んでいることに、各州法務長官は大いに不満。」
なお、トヨタの2015年世界販売台数の発表は1月下旬となるが、12月末発表の概算では、前年比▼1%減と4年振りの前年割れなるも、1,009万8千台との見通しとなっており、4年連続で世界一となることが確実である。
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12月28日付韓国
『コリア・ヘラルド』韓国英字新聞は、「慰安婦問題に関わる日韓合意、与・野党の評価は真っ二つ」との見出しで、「12月28日の日韓外相会談に基づく慰安婦問題に関する合意に関し、与・野党は全く違った評価を下した。与党セヌリ党の李(イ)報道官は、日本政府の責任を明示した点で相当に進展した合意であると評価した。しかし、最大野党新政治民主連合の金(キム)報道官は、日本政府は法的責任を回避しており、絶対に受け入れられない、と強く非難した。」と報じた。
また、同日付韓国
『聯合ニュース』は、「慰安婦問題に関わる日韓合意、専門家の賛否分かれる」との見出しで、「韓国の時事問題専門家の評価が分かれている。賛成派は、日本側が公式に慰安婦に対する謝罪を表明したことを評価している。しかし、反対派は、合意事項に日本政府の法的責任について言及がないため受け入れられないとしている。また、元慰安婦の一部は、両国間の政治的決着に素直に従うことはできないし、合意結果を無視する、と表明している。」と伝えた。
一方、同日付中国
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英語版)』は、「中国、慰安婦問題に関わる日韓合意を受け、日本側にその他の歴史問題解決を要求」との見出しで、中国外交部の陸(ルー)報道官のコメントを引用して、「これまで中国は、日本は過去の歴史的過ちを反省し、責任を持って問題解決に当るべきだと主張してきた。従って、(今回の日韓合意を受けて)中国は、その他の問題についても日本が責任を持って対応するよう求める。」と報じた。
これまで何度も触れたとおり、韓国側は、1965年の日韓基本条約において、日本側の官民総額8億ドルの援助資金と引き換えに、賠償金の請求権を放棄する、との取り決めがあったにも拘らず、従軍慰安婦や強制徴用問題を蒸し返し、賠償を請求してきている。また、これまでの韓国政治体制をみても明らかなように、前大統領の政治的行為が、次の大統領によって否定されたり、刑事訴追されたりしてきている。従って、今回の朴(パク)政権の日本側との合意事項についても、政権が交代したときに反故にされる可能性は否定できない。
日本側としては、元慰安婦支援のために一括拠出する10億円の資金について、合意に基づく解決策が最終的かつ不可逆的でなくなった場合、拠出金の全額または一部でも返還させるとか、合意事項が守られない場合の賠償請求権に言及することも、今後用意される合意文書に織り込むべきではなかろうか。いやしくも、両国政府代表が合意した事項に関し、世論やマスコミ等の反対によって、また“ゴールポスト”が後退させられてしまうような事態が起きた場合に備えて。
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