3月27日付
『オイルプライス.コム』オンラインニュース:「エネルギー多様化に苦しむ日本」
太陽光発電が安価で得られるようになったこともあって、世界における再生エネルギーの占める割合が、ここ数年で飛躍的に上昇している。
2016年に合意されたパリ協定(気象変動対策に関わる協定)に基づいて、温室効果ガスの削減、それに対応するための金融支援策が2020年にスタートする。
米国の一方的な同協定離脱宣言があったものの、世界は初めて、先進国も途上国も一丸となって、気候変動対策に乗り出そうとしている。...
全部読む
3月27日付
『オイルプライス.コム』オンラインニュース:「エネルギー多様化に苦しむ日本」
太陽光発電が安価で得られるようになったこともあって、世界における再生エネルギーの占める割合が、ここ数年で飛躍的に上昇している。
2016年に合意されたパリ協定(気象変動対策に関わる協定)に基づいて、温室効果ガスの削減、それに対応するための金融支援策が2020年にスタートする。
米国の一方的な同協定離脱宣言があったものの、世界は初めて、先進国も途上国も一丸となって、気候変動対策に乗り出そうとしている。
この端緒は1997年の京都議定書にあり、日本主導で、世界が一緒になって温暖化対策に取り組むべきとの姿勢が打ち出された。
安倍晋三首相も、直近の英『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿して、“日本と共に地球を救う運動”への参加を呼びかけている。
しかし、現実的には、日本では計7ギガワット(注2後記)の新規石炭火力発電所を建設する計画を有している。
更に、電力不足のインドネシアやベトナムなどの東南アジア諸国向けに、国際協力銀行(JBIC、日本の輸出信用機関)から52億ドル(約5,720億円)の資金援助とともに、石炭火力発電所の新規建設プロジェクトを推進している。
かかる背景もあって、2017年のボン(ドイツ)で開催された国連気候変動国際会議において、非政府組織が日本に対して、“本日の化石燃料大国賞”を授け、国際的な気候変動対策交渉に最も抵抗している国だとして非難している。
日本は、2030年までに石炭火力発電比率を2016年時の32%から26%まで減じるとの目標を掲げている。
ただ、2011年発生の東日本大震災の津波の被害を受けた福島原発事故によって、原発操業が一切停止されたことから、化石燃料発電に頼らざるを得なくなり、二酸化炭素発生量が増加に転じてしまっている。
そこで、日本としては火力発電依存度を下げるため、再生エネルギーを22~24%に、また、原発依存度も22%に引き上げるとの方針を打ち出している。
ただ、再生エネルギーについては、欧州等に比して、日本特有の様々な悪条件が立ちはだかる。
すなわち、山岳地帯の多い地理的条件から、大規模風力、太陽光発電設備を設ける土地が限られている。
また、平地が広がる海辺の地域に風力発電所を建設する計画には、地元の漁師団体からの根強い抵抗があり、中々実現できない状況となっているからである。
更に、原発再稼働には、福島原発事故に伴う原発地元住民の抵抗が強く、また、より厳格な安全基準を満たすための膨大な費用がかかることもネックとなっている。
そこで、日本の企業は、例えば自動車業界が注力する燃料電池車の開発・事業化に取り組んでいるように、エネルギーの多様化に少しでも貢献しようとしている。
(注1)IEA:第1次石油危機後の1974年に、キッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受けて、経済協力開発機構(OECD)の枠内における自律的な機関として設立された。事務局所在地はパリで、現在の参加国は30ヵ国。エネルギー安全保障の確保、経済成長、環境保護、世界的な合意を目標に掲げ、エネルギー政策全般をカバーする。
(注2)7ギガワット:700万キロワット。住宅用平均出力量が4キロワット(100ワット電球の40個分)として、175万世帯分の出力量。
閉じる