米国の国家安全保障に対する脅威としてブラックリストに登録されている監視カメラ世界最大手の中国ハイクビジョン社(杭州海康威視数字技術)。新たに発表された年次報告書で、同社が中国の軍需産業グループの管理下にあることが明らかになった。
米
『エポックタイムズ』によると、過去2年間、中国の監視カメラ大手のハイクビジョンは中国軍との関係とそれが米国にもたらす安全保障上のリスクを理由に、米企業との取引を禁止するブラックリストに登録されていた。同社は、中国軍との関係を否定し、米国市場でのビジネスを許可するよう米政権に要請していたが、4月24日に発表された2020年の年次報告書で、中国電子科技集団有限公司(CETC)の傘化にあることが明らかになった。CETCは中国の主要な軍需産業グループのひとつで、中国最大の電子機器の防衛請負業者である。中国共産党政権の下では、すべての軍事産業グループは政権の命令に従わなければならない。
米連邦通信委員会(FCC)の公安および国土安全保障局は3月12日に、ハイクビジョンが「米国の国家安全保障や米国人の安全・安心に許容できないリスクをもたらすことが判明した」という声明を出していた。FCCは、ハイクビジョンが仕事や学校、健康管理など、米国人の生活の詳細なデータを収集していると指摘している。
同社は2001年に設立され、ビデオカメラ、レーダー、センサー、ドローンなどを使ってデータを収集し、収集したデータを映像・音声処理技術、人工知能、ビッグデータなどを使って分析する完全な監視システムを提供している。
事業の拡大に伴い、ハイクビジョンの機器は中国国内だけでなく、国外に住む人々も監視するようになった。今年2月、トムソン・ロイター財団は、ロンドンの32の行政区のうち28の行政区が同社の技術を使用しているという調査結果を発表した。同社の2020年の年次報告書には、「ハイクビジョンは海外に19の拠点を開設し、その下に66の支店を設置し、155の国と地域にサービスを提供している」と明記されている。
米『ウォールストリート・ジャーナル』は、独立系調査会社IPVMが見つけた公文書やオンライン資料によると、ハイクビジョンは2019年に中国空軍にドローンやその他の付属機器を販売しており、2014年には国軍のトップサプライヤーとみなされていたと報じている。IPVMは、「ハイクビジョンは中国軍と提携しており、人民解放軍のトップサプライヤーの地位を獲得し、軍の研究に協力するなどしている」と説明している。
3月には、同社のロゴの入ったドローン妨害ライフルを持つ兵士が、氷点下や高地などの過酷な環境下で機器をテストする様子が国営テレビで放映された。また、ウェブサイトでは、同社の技術が中国のミサイルや戦車などの兵器システムの性能を向上させることができるとし、人民解放軍の司令官や兵器専門家と共同で行った研究を紹介している。この研究では、ハイクビジョンのカメラを使って訓練を記録し、武器の精度を向上させることを提案している。
しかし、ハイクビジョンの広報担当者は「多くのグローバル テクノロジー企業と同様に、民生用と軍事用のデュアルユース商品を製造している。」、「ハイクビジョンが中国の軍事的用途のために研究開発を行ったことは、今も昔もない。当社の従業員がそのようなことを行った場合は、会社の指示ではなく、個人的な立場で行われたものだ」と回答している。
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中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題をいち早く収束に向かわせ、既に景気回復途上にあり、昨年半ばのマスク・医療用具品外交に続いて、今年にはワクチン外交で以て国際社会の支持を取り付けようとしている。しかし、国内では目下、習近平国家主席(67歳)に思わぬ逆風が吹きつけている。それは、発電用燃料のみならず各家庭での暖房用に主として使用している燃料用炭が、需給ひっ迫による価格高騰を引き起こしているため、反指導部派や一般市民からの反発・苦情が日に日に増しているからである。
2月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国国内炭の供給ひっ迫で価格高騰及び停電危機が発生」
厳寒な冬季を迎えている中国では、発電用や暖房用の燃料炭価格が高騰し、一般市民の生活に深刻な打撃を与えている。
12月になって気温が下がっただけでなく、COVID-19感染問題がほぼ収束して経済が動き出したこともあって、中国の発電用燃料の約70%を占める燃料用炭の供給がひっ迫し始めたからである。
地元メディア報道によれば、富裕層でも暖房用石炭を容易に買えないという。
そして、12月初めから電力使用量の削減や停電の事態が起こり始め、一級都市である北京や上海も光源を失って薄暗くなっている。
また、南東部の湖南省(フーナン)、江西省(チアンシー)等の工業都市を抱える省では、強制的な“省電力措置”が講じられている。
今回の燃料用炭供給不足の背景には、中国政府による国内石炭産業保護のために輸入炭を削減したこと、また、国内炭産業での汚職取り締まり問題が地方自治体内でくすぶっていること等、複数の要因が挙げられる。
エネルギー政策を司る中国国家発展改革委員会(2003年設立)の趙辰昕(チャオ・チェンシン)秘書長が12月に、“電力供給に問題は発生していない”と市民に向けて訴えても、現実的に石炭在庫が払底し、節電や停電等の問題を目の当たりにして、疑念が強まるばかりである。
2019年に中国は、世界の総石炭生産量の半分近くとなる37億4,500万トンを生産していて、そのうち内モンゴル自治区では国内最大となる10億トンを生産した。
しかし、国際エネルギー機関(IEA、1974年設立)の資料によると、中国政府が目標値としている国内炭価格は1トン当たり77~88ドル(約8,100~9,200円)とされているが、『ロイター通信』報道では、COVID-19感染問題が深刻だった4月末~5月初めの価格が72ドル(約7,600円)だったにも拘らず、12月4日時点では99.23ドル(約10,400円)と38%も急上昇しているという。
国営メディアの『新華社通信』は、2ヵ月後の今年2月3日時点の価格が98.52ドル(約10,300円)と若干下がったと報じているが、依然高止まりの状況である。
2月12~18日の春節期間や若干暖かくなったことによる石炭需要減から、石炭価格は少々下がるとみられるが、専門家は、春節後の経済活動再開による需要増や在庫量不足に伴い、今後とも石炭価格は上昇していくとみている。
中国は、毎年40億トン程石炭を消費していて、中国税関総署(1949年設立)によれば、2億7千万トン余りを輸入しているが、そのうちオーストラリア炭が7,000~8,000万トンを占めるという。
しかし、中国政府は、オーストラリア政府がCOVID-19発生地問題で中国政府に難癖をつけたこと等を理由として、同国からの石炭輸入を制限し始めていたが、昨年12月14日、ついに輸入禁止とする措置を講じている。
『ウォールストリート・ジャーナル』紙は2月10日、“中国の石炭需要家は、オーストラリアよりも距離が遠い産炭国から高値で輸入せざるを得ず、昨年半ばより84%もコスト高となっている”と報じた。
ただ、台湾のアジア太平洋平和基金の董立文(トン・リーウェン)執行長(CEO)は『VOA』のインタビューに答えて、“オーストラリア炭は中国総輸入量の僅か2%弱であるので、中国の石炭価格上昇に影響を与えるのは限定的であり、むしろ国内の特殊事情が現下の石炭価格上昇をもたらした”と分析している。
同執行長によれば、主要産炭省である山西省(シャンシー)及び内モンゴル自治区の石炭産業に対する汚職取り締まりが深刻な石炭生産問題を引き起こしているという。
例えば、内モンゴル自治区では2020年1月に汚職取り締まりが始まり、当局は2000年まで遡って捜査しているという。
『新華社通信』は、昨年2月までで、地方政府高官及び産炭会社重役ら9人が既に拘束されて取り調べを受けていると報じている。
一方、中国アジア太平洋精鋭交換協会の王智晟(ワン・チーション)秘書長は、今回の電力供給制限問題で、習指導部が地方政府への影響力を失いつつあるのではないかと市民が疑い始めていると分析している。
そして同秘書長は、3月に開催される二つの大きな会議-全国人民代表大会(全人代、1954年設立、立法府に相当)及び中国人民政治協商会議(政協、1949年設立、中国共産党、各団体・各界の代表による全国会議)-において、反指導部派がこれらの問題で習主席の足を引っ張ろうと画策する可能性があるとする。
なお、同秘書長は、“両会議を通じて、習主席降ろしまで話は進まないとは思うが、エネルギーや電力危機がこれから更に深刻化すると、同主席にとっては大きな信用失墜につながる恐れがある”と分析している。
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