フランス:原油価格の高騰に伴い、航空券の価格も高騰
新型コロナウイルスによる業績低迷からやっと脱出した航空会社が、今度はエネルギー危機に直面している。
仏紙
『ルモンド』 は、今年の夏休みにギリシャ、トルコ、クロアチアで日焼けを楽しみたいフランス人は追加のお金を払わなければならない、と伝えている。ウクライナ戦争により、燃料価格が高騰していることから、航空運賃も原油価格の上昇に追随することが予想されている。こうした上昇は数週間前からすでに確認されており、エア・カライベスのマーク・ロシェ総支配人は「民間企業はすでに8%の運賃値上げをしている」と指摘している。...
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『ルモンド』 は、今年の夏休みにギリシャ、トルコ、クロアチアで日焼けを楽しみたいフランス人は追加のお金を払わなければならない、と伝えている。ウクライナ戦争により、燃料価格が高騰していることから、航空運賃も原油価格の上昇に追随することが予想されている。こうした上昇は数週間前からすでに確認されており、エア・カライベスのマーク・ロシェ総支配人は「民間企業はすでに8%の運賃値上げをしている」と指摘している。西インド諸島へのフライトは40ユーロ(約5500円)、レユニオンへの往復は60ユーロ(約8200円)の追加料金が必要となっている。
3月14日、フランスの航空業界の95%以上の会社が加盟するフランス航空業界連盟(FNAM)の円卓会議で、アラン・バティスティ会長は「エネルギー価格危機は、私たちに大きな打撃を与えている。航空業界の誰もこの事態を予想していなかった」と述べた。
原油価格は数週間のうちに「1バレル70ドルから85ドル(約8500円から1万400円)、110ドル(約13400千円)、112ドル(約14000円)と上昇した」という。燃料費は長距離便で35%~45%、中距離便で25%~35%の経費に相当する。ロシェ総支配人は、航空会社にとっては災難であると述べており、石油の高騰は「15%から20%」のチケットの値上げにつながる可能性があると指摘している。
ただし、エールフランスは3月中旬時点ではフランスの会社で唯一、運賃を値上げしていない。この安定性は、「燃料保険」のおかげによるものだという。燃料価格の変動から身を守るため、各社は燃料の購入を数年単位で事前交渉している。「このシステムのおかげで、原油価格とチケットの価格には相関関係がなく、価格の変遷に追従している」と同社は説明している。一方競合他社では、ウクライナでの紛争が続く中、懸念が高まっているという。
仏誌『レゼコー』 は、フランス民間航空総局(DGAC)が発表した航空輸送価格指数によると、フランス発の運賃は2022年2月に2021年2月より平均7%高くなっている、と伝えている。これは、2017年に指数が作成されて以来、最も高い増加率となっている。1月には5.7%、12月には5.2%の増加率を記録していた。
フランスでは1月に1.9%上昇した国内線が2月に1.3%下落したのを除き、すべての交通区分で価格が上昇している。最も高い上昇率(+8.2%)は、フランス首都圏と海外県を結ぶ便である。国際線中距離路線では5.3%、長距離路線では5.7%上昇した。このような航空運賃のインフレは、欧米ではほとんどどこでも見られることで、2月の航空運賃は12%も跳ね上がった。その主な理由は、交通量の回復と原油価格の高騰である。燃料価格は1ヶ月で30%上昇し、1年で2倍になった。
一方、仏紙『ウエストフランス』 によると、格安航空会社の社長たちは航空運賃の急激な値上げには慎重論を唱えており、値上げのタイミングも慎重に見計らっていると伝えている。ヴォロテア社のCEOは、乗客の大幅な回復が見込まれる中、値上げを数ヶ月延期することを希望している。
しかし、こうした燃料費高騰の危機は、航空券の価格をより現実的な水準に引き挙げてくれる可能性があるという指摘がされている。以前から、何が何でも低価格を実現しようとすることによる業界への社会的ダメージや、安全面でのダメージを危惧する声があがっていた。また燃料危機により、航空部門の脱炭素化という目標、特に代替燃料の利用がこれまで以上に重視される可能性が出てきた。今のところ、燃料のわずか2%を占めるに過ぎない。フランス空港連盟のトーマス・ジュアン会長は、「2030年までに10%達成を目指す。野心的ではあるが、欧州レベルでの緊急の優先事項のひとつである」と述べている。
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欧州、半導体の生産体制を強化
アジアからの電子部品の供給不足が、ヨーロッパの工場に打撃を与えている。この問題を解決するために、欧州は大規模な投資を行い、大陸での半導体生産を強化していく方針を打ち出した。
『OANN』 によると、イタリアのマリオ・ドラギ首相はイタリア議会で、欧州圏の経済強化と主要産業の保護を目的とした幅広い取り組みの一環として、半導体の生産を増やすことが欧州諸国にとって優先事項であると述べた。ドラギ首相は、「輸送、産業機械、防衛など多くの戦略的産業に不可欠な半導体の不足は、特に大きな打撃となっている」と述べた。さらに、2030年までに世界のチップ生産量の10%から20%にシェアを拡大することが欧州の野望であると述べた。...
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『OANN』 によると、イタリアのマリオ・ドラギ首相はイタリア議会で、欧州圏の経済強化と主要産業の保護を目的とした幅広い取り組みの一環として、半導体の生産を増やすことが欧州諸国にとって優先事項であると述べた。ドラギ首相は、「輸送、産業機械、防衛など多くの戦略的産業に不可欠な半導体の不足は、特に大きな打撃となっている」と述べた。さらに、2030年までに世界のチップ生産量の10%から20%にシェアを拡大することが欧州の野望であると述べた。
仏『ウエストフランス』 によると、欧州委員会は2月上旬、不足が指摘されている半導体分野のアジアへの依存度を下げるため、約420億ユーロ(約5兆6千億円)の公的資金を半導体産業に放出することを提案した。欧州委員会のティエリー・ブルトン委員は、この計画は、2030年までに「欧州の半導体生産を4倍にすることで、欧州の工場の供給安定性を保証する」ものだと説明している。
半導体研究の最先端を走ってきたEUは、ここ数十年で市場シェアが低下し、世界の生産量のわずか10%にまで落ち込んでいる。しかし、過去3年間、多くの工場が閉鎖に追い込まれ、自動車産業を停滞させた半導体の不足が業界関係者を目覚めさせた。中国をめぐる地政学的な緊張やパンデミックによって、主に台湾や韓国から輸入している不可欠な部品をヨーロッパで生産する必要性が認識されるようになった。
EUの半導体生産強化計画を指揮っているブルトン委員は、「欧州は初めて、競争政策、特に国家補助に関するルールを変えようとしている」と述べている。半導体は、携帯電話などの多くの日用品に不可欠であるだけでなく、急成長するデジタル経済の中心であるデータストレージセンターにも使用されている。コンサルティング会社「Yole Développement」によると、昨年、半導体の世界市場規模は約6千億ユーロ(約80兆円)に達した。ブリュッセルによると、2030年には1兆ユーロ(約130兆円)に達する可能性があるという。
欧州の計画は、同じく自国内での生産体制の強化を始めた米国に匹敵するものである。欧州は現在、半導体に「二重の依存」をしている。半導体を設計する米国のインテル、マイクロン、Nvydia、AMDといった企業に依存している一方で、世界最大の半導体メーカーTSMCを擁する台湾、サムスンやSKハイニックスといった代表的な企業を持つ韓国などに依存している。
ブルトン委員は、EUは、その必要量の半分以上を台湾に依存していると言う。これは、例えば中国との軍事衝突が発生した場合、大きな経済的リスクとなる。「もし台湾が輸出できなくなったら、世界中のほとんどの工場が3週間で閉鎖されるだろう」と警告している。
仏技術系ニュースサイト『Techniques De l’Ingenieur』 は、欧州はこうした投資や計画を進めても、「TSMC」のような企業を生み出すことは難しいと伝えている。デジタルテクノロジーの専門家ルイ・ノジェス氏は、「そのような時間がない。数百億の投資とノウハウが必要になる。むしろ、アジアからの工場を歓迎することが、正しいアプローチだ」と述べている。台湾や韓国が「ヨーロッパに工場を持てば、中国と台湾の戦争や紛争が起きても、地理的に守られる。特にヨーロッパでは、行政のお役所仕事と、工場がどこに設置されるかをめぐっての国同士の争いがあり、これらのプロジェクトが実現するまでに4、5年かかるため、遅れをとってはならない。」と警告している。
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