ウィキリークスがトルコ政府関係のメール30万件を公開(2016/07/21)
クーデターが失敗に終わり、粛清が続くトルコだが、トルコ政府がやり取りしていた大量のメールをウィキリークスが入手していた。トルコ国内ではクーデターに関わった人間を拘束、逮捕するなど取り締まりが続き、エルドアン大統領は非常事態宣言を出している。このような状況を踏まえ、ウィキリークスは予定を早めて今回メールの公表に踏み切ったとしている。ただし、メール閲覧が可能なのはトルコ国外に限られている恐れも指摘されている。各メディアは以下のように報じている。
7月20日付
『アルジャジーラ』(カタール)は、エルドアン大統領率いるAKP(公正発展党)に関する情報を含む29万4546件のメールを、ウィキリークスが入手し、これらの内容を公表したと報じている。ただし、ウィキリークスによれば、今回公表されたメールの大半は、国内のクーデターに関する情報というよりは、トルコの対外関係に関する情報がほとんどだという。ウィキリークスが今回の情報を入手したのはクーデターが起きる1週間前で、「クーデター後のトルコ国内の粛清の状況に鑑みて、公表のタイミングを早めた」としている。...
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7月20日付
『アルジャジーラ』(カタール)は、エルドアン大統領率いるAKP(公正発展党)に関する情報を含む29万4546件のメールを、ウィキリークスが入手し、これらの内容を公表したと報じている。ただし、ウィキリークスによれば、今回公表されたメールの大半は、国内のクーデターに関する情報というよりは、トルコの対外関係に関する情報がほとんどだという。ウィキリークスが今回の情報を入手したのはクーデターが起きる1週間前で、「クーデター後のトルコ国内の粛清の状況に鑑みて、公表のタイミングを早めた」としている。
トルコ政府は以前から検閲を行っているとされており、今回の情報も肝心なトルコ国民の目には触れない可能性がある。ウィキリークスは、「トーアブラウザ」や「マイクロトレント」などといったシステムを経由して情報を入手することをトルコ国民に向けて呼びかけていく方針であるという。これらのシステムを用いると、IPアドレスが暗号化され、ユーザーがどこからアクセスしているかを知られにくくするという利点がある。
今回の情報公開後、ウィキリークスには継続的なサイバー攻撃が加えられているという。攻撃の主は不明だが、トルコ政府関係か、その支持者である可能性が高いと指摘されている。
同日付
『ロイター通信』(米)では、トルコでは、クーデター後、約5万人の軍関係者、警官、司法関係者、教職員らが逮捕、停職処分されている現状を紹介している。公表された文書は2010年から今年7月6日までの文書である。公表された文書は前述の通りクーデターとは関連性の薄い情報だが、トルコ政府は情報への接続を遮断するという「しかるべき対応」に踏み切ったとのコメントを発表している。
トルコが政治的事件の情報に関するインターネット接続を遮断するのは以前からよく行われている手法で、人権擁護団体などからは「報道の自由の侵害」とか「表現の自由への侵害」などと批判されている。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)は、今回インターネット接続を遮断したトルコ政府の言い分を掲載している。「ウィキリークスが公表した情報は違法な手段によって入手されたものであり、今回の措置に踏み切ることは当然正当化される」。
同記事もトルコが現在行っている粛清の実情を伝えている。先に述べた通り逮捕や停職処分はもちろんだが、大学関係者には一時的な渡航制限が課されている。この渡航制限の直前にはトルコ国内の大学関係者1577人の職を解く命令も下されており、さらには私立学校の教師2万1000人を解雇する処分も下されている。
今回の対応にもトルコ政府の体質が透けて見えるようである。
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仏メディアがみるG7とオバマ大統領の広島訪問(2016/04/18)
米国のケリー国務長官が広島の原爆慰霊碑と原爆資料館に「歴史的訪問」を実施した。米国に加え、核保有国の英国とフランスを含む先進7か国(G7)の外相らも初訪問だった。それ以上に関心を集めるのが、米国のオバマ大統領の広島訪問の可能性である。フランスメディアの関心も米国大統領の訪問に集中する。
ケリー長官が示唆するオバマ大統領の広島訪問
『レゼコー紙』、
『ルモンド紙』、
『リベラシオン紙』等フランス各メディアは「ケリー長官の象徴的な広島訪問」と見出しをつける。G7外相初の訪問と、G7初の軍縮と核不拡散に特化した宣言に注目する。しかし広島宣言と同様に、もしくはそれ以上に世界の関心を集めるのは米国大統領初の広島訪問実現だ。ケリー長官が
『フェイスブック』に投稿した原爆資料館での記帳内容の写真が憶測を呼んだ。...
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ケリー長官が示唆するオバマ大統領の広島訪問
『レゼコー紙』、
『ルモンド紙』、
『リベラシオン紙』等フランス各メディアは「ケリー長官の象徴的な広島訪問」と見出しをつける。G7外相初の訪問と、G7初の軍縮と核不拡散に特化した宣言に注目する。しかし広島宣言と同様に、もしくはそれ以上に世界の関心を集めるのは米国大統領初の広島訪問実現だ。ケリー長官が
『フェイスブック』に投稿した原爆資料館での記帳内容の写真が憶測を呼んだ。「深く心を動かされた」「各核兵器の脅威の終結と戦争回避への行動の義務を負う」「全ての人が来るべき」に加え、「オバマ大統領がこの“全ての人”の一人になる事を望む」の文で締めくくられた。
広島訪問を肯定する状況
前述のフランスメディアは、オバマ大統領の訪問実現を肯定する幾つかの状況を挙げる。
●オバマ大統領は核廃絶への意向を就任時から示した。5月の首脳会談は任期中最後の訪日となるので、象徴的な広島から再び核兵器廃絶を訴えて意向を示したい。
●G7の主な議題となった世界的なテロの脅威や北朝鮮の核実験やミサイル発射実験、ウクライナ危機などの深刻な世界情勢がある
●ケリー長官はベトナム戦争に従軍し、米国の軍事介入主義に懐疑的で常にあらゆる軍縮推進政策を支持してきた。
●日本側は既にシークレットサービスの責任者を決め、4月末に現地の治安評価を行うよう手配済みという情報筋の話。
見送られたオバマ大統領の広島訪問
一方
『ルモンド紙』によると、広島訪問実現に際してケリー長官は細心の注意を払っている。「原爆投下が第二次世界大戦の終結を早めた」、「兵士の犠牲を減らした」として、今でも米国世論の6割以上が原爆投下に肯定的である。退役軍人と共和党の保守派がその急先鋒に立つ。しかし国内要因だけではないようだ。「ルモンド紙」は
『ウィキリークス』が公開した外交公文書を参照する。「オバマ大統領は2009年の就任以来広島訪問に言及したが、「この時期のオバマ大統領の広島訪問を時期尚早と判断したのは日本政府」だった。
ケリー長官の訪問で反応を確かめる。
『ルモンド紙』は「ケリー長官の訪問は米国内の反応を見るため」と見る。「大統領の広島訪問の決定は、国内情勢を見極めるまで保留される」。「11月の大統領選キャンペーンたけなわの今、共和党と退役軍人がどう出てくるか様子を見ている。広島訪問によって懺悔の外交へと傾く事が、大統領選の弱点と見なされる可能性がある」
だが
『レゼコー紙』は「謝罪表明はない」と断じる。
『ルモンド紙』は広島訪問時の大統領のスピーチは2009年のプラハ演説の核兵器廃絶を呼びかけた時の談話を踏襲する」と見る。
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