シンガポール人のディクソン・ヨウは、中国工作員としての活動を行っていたとして米国で逮捕され禁固刑を受けた。刑期を終え、シンガポールに帰国したところシンガポール当局によって昨年12月に拘束されたが、その約1年後、条件付きで釈放された。
シンガポールのニュースサイト
『インデペンデントSG』によると、40歳のヨウは、米国で14ヵ月の実刑判決を受け、2020年12月30日にシンガポールに帰国後、内務省の国内安全局(ISD)によって拘束された。
香港の『サウスチャイナモーニング・ポスト』と米『エポックタイムズ』によると、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策学院の博士課程に在籍していたヨウは、2015年にオンラインの専門家のネットワークサイトを通じて、海外から声をかけられ、その後、中国で開催された学術シンポジウムに招待され、そこで報告書を書くように持ちかけられたという。ヨウはその後、2016年から2019年にかけて、「相当額」の金銭と引き換えに、外国の依頼人から与えられたさまざまな仕事を遂行し、情報を調達し、主に世界および地域の地政学的問題や開発について報告書を提供するなどしていた。2018年には架空のコンサルタント会社を立ち上げ、専門家向け交流サイト「リンクトイン」に偽の求人情報を掲載した。400枚以上の履歴書を受け取り、その多くは米国政府や軍に雇用され、機密情報にアクセスする権限を持っている人たちだったという。その中から、中国の工作員に役に立つ情報を提供してくれそうな人物達を選んでレポートを依頼していたという。また、海外からの依頼人の指示のもと、自身も機密情報により触れやすい官職につこうと試みたが、採用されることはなかったという。
ISDは、シンガポールを標的にしたり、シンガポール人を代理人として使って外国の利益を追求したりしようとする試みは目新しいものではないが、今回の事件は、ソーシャルメディアの普及によって、外国の情報機関が海外からでも潜在的な諜報員を見つけ出し、育て、養成することが容易になったため、その脅威がより顕著になったことを示していると述べている。「この脅威は、他のいくつかの国でも広く顕在化しており、退職した公務員や、機密情報にアクセスできる民間部門の個人が、ソーシャルネットワーキングサイトを通じて外国の諜報機関に狙われている。シンガポールの人々は、ソーシャルメディアのプロフィールを使って魅力的なビジネスやキャリアの機会を提供したり、機密情報を入手しようとしたりする外国のエージェントがもたらすこうした危険に警戒し続ける必要がある」と警告している。
『インデペンデントSG』によると、米司法省の国家安全保障局のジョン・デマーズ司法長官補佐は、「中国政府は、無防備なアメリカ人から機密情報を入手するために、さまざまな二枚舌を使っている。そのような計画の中心的存在であったヨウは、キャリアネットワーキングサイトと偽のコンサルティング会社を使って、中国に関心がある可能性のあるアメリカ人を誘い出した。中国政府がアメリカ社会の開放性を悪用しているもう一つの例だ」と説明している。
ISDによると、ヨウが接触した個人との面談やその他の関連調査からの情報は、本人が開示または認めた内容をほぼ裏付けているとし、彼が外国人エージェントとしてもたらす脅威は効果的に無効化されたと判断されたと説明している。そのため、「拘束を続けるに値する」安全保障上の脅威をもたらすことはないと判断したという。ただし、勾留命令はまだ有効であり、ヨウが釈放の条件のいずれかにでも従わない場合、内務大臣は釈放を取り消し、再び勾留することができる。
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