先週末のロシア大統領選で、大方の予想どおりウラジーミル・プーチン大統領が圧勝した。しかし、同大統領の独裁体制が続くことに、国際社会は大きな懸念を抱いているためか、祝辞を伝えたのは、安倍晋三首相を含めて僅か十数ヵ国の首脳に留まっている。更に、欧州からはエマニュエル・マクロン仏大統領のみであるという。一方、米大統領選へのロシア介入容疑が固まりつつある米国では、大統領側近も祝辞を伝えることを止めるよう提言したにも拘らず、ドナルド・トランプ大統領はそれを無視してプーチン氏に電話をかけた。これに対して与党・共和党重鎮からは、国際社会の懸念を一切理解しない愚行だとして、厳しい非難の声が上がっている。
3月21日付米
『タイム』誌(
『AP通信』配信):「トランプ大統領顧問、ウラジーミル・プーチン大統領の再選祝辞は伝えないよう進言するも、同大統領はこれを無視」
ドナルド・トランプ大統領は3月20日、大統領顧問の進言を無視して、再選を果たしたウラジーミル・プーチン大統領に電話で祝辞を述べた。
同顧問としては、米大統領選へのロシア介入容疑が固まりつつあること、ロシア元スパイが英国で暗殺されかかったこと等から、プーチン支持を表明するのはタイミングが悪過ぎると懸念したものである。...
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3月21日付米
『タイム』誌(
『AP通信』配信):「トランプ大統領顧問、ウラジーミル・プーチン大統領の再選祝辞は伝えないよう進言するも、同大統領はこれを無視」
ドナルド・トランプ大統領は3月20日、大統領顧問の進言を無視して、再選を果たしたウラジーミル・プーチン大統領に電話で祝辞を述べた。
同顧問としては、米大統領選へのロシア介入容疑が固まりつつあること、ロシア元スパイが英国で暗殺されかかったこと等から、プーチン支持を表明するのはタイミングが悪過ぎると懸念したものである。
にも拘らず同大統領は、上記の懸念には一切触れず、ただ、“近い将来会談する”との前向きな話をしたとする。
これに対して、与党・共和党の重鎮で上院軍事委員会委員長でもあるジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は、インチキな選挙で勝った大統領を祝福するなど、民主主義が危機に瀕する中で考えられない行為だと強硬に非難した。
また、ジェフ・フレイク上院議員(アリゾナ州選出)は“奇妙な”行動だと非難し、ミッチ・マコーネル上院多数党院内総務(ケンタッキー州選出)も、誰に電話をしても良いが、少なくともプーチン氏宛電話は優先事項ではないと批評した。
ただ、ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は、バラク・オバマ大統領(当時)も前回当選した際にプーチン氏に祝辞の電話をしており、今回のトランプ大統領の電話は何ら問題になることはないと擁護している。
同日付英『ジ・インディペンデント』紙:「トランプ大統領、プーチン氏に“祝辞は述べないように”との側近助言を得ていたにも拘らずこれを無視」
トランプ大統領は、米国家安全保障担当顧問らから、プーチン氏の再選への祝辞は控えるよう、更には、同氏と話す場合、英国におけるロシア元スパイの暗殺未遂事件について質すべきとの助言があったにも拘らず、これら全てを無視した。
しかし同大統領は、顧問の助言のうち、軍事兵器制限やシリア、北朝鮮問題についてはプーチン氏と協議したとする。
また、ホワイトハウスとしては、トランプ大統領は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の再選、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の任期期限撤廃にも祝辞を送っており、今回のプーチン大統領宛祝辞が問題であると認識していないとする。
更に、フランスとドイツの首脳も今週、プーチン大統領宛に祝辞を送っているとも言及している。
ただ、トランプ大統領がプーチン大統領との電話で、英国で発生したロシア元スパイの殺人未遂事件について何ら問題提起しなかったことから、米同盟国の英国政府が、大いに問題視する可能性がある。
なお、トランプ政権としては、上記の経緯はさておき、大統領選へのロシア介入容疑及びサイバー攻撃を理由として、対ロシア追加制裁を先週決定している。
同日付ロシア『イタル・タス通信』:「ロシア政府、トランプ大統領顧問がプーチン大統領再選に祝辞を伝えないようにとの助言があったとの噂に沈黙」
大統領府のドミトリィ・ペスコフ報道官は3月21日、3月20日のトランプ・プーチン両大統領の電話会談は突っ込んだもので、かつ建設的であったと発表した。
しかし、トランプ大統領顧問が事前に、プーチン大統領に祝辞を伝えないよう助言されていたとの話題に関しては、ホワイトハウス内部の話だとしてコメントを避けた。
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既報どおり、今月初め、ドイツの中道左派で第2党の社会民主党(SPD)の党員投票の結果、中道右派で最大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立政権が継続されることが決定され、アンゲラ・メルケル首相の第4期目がスタートすることになった。同首相は、早速、対欧州戦略で揺れるウラジーミル・プーチン大統領から祝電を受領している。しかし、同首相の最大の関心事は、英国なき後の欧州連合(EU)の立て直しで、就任早々訪仏してエマニュエル・マクロン大統領と協議する意向である。
3月14日付米
『CNNニュース』:「アンゲラ・メルケル首相の第4期政権発足」
ドイツ連邦議会は3月14日、709名の議員のうちの364票を得たアンゲラ・メルケル氏(63歳、CDU党首)を首相に選出した。
これで約6ヵ月続いた政治空白が埋められるが、CDU・SPDの中道右派と左派の連立政権となること、また、両党所属の35議員がメルケル氏に投票しなかったことから、メルケル首相の第4次政権は厳しい船出となるとみられる。
なお、上記連立政権発足に伴い、反難民を掲げる新興右翼政党で、昨年の総選挙で得票率第3位(12.6%)の「ドイツのための選択肢(AfD)」が野党第1党となることからも、同首相の議会運営は容易ではないと言える。
同日付ロシア『イタル・タス通信』:「プーチン大統領、メルケル首相の再選に祝電」
ロシア大統領府は3月14日、ウラジーミル・プーチン大統領(65歳)がメルケル首相宛に、再選を祝うメッセージを送ったと発表した。
同大統領は、ロシア・ドイツの連携を強化し、世界レベルでの貢献に資するよう望むと付言したという。
3月13日付中国『環球時報』(『新華社通信』配信):「メルケル首相、独仏両国にてEUを牽引していくと発言」
メルケル首相は3月12日、今週の第4次内閣発足後、可及的速やかに訪仏して、独仏両国が協力してEUを牽引していくべく協議したいと語った。
EUは目下、ユーロ圏の金融政策、EU圏防衛及び難民受け入れ政策等の課題を抱えている。
同首相としては、昨年9月にEU構造改革案をぶち上げたフランスのエマニュエル・マクロン大統領(40歳)との連携が必須と考えており、オラフ・ショルツ副首相兼財務相(59歳、SPD党首代行)を伴ってフランス側と協議に臨む意向である。
なお、今回大連立を組むCDU・CSU・SPD間合意書には、EU内活動について独仏両国連携の方針が記載されている。
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