新型コロナウイルスのワクチン接種対象者の80%以上がすでに1回以上の接種を受けたイスラエルでは、新型コロナウイルスのモニタリング項目の指標もすべて下がってきているため、3回目のロックダウンを緩和すると共に「グリーンパスポート」制度を発動しようとしている。
イスラエルメディア
『ハモディア』や英
『BBC』によると、イスラエルの人口のほぼ半分が少なくとも1回目のコロナワクチンを接種出来た今、イスラエル政府は、12月27日に開始したロックダウン措置を緩和し、商店街や博物館、動物園、図書館などを再開させていくことを発表した。また、2回のコロナワクチン注射を受けた人や、新型コロナウイルスからの回復証明書を持っている人には21日から「グリーンパスポート」を発行し、文化イベントやホテルなどの施設の利用を許可していく計画も公表した。
グリーンパスポートは、保健省がアプリを通して発行し、有効期限は2回目の接種の1週間後から6ヶ月間となる。
コンサートやスポーツイベントなども再開するが、観客は定員の75%、屋内では300人まで、屋外では500人までという上限が設けられている。
イスラエルニュースサイト『イスラエルトゥデイ』によると、ワクチン対象者の多くは自発的に予防接種を受けたものの、政府が発行しようとしている「グリーンパスポート」には懸念を示す声が上がり始めていると報じている。
「シャルバタ精神保健センター」緊急精神科のディレクターであり、テルアビブ大学で精神医学を教えているアヴィヴ・セゲヴ博士と、テルアビブ大学で教えている職業倫理を専門とする哲学者アサ・カシェール教授は、イスラエル金融紙「グローブス」に掲載した論稿で、イスラエル政府が国民の医療データや記録を持つことは、他者の利益を名目にして他者の行動に強制的に干渉しようとする家父長的政治につながる危険性があると指摘している。
「グリーンパスポートは、家父長的で時代遅れの政策を反映しており、啓蒙された国家における民主主義と公民主義の原則とは矛盾している。イスラエルの社会は十分に分裂しており、長年の政治的闘争によって引き裂かれている。コロナ危機は、一つの社会としてのまとまりを脅かすさらなる社会的激変であり、グリーンパスポートはイスラエル社会の溝を深めるだろう」と述べている。
不法行為法と医療過誤を専門とする法律事務所を所有するギル・ハレル弁護士も、イスラエルのオンラインニュースポータル「Walla!」に投稿した記事で懸念を表明している。ハレル弁護士は「グリーンパスポートによって公共の場所にアクセスできるグループと出来ないグループに区別することは、人間の尊厳と自由という基本法の条件を満たしておらず、個人の基本的な権利と平等の権利を侵害している。」と述べている。
『エルサレムポスト』によると、エデルスタイン保健相は18日、イスラエルではワクチン接種は義務ではないことを強調し、「予防接種を受けないことを選択した人にはその権利がある。また、予防接種を受けていない人への個人的な制裁はない。予防接種を受けることは、私たちに与えられた大きな特権であり、世界の多くの国が達成していないことを理解する必要がある。」と述べた。そして、予防接種を受けていない国民でも入場できる場所も出てくるだろうと付け加え、しかしその対象となる場所をどの程度拡げるかは全人口の予防接種率にかかっていると述べた。
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