中国デジタル人民元、西側諸国への唯一最大の脅威なのか
米国がこの1年でデジタル通貨に注目するようになった一方で、中国はすでにデジタル人民元を自国内で15都市目に展開している。米専門家は、中国人民元は「過去50年間における西側諸国への唯一最大の脅威だと思う。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって影が薄くなっている」と警告している。
米国がこの1年でデジタル通貨に注目するようになった一方で、中国はすでにデジタル人民元を自国内で15都市目に展開している。米専門家は、中国人民元は「過去50年間における西側諸国への唯一最大の脅威だと思う。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって影が薄くなっている」と警告している。
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『ビジネス・インサイダー』 によると、2021年後半、デジタル元は80億ドル(約1兆円)以上の取引額を記録した。中国は、電子商取引プラットフォームのアリババとテンセントの成功を受けて、2014年にデジタル通貨の開発に着手していた。
人民元のデジタル化に向けた動きは、中国政府が資本規制を強化しようとしていることを示唆しているが、専門家によれば、ドルが世界的に支配的であるため、中国の中央銀行デジタル通貨が台頭する脅威を最小限に抑えることができるという。...
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『ビジネス・インサイダー』 によると、2021年後半、デジタル元は80億ドル(約1兆円)以上の取引額を記録した。中国は、電子商取引プラットフォームのアリババとテンセントの成功を受けて、2014年にデジタル通貨の開発に着手していた。
人民元のデジタル化に向けた動きは、中国政府が資本規制を強化しようとしていることを示唆しているが、専門家によれば、ドルが世界的に支配的であるため、中国の中央銀行デジタル通貨が台頭する脅威を最小限に抑えることができるという。ボストンカレッジの経済学者で副学部長のアレクサンダー・トミック氏は『ビジネス・インサイダー』 の取材に対し、「デジタル人民元は必ずしもドルを置き換えるためのものではなく、中国政府が国内の資金の流れをより把握できるようにするためのものだろう」と述べた。
中国人民銀行は今月、デジタル人民元をさらに広州、杭州、天津、重慶の4都市で推進すると発表した。トミック氏によれば、ほとんどの取引はAlipayやWeChat Payといった民間の決済会社を通じて行われているが、デジタル人民元の利用が拡大すれば、この状況は変わる可能性があるという。
サウスチャイナモーニング・ポスト紙は、現在、中国中央銀行は、銀行、テクノロジー企業、地方公共団体がこの通貨を採用するためのインセンティブの開発に取り組んでいると報じている。トミック氏は、中国では、政治的な反対意見が制限されているため、米国よりも迅速に新しい決済手段を開発することができるだけでなく、論争を引き起こすような、あるいは不人気となりうるような決定を、より少ない公開討論で行うことができるという点で有利であると指摘している。重要なのは、もし中国がデジタル人民元を完全に導入できれば、将来の経済制裁に対する盾として機能する可能性があるということだ。
ヘッジファンドマネージャーのカイル・バス氏は米『エポックタイムズ』 に対して、デジタル人民元は、「過去50年間における西側諸国への唯一最大の脅威だと思う。しかしその脅威はロシアのウクライナ侵攻によって影が薄くなっている」と警告している。
中国のデジタル通貨はこれまで、中国の20以上の異なる都市でパイロットテストが実施されており、2022年の北京冬季オリンピックでは、初めてモバイルアプリを通じて訪日外国人が利用できるようになった。バス氏は、「これは単純なデジタル決済アプリではありません。これは、あなたがどこにいるのか、あなたの名前は何か、社会保障番号は何か、そしてあなたのすべての識別子を追跡するアプリになります。地理的位置特定機能も備えているのです」と指摘している。
バス氏はまた、中国のデジタルマネーの開発が完了し、中国国外の誰もが利用できるようになれば、中国政権は経済的に困っている人など、特定のデジタル元利用者を探し出し、彼らに影響力を行使する可能性があると述べた。「中国政府がアメリカやヨーロッパ、カナダの一般の人々すべてにアクセスできたとしたら、どうでしょう。例えばもし、アルゴリズムを実行し、出会いアプリのTinderを利用している米国政府の職員で、お金に困っている人を探しだしたとすれば、すぐに影響力を行使して堕落させることができます。これは国家安全保障上の問題です。つまり、デジタル権威主義を輸出するのです。」と説明している。
さらに、「中国が決済する世界取引の約87%はドルで決済されています。エネルギーも食料も原材料も不足し、毎日世界中に買いに行かなければならないのに、自国の通貨は信用されず、資本勘定も閉ざされたままです。そのためにドルを使わなければならないのです」。バス氏は、中国のデジタル人民元の世界展開は、米ドルへの依存度を下げるという非常に具体的な意図があると指摘している。
ワシントンのシンクタンク、アトランティック・カウンシルの調査によると、米国を含む世界の80カ国以上が中央銀行デジタル通貨の発行を検討している。今のところナイジェリアが、自国通貨のデジタル形式を開始した9カ国のうちの1つとなっている。米国は3月、デジタル資産に関する大統領令の概要を発表した。バイデン大統領は、米国のCBDCの研究開発を「緊急課題」としており、その発行は「国益に適う」と判断した。
米『CNBC』 は、「Cashless: China’s Digital Currency Revolution」の著者であるリチャード・ターリン氏が、中国のデジタル人民元は、今後10年間で国際貿易決済におけるドルの支配に挑戦することになると主張していることを伝えている。「中国は最大の貿易国であり、中国から物を買うときには、デジタル人民元が徐々にドルに取って代わるのを見ることになるだろう」と語っている。
元銀行員でフィンテックの分野にも携わってきたターリン氏は、「5~10年先まで考えると、デジタル人民元は国際貿易におけるドルの使用量を減らす上で重要な役割を果たすことができるだろう」と述べた。代替決済システムへの移行は、各国が現在の「ほぼ100%」ドルに依存している状態を解消したいという願望から生まれる可能性が高いという。「将来的には、ドルへの依存度を100%から80%、85%へと、ゆっくりと、そしてほんの少しだけ下げようとするロールバック、リスクマネジメントが行われるだろう」と指摘している。
世界第2位の経済大国である中国は、現在「あらゆる金融技術で10年先を行っている」という。一方、米国は潜在的なデジタル・ドルのための計画と試験から脱するだけでも「あと5年は簡単にかかる」という。
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習近平、国際闘争のために中国の法律の強化を要請
中国の習近平国家主席は、社会主義法制度の構築に関する共産党上層部の研究会で、中国が法的手段を使って国際闘争を行う必要があると述べ、外交問題に関連する法律を改正し、特に制裁や外国からの干渉など緊急な分野に重点を置くよう指示した。
香港メディア
『サウスチャイナモーニング・ポスト』 によると、習近平国家主席は研究会での演説で、「我々は国際闘争を行うために法的手段を用いなければならない」と述べ、「最も緊急性の高い課題を優先するというルールに従い、対外関連の法制を強化し、制裁、干渉、法的管轄に対する法規をさらに完備させなければならない。国際的には、世界は変革の激動の時代に入り、国際競争はますます制度、規則、法律の競争という形で行われるようになっている」と述べた。...
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香港メディア
『サウスチャイナモーニング・ポスト』 によると、習近平国家主席は研究会での演説で、「我々は国際闘争を行うために法的手段を用いなければならない」と述べ、「最も緊急性の高い課題を優先するというルールに従い、対外関連の法制を強化し、制裁、干渉、法的管轄に対する法規をさらに完備させなければならない。国際的には、世界は変革の激動の時代に入り、国際競争はますます制度、規則、法律の競争という形で行われるようになっている」と述べた。
習近平は、中国の海外利益を守るための「セキュリティ・チェーンの拡大」のために、二国間関係に法的協力を取り入れることも呼びかけた。また、対外的な法律問題に対応できる人材の育成を強化するよう呼びかけた。なお、デジタル経済、電子金融、人工知能、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなど、従来とは異なる分野での国内での立法活動の強化を要請し、「弁護士に対する政治的指導を強化し、中国共産党と社会主義法制度を自主的に支持するよう導き、党と国民がともに満足する弁護士となるよう努力しなければならない」と政治的忠誠心の確保も指示した。
『サウスチャイナモーニング・ポスト』 は、中米両国は、地政学的・経済的な面や価値観をめぐって、制裁などの法的手段に訴えることが多くなり、緊張が高まっている中で、習近平の呼びかけが行われたと伝えている。
一方、米『エポックタイムズ』 は、習近平の発言は、ますます多くの西側諸国が人権侵害に関与する中国共産党職員に制裁を課し、国家安全保障上のリスクをもたらす中国企業に貿易制限をかける欧米諸国が増える中の発言だったと伝えている。
近年、中国共産党の役人と国営企業は、人権侵害と貿易違反について西側諸国から制裁を受けている。 2021年6月、中国政府はその対抗策として、一連の「反外国制裁法」を打ち出している。中国は、中国の人権侵害に対する外国の批判を内政干渉だと反論している。
米誌『アトランティック』 は、米国をはじめとする自由主義の欧米では、「法の支配」という概念で動いていると指摘している。社会が正しく機能するために不可欠なものであり、少なくとも理論上は、法律は公平で独立しており、すべての人に均一かつ一貫して適用され、無実の人を国家からも含めて守るために機能しているという考え方である。一方で、中国の指導者は「法による支配」という概念に従っており、法制度は共産党の支配を保証するための道具であり、裁判所は政府の意志を押しつけるための場だという。国家はやりたい放題で、それを正当化するために「法律」の中に政府に都合の良い文言が使用されているという。
『アトランティック』 は、75年間、米国は世界のルール作りと執行を自任してきたと伝えている。「第二次世界大戦のような世界的な大虐殺を防ぐために、アメリカは、共通の規範で固められた世界秩序を構築しようとし、その規範を制定し維持するための国際機関も設立した。それを支えるのは、米軍の力である。この秩序は不完全であり、アメリカを含むさまざまな国によって乱用されてきた。しかし、大国間の争いに蓋をし、経済的繁栄と民主主義の原則を地球の大部分に広めてきたのである。この秩序は、多少ボロボロになりながらも、バイデン政権が今日の民主主義サミットなどで維持しようと努力しているものである。」
しかし、「アメリカのルール作りにおける独占は今、ソ連崩壊以来の厳しい試練に直面している」という。「中国が台頭するにつれ、中国政府はグローバル・ガバナンス、開発、国際関係に関する独自の概念を推進し、国連などの機関に影響力を持ち、これらの概念を世界の言説に吹き込み、増大する富と軍事力を利用して、アメリカの世界システムの既存の規範に対抗しようとしている。」
同誌は、根本的には、国、企業、個人が地球規模でどのように相互作用するかを導く原則や教訓のことであり、世界は「法の支配」と「法による支配」のどちらになるかをめぐる競争なのだと伝えている。
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