17日に開幕したフランスのカンヌ国際映画祭の開会式で、ウクライナのゼレンスキー大統領がサプライズゲストとしてオンライン形式で演説を行った。元俳優であり映画プロデューサーでもあった同大統領は、映画と戦争の密接な関係を強調し、戦争に対して映画界が沈黙しないように呼び掛けた。
米ニュースサイト
『ハフィントンポスト』によると、ウクライナ大統領は約10分間にわたり、映画と戦争の密接な関係について語った。「物語についてお話しします。この物語では、始まりではなく、終わりが最も重要です。この終わりはすでに書かれています。」と述べ、「しかし、残っているのは、ドキュメンタリーの中の恐ろしい映像です。現在、拷問を受けた人が新しく発見されない週はありません。みなさんは、マリウポリの市立劇場がロシアの爆弾にやられたのをご覧になったと思います。その劇場はみなさんが今日集まっている劇場に似ていました。人々はそこに避難していました、彼らは民間人でした。」と訴えた。
その上で、ヒトラーを風刺したチャップリンの映画「独裁者」を引き合いに出し、「我々は戦い続ける、選択の余地はない」「独裁者が負けると確信している」と述べ、「今の映画はサイレントではないことを証明する新しいチャップリンが必要だ」と語った。
仏誌『ルポワン』によると、ゼレンスキー大統領は、ウクライナでは、「毎日何百人もの人が亡くなっている。彼らは撮影終了後、再び立ち上がることはない。」「映画は黙るのか、それとも話すのか。独裁者がいるならば、自由のための戦争があるならば。繰り返しますがすべては団結することにかかっているのです。映画はこの団結に関わらないでいられるのでしょうか」と訴えた。
仏紙『リベラシオン』は、ゼレンスキー大統領の登場に、会場は驚き、総立ちの拍手喝采を送ったと伝えている。同大統領は4月初め、アメリカの第64回グラミー賞で、すでに祖国への支援を求めるスピーチを行っていた。第75回カンヌ国際映画祭は、4月のセレクション発表時に、ウクライナを考慮することを約束し、いくつかのウクライナ作品を選出した。一方、同映画祭は、「ロシア政府関係者、政府機関、政府系メディアのジャーナリスト」の参加を禁止した。ただし、ロシアの著名な映画監督キリル・セレブレンニコフを始めとする反体制派は歓迎している。セレブレンニコフの新作『チャイコフスキーの妻』がさっそく今日、上映されることになっている。
審査委員長のヴァンサン・ランドンは、カンヌ国際映画祭が「芸術的、市民的」な世界的なイベントであると述べ、「この映画祭は、その時代の偉大な映画製作者を歓迎し、保護し、集めることに終始してきました。」「映画という、大々的な感情移入の武器を使って、良心を目覚めさせ、無関心を揺り動かす以外に他に何かできるでしょうか。私は思いつかない」と述べていた。
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1月23日、フランスで「過激なイスラムの危険に直面する国の対応」というタイトルの特集番組が放送された。特定の都市におけるイスラム教の影響力の高まりと、その結果として、フランスの伝統や原則に反する生活様式が実行されている状況について特集した番組である。しかし、番組放送後、ジャーナリストで番組の司会者でもあるオフェリー・ムニエはイスラム主義者たちからの脅迫の対象となり、警察の保護下に置かれた。
仏紙
『ウエストフランス』によると、ムニエさん以外にも特集番組に出演した青年、アミン・エルバヒさんも脅迫を受けており、警察の保護下に置かれたという。エルバヒさんは、「私の証言が居心地の悪い思いをさせている。脅迫を受けたことを考えれば、痛いところを突かれたのだろう」とコメントしている。
ルーベ市出身のアミーヌ・エルバヒは2020年10月、ルーベ市内にある「成功のための大志とイニシアチブ」という協会について、市町村による公的補助金の恩恵を受けながら、学習塾を装って「コーランの講座」を行っている疑いがあると、県に報告した。...
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仏紙
『ウエストフランス』によると、ムニエさん以外にも特集番組に出演した青年、アミン・エルバヒさんも脅迫を受けており、警察の保護下に置かれたという。エルバヒさんは、「私の証言が居心地の悪い思いをさせている。脅迫を受けたことを考えれば、痛いところを突かれたのだろう」とコメントしている。
ルーベ市出身のアミーヌ・エルバヒは2020年10月、ルーベ市内にある「成功のための大志とイニシアチブ」という協会について、市町村による公的補助金の恩恵を受けながら、学習塾を装って「コーランの講座」を行っている疑いがあると、県に報告した。エルバヒさんの報告をきっかけに県が調査したところ、「宗教的な性格のアラビア語講座」が実際に行われていることが確認され、検察に報告された。
番組放送後、エルバヒさんは、ソーシャルネットワーク、SMSメッセージ、ワッツアップメッセージ、特にツイッター上で多数の脅迫を受けているという。例えば「クファール」(アラビア語で不届き者)と呼ばれ、首をはね、のどを切るなどの殺害予告の脅迫を受けている。
仏紙『ルフィガロ』は、「テロとは、シャルリーエブド襲撃事件、学校やスーパーマーケットでのユダヤ人対象の襲撃事件、警官や教師の殺害、バタクランのテロ事件などの(的を絞った)殺害行為だけでなく、イスラム教徒の支配を非難しようとするすべての人々を対象とした殺害予告などの脅迫もある」と伝えている。
過去にも、反イスラム投稿をした10代の少女が脅迫を受けたことが物議をかもした。今回、一人はジャーナリストとして番組を作り、もう一人はルーベ市のイスラム化に関する証言をしたことで、殺害予告を受けるようになった。『ルフィガロ』は、「イスラム主義とテロの関連性が希薄でないことの証拠である。一方を糾弾することは、他方の脅威にさらされることになる。さらに、この問題についてあえて口を開いたために、警察の保護下にありながらも、あまりの多くの脅しのゆえに、引っ越しを余儀なくされ、自分や家族の身を案じている人たちもいる。イスラム差別主義とレッテルを貼られ、標的にされる。」と書いている。
同紙はまた、「一方で、公共交通機関で活動したり、あるいは教師として活動したり、秘密の学校を開いたり、モスクやインターネットで活動したり、ジハードを扇動するプロパガンダ本を売る書店員として活動しているイスラム主義者を解雇するのは難しいと言われる。また、明らかに違法な学校であっても閉鎖することは複雑であるばかりか、活動禁止の行政命令が守られることもほとんどなく、取り締まりには法だけでは不十分であることが報告されている。閉鎖命令が出されているモスクも、国からの禁止令を無視して機能し続けている。」と指摘している。
シャルリーエブド襲撃事件で弁護士を務めたリシャール・マルカ氏は、仏政治専門誌『ルポワン』の取材に対し、「脅迫と恐れを通して、表現の自由が脅かされ、自由そのものが失われる。そのうち本当に、イスラム教について、狂信的あるいは原理主義について語ることができなくなる。あともう少しで、こうしたテーマは完全にタブーになり、どのメディアもテーマとして扱う勇気がなくなるだろう。」と語った。
自身も2015年から警察の保護下にあるマルカ氏は、すべてのテレビ局に、今回問題となっている番組を放送することを促した。「そうでなければ、恐怖の支配が広がり、現実を見せることができなくなる。サポートがなければ、どの司会者が、どのチャンネルが、明日、これらのテーマを扱おうと思うだろうか。エルバヒさんが番組で行ったように、あえてオープンに話す勇気ある証人が出てくるだろうか。彼は、イスラム教の深いヒューマニズムの概念を勇敢に弁護しており、誰もが支持するはずだ。しかし、彼は今日、孤独な身になってしまった」と警告している。
大統領選が近づいているフランスでは、右派の大統領候補エリック・ゼムール氏がツイッターで、「何百万人もの愛国者が彼女の勇気に感謝している」と投稿した。同じく右派の候補者ヴァレリー・ペクレスも司会者への「支持」した。中道派で与党の「LREM」に所属するイヴリーヌ地区副代表のオロール・ベルジェは、「いかなる脅迫も、見せる自由、言う自由、知らせる自由に疑問を投げかけることはできない」と主張している。一方で、左派議員のジャン=リュック・メランションは、番組は「真実味に欠ける」と発言。この発言に対し、マルカ弁護士は、「そのような発言をすることで、メランション氏はテロの代理人と化している」と非難している。
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