既報どおり、中間選挙を2ヵ月後に控えて、現職のトランプ大統領はもとより、自身の政策をことごとく否定されたオバマ前大統領も、選挙前哨戦で火花を散らしている。そうした中、オバマ政権下で制定された「学資ローン返済に対する利用者保護法」(BDR、注後記)の施行延期を決定した、トランプ政権の教育省に対して、米連邦ワシントン州西部地裁は“No”を突き付けた。
9月13日付米
『バイパルチザン・レポート(超党派メディア)』:「連邦地裁、オバマ政権下の法律施行を覆そうとしたトランプ政権に厳しい判決を下し、オバマ氏側が大勝利」
米連邦ワシントン州西部地裁のランドルフ・モス裁判官は9月13日、昨年6月にベッツィー・デボス教育相が発表した、BDR施行延期の決定は不合理だとの判決を下した。
同教育相は昨年、オバマ政権下で制定され、7月1日付で施行予定であったBDRについて、係争中の訴訟があること等を理由に施行を延期することとし、BDRそのものを白紙に戻して、新たに規則策定委員会を設立する意向であると発表していた。
これに対して、19の州及びワシントン特別区が、教育相の決定は不当だとして提訴していた。
そもそも、何校かの営利目的の大学は、学生に対して教育の保証や卒業証書の授与を約束して入学させ、学資ローンも組ませていたが、実際には、経営者側がそれら卒業証書を認めておらず、結果的に学生らが就職できない事態が発生していた。
当時のオバマ政権は、これら学生を救済する目的でBDRを制定したが、同教育相の施行延期発表によって、逆に当該大学を利する結果となっていた。
そこで同裁判官は57ページに及ぶ判決文の中で、これら学生は当該大学によっていくつかの権利を奪われたと認ぜられ、それらを救済するためにBDRの施行は必要であるとし、従って、その施行を延期した教育省の決定は不合理であると決定付けた。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AP通信』配信):「米連邦地裁、営利目的の大学の詐欺行為に関わるデボス大臣の決定を却下」
モス裁判官は判決文の中で、BDR施行を延期したデボス教育相の決定は、“恣意的かつ首尾一貫していない”と断じた。
同裁判官は、教育省が公費出費を抑えるためとか、関係者の混乱を軽減させるためとかの理由を付けてBDR施行を延期することを決める一方で、当該規程を改定するか、もしくは撤回するかどうか決めようとしており、それはすなわち新たな政策の導入であると見做されるとした。
更に同裁判官は、BDR施行を延期するというのなら、その立法化を図らねばならないのに、そのプロセスを経ずして同規則延期を決めるのは不適切であるとの判断を下した。
なお、デボス教育相は昨年、7月1日施行予定のBDRが混乱をもたらし、結果的に学生にも大学にも不公平となるとして、施行延期を打ち出していた。
(注)BDR:営利目的の大学に対し、教育内容や卒業証書付与等に関わる説明責任を負わせ、また、同大学によって間違った方向に導かれたり、詐欺的行為に遭ったりしたローン借受け学生を救済するための規則。
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習近平(シー・チンピン)国家主席は5年前、超大国としての礎を築くため、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げて、中央アジア・南アジア・アフリカ・欧州までをカバーする“一帯一路経済圏構想(OBOR)”をぶち上げた。初めの数年は、エネルギー価格下落に喘ぐ新興国含めて、世界第2位の経済大国に躍進した中国マネーに期待して、多くの国が諸手を挙げた。しかし、自国のインフラ等開発に当り、資金は供与でなく融資であること、また、雇用や成果物取引も中国企業中心に牛耳られる現実に直面し、債務超過を問題視する国々が、東南アジア(マレーシア・ラオス)、南アジア(パキスタン・スリランカ・モルディブ)、中央アジア(モンゴル・タジキスタン・キルギス)、アフリカ(ジブチ)で顕著になっている。直近でも、マレーシア首相がOBOR構想下の一大インフラ・プロジェクトからの撤退を決定したりと、OBORに対する逆風が止まらない。そこで習指導部は、一番発展が遅れているアフリカ諸国に焦点を当て、ここでのインフラ・プロジェクト成功実績を挙げるべく苦心惨憺している。
8月31日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国、アフリカ経済フォーラムの中で停滞しつつあるOBOR推進を強調」
中国政府は9月3日の週に、アフリカ諸国の首脳・経済人らを招いて、中国・アフリカ経済協力フォーラムを開催する。
中国高官によれば、30ヵ国以上の国の首脳と700人余りの起業家が出席するという。
香港科技大学(1991年創立の公立総合大学)のバリー・ソートマン政治学教授は、5年前に立ち上げたOBOR構想が、投資先のアジア諸国からの債務超過問題の提起に遭って停滞しつつあることから、中国政府が、同経済フォーラムを通じて、アフリカにおける大インフラ・プロジェクトの成功実績を挙げようとしていると分析する。...
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8月31日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国、アフリカ経済フォーラムの中で停滞しつつあるOBOR推進を強調」
中国政府は9月3日の週に、アフリカ諸国の首脳・経済人らを招いて、中国・アフリカ経済協力フォーラムを開催する。
中国高官によれば、30ヵ国以上の国の首脳と700人余りの起業家が出席するという。
香港科技大学(1991年創立の公立総合大学)のバリー・ソートマン政治学教授は、5年前に立ち上げたOBOR構想が、投資先のアジア諸国からの債務超過問題の提起に遭って停滞しつつあることから、中国政府が、同経済フォーラムを通じて、アフリカにおける大インフラ・プロジェクトの成功実績を挙げようとしていると分析する。
前回、2015年にヨハネスバーグ(南アフリカ)で開催された中国・アフリカ経済協力フォーラムにおいて、中国政府は約600億ドル(約6兆6,000億円)の特別優遇投融資を約束していた。そのためもあって、アフリカ大陸におけるOBOR構想にはこれまで、約9ヵ国が批准し、約20ヵ国が前向きな話を進めている。
米中大学共同シンクタンクのカーネギー・清華世界政策研究センターの唐暁陽(タン・シャオヤン)副所長は、これを更に進めるため、今回中国政府は、投融資額よりも受け入れ先にとってもっと有益な新規投融資政策を提示するものとみている。
なお、習近平国家主席は直近で行ったOBOR構想発表5周年を記念する演説の中で、同構想はチャイナクラブを作ろうとしたものでも、ましてや地政学的・軍事的同盟を創出しようと考えたものでなく、純粋に経済協力を推し進めようとしたものだと強調した。
また、中国・アフリカ経済協力フォーラムに先立って行われたブリーフィングで、銭克明(チャン・ケミン)副大臣は、同フォーラムを通じてアフリカ諸国との経済・通商関係を構築することが主目的であるとして、OBORに伴って借金地獄に貶めるような外交政策を進めるものではないと断言した。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AFP通信』配信):「債務超過問題が取り沙汰される中、中国・アフリカ諸国首脳会議開催」
中国政府は、冷戦以降アフリカに資金的援助を続けてきたが、中国の経済発展に連れて、アフリカへの投資を活発化させてきている。
特に、南スーダンやコンゴ民主共和国等、安価な資源を有する国々への投資が盛んで、中国を世界第2位の経済大国に押し上げるのに、それらの資源事業が助けとなったことは紛れもない事実である。
ただ、投資先の国にとっては、雇用や成果物が中国企業に属し、何らうま味は残されていない結果となっている。
例えば、中国が初の海外軍事基地を設営したジブチでは、国内総生産(GDP)比債務が2014年の50%から2016年には85%まで急増しており、国際通貨基金(IMF)が危険信号を発している程である。
また、ケニアでは、中国が投資した鉄道建設プロジェクトが国立公園内まで進入しているばかりか、同国にとって大きな債務問題となっている。
しかし、ケニアの運輸相は先週、中国・アフリカ経済協力フォーラムの機会に、同鉄道建設プロジェクトの第2段階に関わる38億ドル(約4,200億円)の契約に調印すると表明している。
同日付ケニア『ジ・イースト・アフリカン』紙(『ロイター通信』配信):「債務超過問題にも拘らず、アフリカ諸国は依然中国に期待」
米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院の中国・アフリカ関係研究所発表のデータによると、中国は2000~2016年の間に、アフリカ諸国に対して1,250億ドル(約13兆7,500億円)もの融資を実行している。
ただ、その中で多くのアフリカ諸国が債務超過問題に苛まれている。
特に、エチオピアとザンビアは、中国側に債務額や返済条件の見直しを求めると表明している。また、銀行筋によると、アンゴラとコンゴ共和国は、既に見直し交渉を実施済みという。
同日付中国『人民日報』:「第6回中国・アフリカ経済協力フォーラムで相互協力促進」
中国国際貿易促進委員会(1952年設立の政府組織)の陳周(チェン・チョウ)副委員長は8月31日、9月3~4日に北京で開催される第6回中国・アフリカ経済協力フォーラムに先立って行われた記者会見で、同フォーラムを通じて、相互経済・通商協力が益々促進されることになろうと表明した。
同副委員長はまた、同フォーラム出席者一同が、習近平国家主席はもとより、他のアフリカ諸国の首脳の講演を楽しみにしているとも付言した。
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