フランスメディアが見る日本経済新聞のファイナンシャル・タイムズの買収(2015/08/04)
『レゼコー紙』は、「日経新聞は影響力拡大の必要性を感じている」と見出しをつけて、日経新聞側の理由を説明する。日経新聞は「利益率が高く」、購読者数380万の
『ウォールストリートジャーナル』に次いで世界第二の購読者数(約300万)を抱え、「日本の経済政策立案者や政界全体に読者層を持つ」にも関わらず、「傲慢さが殆どない」と、フランスの日経新聞にあたるレゼコー紙は日経新聞を、高品質と商業的成功の両方を有する優良メディア企業と認識する。...
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『レゼコー紙』は、「日経新聞は影響力拡大の必要性を感じている」と見出しをつけて、日経新聞側の理由を説明する。日経新聞は「利益率が高く」、購読者数380万の
『ウォールストリートジャーナル』に次いで世界第二の購読者数(約300万)を抱え、「日本の経済政策立案者や政界全体に読者層を持つ」にも関わらず、「傲慢さが殆どない」と、フランスの日経新聞にあたるレゼコー紙は日経新聞を、高品質と商業的成功の両方を有する優良メディア企業と認識する。その日経新聞がファイナンシャル・タイムズに求めたのは「欠如している国際的認知度」と伝える。アジア最大のメディアグループ日経の欧米での認知度が、世界第二の購読者数に比例しない理由の一つは、「日経のデジタル化の遅れ」と
『ルモンド紙』は指摘する。
またレゼコー紙は「デジタル化の遅れは国内の読者の必然的浸食を呼ぶ」と評し、「月額4300円の高い購読料を納得している日本国内の購読者は高齢化している」一方で、「ネットで情報を収集する事になれている若手世代の中でも、若手サラリーマンに価値を認めさせる事に日経新聞は苦心している」事に触れる。「デジタル戦略のパイオニアとして、世界に先駆けてデジタル化を進めたファイナンシャル・タイムズ紙との提携は日経にとって必要不可欠」と
『ルモンド紙』は報じる。
『日経アジアレビュー』、イギリス
『モノクル』との業務提携など、ここ数年日経グループは新たな成長市場開拓と海外での認知度向上への投資を続けており、ファイナンシャル・タイムズ買収はその仕上げのようだ。「日経新聞の認知度と国際的な影響力の増加」が見込めるとレゼコー紙は認識している。「日経新聞が同意した買収額が、アマゾンのCEOがワシントンポスト買収時に支払った額の5倍にあたる」(ルモンド紙)ことからも、日経新聞のデジタル化の遅れへの危機感の強さが伺える。それが「本来の事業である教育関連出版と教育サービスに業務を集中させたい」ピアソンの利害と一致した。
また「新聞とメディア業界のグローバル化の動きは、ピアソングループの日経へのファイナンシャル・タイムズ売却で劇的に進んだ」とルモンド紙が評する通り、単なる一メディア企業の買収劇ではなく、現在の新聞とメディア業界全体を象徴する国際的な傾向である事を改めて示した。
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仏メディアが見る英国のAIIB参加(2015/03/16)
2014年10月に中国が設立したアジアインフラ投資銀行の創設メンバーに、英国が名を連ねる事をオズボーン英財務大臣が発表した。
『ルモンド紙』を始めフランス各メディアは、「アジアインフラ投資銀行が米英を分裂」と見出しをつけ、米国を中心とした「各国の経済的立ち位置を変える」ものとして報じる。
『フィガロ紙』は、「欧州とアジア太平洋地域の先進国の立ち位置を変える前例を作った」と、HIS グローバルのチーフエコノミストのビスワス氏の分析を引用し、また、「豪州や韓国の米国の二大同盟国への圧力が強まるが、両国とも最大貿易相手国の中国に経済的に大きく依存する」と指摘し、「英国の決定が米国にとって壊滅的なドミノ現象を引き起こす」と、米国を中心とした経済的地勢図がいつでも変化しうると見ている。
フィガロ紙は「日本が常に総裁を出すアジア開発銀行と、米国が伝統的に統率する世界銀行と競合したいと中国が考える」事に触れ、「アジア地域で優位に立つための戦略的ツール」として中国が位置付けていると報じるが、ルモンド紙は英国の参加を「英国は、伝統的な実用主義によってこの決定を行った」と評し、「アジアインフラ投資銀行への参加は英国とアジアが投資し共に成長する類のない機会」と英財務大臣の言葉を報じる。...
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『フィガロ紙』は、「欧州とアジア太平洋地域の先進国の立ち位置を変える前例を作った」と、HIS グローバルのチーフエコノミストのビスワス氏の分析を引用し、また、「豪州や韓国の米国の二大同盟国への圧力が強まるが、両国とも最大貿易相手国の中国に経済的に大きく依存する」と指摘し、「英国の決定が米国にとって壊滅的なドミノ現象を引き起こす」と、米国を中心とした経済的地勢図がいつでも変化しうると見ている。
フィガロ紙は「日本が常に総裁を出すアジア開発銀行と、米国が伝統的に統率する世界銀行と競合したいと中国が考える」事に触れ、「アジア地域で優位に立つための戦略的ツール」として中国が位置付けていると報じるが、ルモンド紙は英国の参加を「英国は、伝統的な実用主義によってこの決定を行った」と評し、「アジアインフラ投資銀行への参加は英国とアジアが投資し共に成長する類のない機会」と英財務大臣の言葉を報じる。「(米国とは)違ったアプローチを採用する時がくる。アジアインフラ投資銀行への参加は英国の国益に対応する」との言葉通り、「アジア太平洋地域に近付く積極的な意欲を正当化した」決定であると報じたが、この態度が「イギリスのキャメロン保守政権は、アジアに再結集される世界経済におけるロンドンの立ち位置が、歴史的な英米の“特別な関係”に傷を残した」と驚きをもって受け止め、「今回の一撃は国益とはいえ米国に対して粗野で荒っぽかった」と国益を優先した英国を揶揄する。
これに対して米国は、ルモンド紙によると「英国の決定について事前に何の相談もなかったと、米国はファイナンシャル・タイムズ経由で間接的に知らせた」だけで、フィガロ紙の「既成事実に直面して、米国大統領は英国にAIIB内部に影響を与えるよう呼びかけ、“高い基準”をもつよう働きかける。やむを得ない」の報道にとどまる。また、「中国の資金力の前には、米国に公式に持ち出された環境や人権への懸念は殆ど力を持たない」との見方を示し、「米国はアジアパワーの一部になれないが、中国は、米国と欧州を分裂し、欧州内を分裂させる政治を行える」と、「欧州における中国の攻勢」(2015年出版)の共著者のルカレ氏の見解を引用し、中国の優位を報じる。また「フランスはこの新銀行のプロジェクトの行方を注視」のみである。
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