北朝鮮の人権問題は、国連等でもしばしば取り上げられている。それは外国人訪問者にも同様で、2016年に米国人学生が北朝鮮を旅行中に拘束され、1年半後に解放されたものの、米国帰国後間もなく死亡している。また、昨夏にも、日本人旅行者が軍事施設を撮影した等の理由で拘束されたが、日本への貸しを作るためか、“人道的理由”で国外追放の措置を取っている。そしてこの程、豪州人留学生が拘束されたとの報道がなされ、豪州政府が真偽の確認等、情報収集に躍起になっている。
6月27日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「北朝鮮が豪州人留学生を拘束か」
韓国メディア『チャンネルAテレビ』は6月26日、未確認情報と断った上で、平壌留学中の豪州人が北朝鮮当局に拘束された模様だと報じた。
豪州メディアによると、金日成(キム・イルソン)総合大学に留学中のアレック・シグリー氏(29歳)で、同氏の家族が6月25日朝以来、同氏と連絡が取れないとし、このようなことは過去になかったので、無事かどうか非常に心配していると表明しているという。
クリスチャン・ポーター司法長官は地元ラジオ局のインタビューに答えて、シグリー氏の安否確認は“最優先事項”であるとして、韓国等の協力を得て情報収集に努めていると語った。
シグリー氏は、昨年より金日成(キム・イルソン)総合大学に留学して、朝鮮文学を専攻しており、昨年5月には、日本人女性と平壌で結婚式を挙げている。
また、同氏は、豪州において北朝鮮観光専門の旅行会社を立ち上げている。
なお、同氏はおよそ2年前、豪州『ABCニュース』のインタビューに答えて、人々の北朝鮮に対する否定的な先入観を変えるべく努めたいとした上で、北朝鮮観光を進める以上、同国が安全であることを自ら証明したいとコメントしていた。
一方、北朝鮮はこれまでも、取って付けたような理由で、西側諸国からの訪問者を拘束して、政治的策略にしばしば利用している。
昨年も3人の米国人が拘束されたが、初めての米朝首脳会談開催に当っての交渉上の戦略からか、北朝鮮側の“善意の証し”として解放している。
同日付豪州『ヘラルド・サン』紙:「豪州人留学生アレック・シグリー氏、北朝鮮の大学で拘束されたとの報道」
豪州外務省によると、シグリー氏はパース(ウェスタン・オーストラリア州)出身で、これまでアジアを中心に数ヵ国に留学しており、中国語と韓国語が流暢に話せ、また日本人の由佳さんと結婚していることもあって、日本語も少し理解しているという。
また同氏は、金日成総合大学に留学している数少ない西側諸国出身者で、更に、統一旅行(トンイル・ツアー)なる旅行会社を立ち上げ、主として外国人に対して北朝鮮への旅行、あるいは留学をあっ旋している。
なお、外務省は目下、在韓国豪州大使館等を通じて、同氏の安否確認に関わる情報収集に注力している。
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