米朝間の緊張が増々高まる中、米中間での対北朝鮮政策について、お互いの姿勢を批評し合っている。一方、南シナ海では米中間の非難合戦が続いている。特に、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムで、南シナ海の人工島建設等の追加の海洋活動は中断しているとの中国会見に対して、米シンクタンクの衛星写真報道でその嘘が暴かれる事態となっている。更に、米国は、領有権問題で弱腰のフィリピンではなく、ベトナム及びシンガポールに狙いを定め、同海域での中国活動に歯止めをかける対抗勢力に育て上げようとしている。
8月12日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「“中国は依然南シナ海の人工島での恒久施設建設中”との報道」
中国の王毅(ワン・イー)外交部長(外相に相当)は8月7日、マニラ(フィリピン)で開催されたASEAN地域フォーラムに出席した際、南シナ海における人工島建設等の作業は2年前に完了し、以降作業は実施していないと表明した。
しかし、米シンクタンクのアジア海洋透明性監視イニシャティブ(AMTI)が8月9日、直近撮影の衛星写真によると、中国は、2015年半ばに南沙(スプラトリー)諸島での埋め立て工事完了の後、今度は西沙(パラセル)諸島での埋め立て工事を進めていることが判明したと報じた。
同報道によれば、中国は2015年以降、西沙諸島のツリー島(編注;1974年、ベトナム軍を追い出して以降中国が実効支配)を埋め立て、この程ヘリポートの建設や風力・太陽光発電設備の設置を完了させたという。
同日付台湾
『チャイナ・ポスト』紙:「中国の人工島建設は弱まるどころか依然進行中」
AMTIの近況報告によれば、南沙諸島内のベトナムによる一部岩礁の埋め立て工事が認められるが、中国による埋め立て工事は更に活発化しているという。すなわち、直近の衛星写真の分析で、中国による西沙諸島内のツリー島及び北島での人工島建設が依然続行しているとする。
一方、先週末にマニラで開かれたASEAN外相会議において、議長国のフィリピンは、共同コミュニケで中国の海洋活動について直接的表現で非難することは止めるよう動いた。そしてむしろ、人工島建設は2年前に中断しているとの王外交部長の表明を支持した。
一方、8月13日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』オンラインニュース:「中国、南シナ海領有権問題で新たな試練」
中国は、先週末開催のASEAN外相会議の共同コミュニケにおいて、議長国フィリピンへのはたらき掛けで、南シナ海の領有権問題についての中国非難の表現を記載させないことに成功した。しかし、米国の画策によって、今後はベトナムとシンガポールが領有権問題で強い態度に出つつある。特にシンガポールは、来年のASEAN会議議長国であることから、非常にインパクトがある。
すなわち、先週の王外交部長とベトナムのファム・ビン・ミン外相の二国間協議が急きょキャンセルされた。また、直接的に領有権問題を有していないシンガポールは、昨年の常設仲裁裁判所の裁定のみならず、米国が進める航行の自由作戦を支持している。従って、来年のASEAN会議において、ベトナムを支援する側に回るものと考えられる。
閉じる
英国の欧州連合離脱(Brexit)決定から1年経ち、英政府と欧州連合(EU)との離脱に向けた具体的交渉が始まっている。英国側は当初、通商交渉の並行協議を強く望んでいたが、直近の総選挙での与党惨敗、更に、EU側の強い抵抗を受けて、離脱時の条件交渉に絞らざるを得ない状況となっている。一方、この交渉結果を待つ以前に、欧米の銀行はもとより、日本の野村ホールディングス・大和証券は既に、その営業拠点をロンドンからドイツ他の主要都市に移転する決定を下している。
6月22日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「野村ホールディングス、EU拠点のフランクフルトへの移転決定」
野村ホールディングス(アジア最大の投資銀行・証券持株会社)は6月22日、Brexitの影響に鑑み、EU拠点をロンドンからフランクフルトに移転させるとの計画であることが明らかになった。同社は、今月から移転に向けて準備に入るという。
同社はこれまで、EU拠点の移転先として、ミュンヘン・ルクセンブルグ・パリも検討していたが、欧州中央銀行のあるフランクフルトを選択したもので、モるガン・スタンレー(ニューヨーク本拠の世界的な金融機関グループ)、ゴールドマン・サックス(ニューヨーク本拠の世界最大級の投資銀行)、シティグループ(ニューヨーク本拠の、世界160ヵ国以上で金融事業を営む企業を傘下に収める持株会社)も同様の検討を行っている。...
全部読む
6月22日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「野村ホールディングス、EU拠点のフランクフルトへの移転決定」
野村ホールディングス(アジア最大の投資銀行・証券持株会社)は6月22日、Brexitの影響に鑑み、EU拠点をロンドンからフランクフルトに移転させるとの計画であることが明らかになった。同社は、今月から移転に向けて準備に入るという。
同社はこれまで、EU拠点の移転先として、ミュンヘン・ルクセンブルグ・パリも検討していたが、欧州中央銀行のあるフランクフルトを選択したもので、モるガン・スタンレー(ニューヨーク本拠の世界的な金融機関グループ)、ゴールドマン・サックス(ニューヨーク本拠の世界最大級の投資銀行)、シティグループ(ニューヨーク本拠の、世界160ヵ国以上で金融事業を営む企業を傘下に収める持株会社)も同様の検討を行っている。
なお、野村は今年3月末現在、EU全体で3,026人の従業員を抱えているが、拠点変更に伴う、ロンドンからフランクフルトへの異動は100人未満に止まるという。
一方、その他の日本の金融機関の移転検討状況は以下のとおり;
●大和証券:フランクフルト、あるいはダブリン(アイルランド首都)への移転を検討中。
●三菱UFJファイナンシャルグループ:アムステルダム(オランダ)に拠点変更。
●みずほファイナンシャルグループ:同上。
6月23日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』:「Brexit決定後1年が経ち、フランクフルトが国際金融企業の多くの移転先に決定」
国際金融関係者によると、スタンダード・チャータード銀行(ロンドン拠点)、野村ホールディングス、大和証券グループが、既にフランクフルトに拠点を移す決定をしており、また、シティグループ、ゴールドマン・サックス、モるガン・スタンレーも、同市への移転を優先的に検討しているという。
フランクフルトはこれまで、ドイツ銀行(ドイツ最大の銀行)、欧州中央銀行、BaFin(ドイツ連邦金融監督庁)の本拠が置かれ、また、ロンドン以外では唯一、銀行取引のうち複雑なディリバティブ事業が可能な都市と認められていた。
まだBrexit後の状況が明らかになった訳ではないが、国際金融大手としては最悪の場合を想定して、2019年のBrexit正式移行前に、欧州圏内のビジネス展開を図っていく必要があるとみられる。
国際シンクタンクのブリューゲル(正式名ブリュッセル欧州世界経済研究所)の分析では、Brexitに伴い、ロンドンは1万人余りの銀行業務及び2万人余りのその他金融関係業務に加えて、1兆8,000億ユーロ(3兆1,900億シンガポールドル、約225兆円)の金融資産を失う勘定になるという。
その他の大手国際金融機関の動向は以下のとおり;
●バンク・オブ・アメリカ:移転先候補として、フランクフルト・マドリッド・ルクセンブルグ・アムステルダムを検討しているが、未だ結論出ておらず。
●JPモルガン・チェース:ロンドンから500~1,000人の銀行業務をダブリン・フランクフルト・ルクセンブルグそれぞれに移転。
●UBS(スイス本拠):英国の5,000人のうちの1,500人余りをフランクフルトに異動させることで検討中。
●HSBCホールディングス:ロンドンの投資事業の約20%(従業員5,000人のうちの約1,000人)をパリに移転予定。
●バークレーズ(ロンドン本拠):ロンドンの一部をダブリンに移すことを検討中。
●ロイズ・バンキンググループ(ロンドン本拠):ベルリン支店を強化し、ロンドン事業の一部を移転。
●クレディ・スイス:ダブリン支店を強化。
●中国銀行(中国第3位の商業銀行):アイルランドへの移転につき同国政府と打合せ中。
●みずほファイナンシャルグループ:アムステルダムとダブリンへの移転を検討中。今年1月、アムステルダム在のオランダ支店をみずほ欧州銀行に格上げし、ベルギー・オーストリア・スペインをカバーする拠点とする決定済み。
閉じる