英国のキャメロン首相は、欧州連合(EU)残留を国民に説得する材料として、EUの改革案を提案してEU諸国からの合意を取り付けた。その勢いで、今年6月に予定されている国民投票において、EU残留の支援を獲得したいと考えている。EU離脱を主張する人達の根拠のひとつに、「アングロスフィア(注後記)のリーダーとして新時代の役割」を担うことがある。果たして、そのコミュニティの中で最も力を有する米国が、これを支持しているのであろうか。
3月13日付米
『ザ・デイリィ・コーラー』ウェブサイトニュースの報道記事「オバマ大統領のEU残留支援のための訪英に英国議員が激怒」:
「・オバマ大統領は4月にロンドンを訪れて、英国のEU離脱を翻意するよう呼びかける意向。
・英国は6月に、40年振りに国民投票を実施し、EU残留か離脱かを決定。
・オバマ氏の行動に対して、EU離脱を標榜する保守党のピーター・ボーン議員もスティーブ・ベイカー議員も、欧州の独立国がどうするかについて、米国に何ら口出す権利はないと非難。...
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3月13日付米
『ザ・デイリィ・コーラー』ウェブサイトニュースの報道記事「オバマ大統領のEU残留支援のための訪英に英国議員が激怒」:
「・オバマ大統領は4月にロンドンを訪れて、英国のEU離脱を翻意するよう呼びかける意向。
・英国は6月に、40年振りに国民投票を実施し、EU残留か離脱かを決定。
・オバマ氏の行動に対して、EU離脱を標榜する保守党のピーター・ボーン議員もスティーブ・ベイカー議員も、欧州の独立国がどうするかについて、米国に何ら口出す権利はないと非難。
・ホワイトハウスはオバマ氏の訪英についてコメントしていないが、同時期にドイツで開かれる先端技術サミット会議に出席予定。
・ただ、キャメロン首相側近は、オバマ氏の訪英に触れて、当然EU残留の話をすることになるとコメント。」
3月14日付英
『ザ・サン』紙の報道記事「ボリス・ジョンソン市長、オバマ氏のEU関連の無用な口出しに不快感」:
「・オバマ大統領が、もし英国がEUから離脱したら、世界における英国の影響力がなくなると発言したことに対して、ニューヨーク生れのロンドン市長であるボリス・ジョンソン氏は、無用で偽善行為の口出しだとして強く非難。
・同氏は、EUに留まらなくとも、カナダ・スタイルの自由貿易協定(FTA)をEUと締結すれば済むことと主張。
・これに対し、ジョージ・オズボーン財務相は、FTAを交渉して締結するまでに7年もかかるとし、口先だけで何も行動しないロンドン市長は退陣してもらった方が良いとコメント。」
同日付中国
『シナ(新浪)英字ニュース』の報道記事「ロンドン市長、EU離脱に反対するオバマ氏を非難」:
「・オバマ氏が訪英の上、EU残留を説いて回るとのニュースを耳にして、ロンドン市長のジョンソン氏は、米国という国は、全て自分の思い通りにことを運ぼうとするところだが、これ程ヒステリックに自国防衛のために他を巻き込む国は他にいない、と酷評。」
一方、3月13日付スコットランド
『ザ・スコッツマン』スコットランド全国紙の報道記事「英国がEU離脱なら、スコットランドは改めて独立を模索」:
「・3月13日の世論調査(任意抽出の1千人対象)によると、スコットランド人の53%が、もし英国がEU離脱を賛成多数で可決するならば、(EU残留を希望するスコットランド人として)改めて英国からの分離について住民投票を望むとの声。
・スコットランド国民党党首で、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、53%の声は十分に強く、(EU離脱かどうか決定後)改めてスコットランド市民に英国からの分離について問いかける意義があると表明。」
なお、
『東洋経済』に寄稿した、元豪州外相のギャレス・エヴァンス氏によると、次の理由より、英国のEU離脱は「名誉なき孤立」を招きかねないとして、EU離脱賛成派を痛烈に批判している。
・アングロスフィアが国際的な存在感を示したのは、数十年前の南アフリカのアパルトヘイトの撲滅に向けた戦いまで。
・同コミュニティの雄である米国は、英語圏の国よりも、むしろ(対中国包囲網を固めるため)日本、韓国、フィリピン、タイ、インドネシア等、東・東南アジア諸国との連携強化に向かっていること。
・同コミュニティの英語圏国家である豪州、ニュージーランドとしても、地政学的、経済的な重要性から、英国よりもむしろアジア太平洋圏の国々との連携強化を欲しているとみられること(例;環太平洋経済連携協定につき、すでに批准、もしくは批准準備済み)。
・米国のフロマン通商代表も昨年10月、EUとのFTAは重要視するが、EU離脱した英国と単独でFTAを締結することに関心はないと明言していること。
(注)アングロスフィア:英語圏のうち、自由や権利を保障する英米の基本法を支持し、同様の価値観や文化を形成している国々。英米のほか、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど。
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