米・英・中国メディア;OPEC復権なるか?(2015/12/24)
中東などの産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC、注後記)は、1970年代には世界の原油生産の5割を超え、世界の石油市場を席巻していたが、米国、ロシア、イギリス、メキシコなどの非OPEC諸国の産油量増大に伴い、シェアも4割弱となり影響力は減少した。そして、米国のシェール革命(シェールオイル生産増大に伴う石油供給ソースの大変革)に伴う原油生産増と、中国などの新興国の石油需要減退に伴い、2014年6月をピークに原油価格は暴落し、未だ低迷が続いている。そこで、石油市場における影響力復権を狙って、OPECが世界の原油生産シェアの増大を狙うべく、大胆な将来計画を発表したと各国メディアが伝えた。中には、石油代替エネルギーを過小評価しているとの厳しいコメントを掲載するメディアもある。
12月23日付中国
『グローバル・タイムズ(人民日報英語版)』(
『新華社通信』記事引用)は、「OPEC、2020年には原油価格が70ドルまで上昇と予見」と題して、「OPECが12月23日に公表した“世界石油見通し報告”によると、目下低迷している原油価格は、2020年には1バレル(約159リットル)当り70ドルまで、また、2040年には95ドルまで再び上昇するという。但し、この予想価格は、2014年6月に記録した114ドルには遥かに及ばない。...
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12月23日付中国
『グローバル・タイムズ(人民日報英語版)』(
『新華社通信』記事引用)は、「OPEC、2020年には原油価格が70ドルまで上昇と予見」と題して、「OPECが12月23日に公表した“世界石油見通し報告”によると、目下低迷している原油価格は、2020年には1バレル(約159リットル)当り70ドルまで、また、2040年には95ドルまで再び上昇するという。但し、この予想価格は、2014年6月に記録した114ドルには遥かに及ばない。なお、同報告によると、2020年には世界の原油需要量が日量9,740万バレル、そして2040年には1億1,000万バレルまで増え、依然世界のエネルギー需要の中で石油の締める割合は最大を維持するとしている。」と報じた。
同日付米
『NBCニュース』は、「OPEC、電気自動車の将来に警鐘」と題して、「OPEC発表の報告では、2040年においても、世界におけるガソリン車は94%を占めるという。OPECによれば、電気自動車や水素電池自動車、また、天然ガスなどの代替エネルギーによる車は価格が高止まりで、また、エネルギー補充ステーションの整備が進まず、結局今のガソリン車の優位は変わらないとする。そして、2040年までも、世界の石油需要の40%は、ハイブリッドも含めたガソリン車からのもので大きな変化はないという。」と伝えた。
同日付米
『ワシントン・ポスト』紙は、「オバマ政権の外交戦略の勝利は、原油価格低迷のお蔭」と題して、「1年半以上続く原油価格低迷により、米国内でも一部収入減にはなるものの、オバマ政権にとっては、原油輸出収入に大きく頼るロシア(政敵のプーチン大統領)やベネズエラ(反米急先鋒のマドゥロ大統領)に大打撃を与えられると歓迎している。更に、欧州、日本、そして米国自身も、原油価格低迷によって景気回復につながっているとする。」とし、「原油価格低迷が続く最大の原因は、中国などの原油需要減退にも拘らず、サウジアラビアが減産するどころか、最高記録に近い原油生産を継続しているところにある。同国の狙いは、高コストの北極海油田、カナダのオイルサンド、ブラジル沖深海油田、更に、米国のシェールオイルに打撃を与えることだけでなく、長年のライバルであるイラクやイランに対して、同国の産油量最大シェアを堅持する意向とみられる。」と報じた。
一方、同日付英
『テレグラフ』紙は、「OPECにとって電気自動車は致命的な脅威」と題して、「OPECの報告は主要な点で間違った見方をしている。2040年でも、石油等化石燃料が世界のエネルギーの78%を占めるとか、電気自動車や水素電池車が金ばかりかかる代物だとか、更に、今年の国連気候変動枠組み条約締約国会議COP21の合意事項は石油業界に何ら影響を与えないとか等々である。その中でも最たるものは、今後25年の間、4億台と世界で最も多くの自動車王国となる中国含めて、94%はガソリンやディーゼル車が占めるということである。しかし、アップルやグーグルが新たに電気自動車産業に進出しているだけでなく、先行しているテスラ社は2017年には3万5千ドル(約420万円)で売り出そうとしているし、トヨタの水素電池車、フォルクスワーゲンやフォードも電気自動車やハイブリッド車を販売しようとしており、2030年代にかけて世の中の趨勢は電気自動車等、非ガソリン車、もしくはガソリン消費が僅かな車にシフトしていくとみられる。」とし、「15年前に本紙がサウジアラビアのヤマニ石油相(当時)にインタビューした際、彼は、今後30年後には原油生産量が最大になっても、原油を必要とする国がなくなるような時代が来るかも知れない、と懸念を表明していたが、未だに彼の予言に耳を傾けようとしていない。」と伝えた。
なお、OPEC報告では、2040年には日量4,070万バレルと、現在より3割以上の大幅増となり、非OPEC諸国の日量3,950万バレルを上回り、OPECが復権するとしている。現在は石油収入で潤い、それのみに依存している中東諸国が、脱石油・他産業育成に努めているカタールを除き、15年後には産業が荒廃し、新たなテロリスト集団を生み出すような国にならないよう望むばかりである。
(注)OPEC:1960年9月設立の世界最大のカルテルで本部はウィーン(オーストリア)。現参加国はサウジアラビア、イラン、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、ベネズエラなど12ヵ国。1970年代は、世界石油資本(7シスターズと呼ばれる石油メジャー)に対抗して、世界の石油市場を席巻し、我が世の春を満喫したが、後に各国の石油備蓄の拡大、代替エネルギーへの促進、北海油田やメキシコなどの非OPEC諸国の産油量の増大などで、石油価格は長らく低迷し、1980年代~1990年代はその影響力を失墜させた。しかし、1999年にOPEC全加盟国が強調して生産調整に踏み切ったことや、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)と呼ばれる新興国の石油需要増大で、再び石油価格は上昇して高値が続き、これに伴い、2000年代にかけてOPECの影響力は増した。
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北米・中国メディア;北朝鮮、相変わらず不可解な行動(2)(2015/12/21)
12月14日付
Globali「北朝鮮、相変わらず不可解な行動」の中で、“金正恩(キム・ジョンウン)第一書記がお気に入りの、全員女性から成る北朝鮮のポップスグループが、突然北京公演をキャンセルして帰国の途に就いた。これで中朝間がまた冷え込む恐れがある”と報じた。その後の各国メディアの報道では、金氏の水爆保有発言や、南北間高官対話不調が中国を不快にさせたからとか、招待客限定の同公演の観覧者が、中国指導部から次官級に格下げされたために金氏が激怒したから等、様々な情報が飛び交っている。
12月16日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「北京、北朝鮮ポップスグループ公演を観損なう」との見出しで、「北朝鮮の女性21人のポップスグループ、牡丹峰(モランボン)らが北京公演をキャンセルして、12月11日に突然帰国してしまった。理由は公にされていないが、同グループの女性と金第一書記が不適切な関係にあるとの根拠のない噂を、ある中国メディアが報じたことに金氏が激怒したとか、また、同グループらによる、独裁者の金氏を礼賛する歌などが過剰過ぎるとして中国側が内容を変更するよう求めたことに対して、北朝鮮側が最高尊厳(金氏)への冒涜として呼び戻した等と言われている。...
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12月16日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「北京、北朝鮮ポップスグループ公演を観損なう」との見出しで、「北朝鮮の女性21人のポップスグループ、牡丹峰(モランボン)らが北京公演をキャンセルして、12月11日に突然帰国してしまった。理由は公にされていないが、同グループの女性と金第一書記が不適切な関係にあるとの根拠のない噂を、ある中国メディアが報じたことに金氏が激怒したとか、また、同グループらによる、独裁者の金氏を礼賛する歌などが過剰過ぎるとして中国側が内容を変更するよう求めたことに対して、北朝鮮側が最高尊厳(金氏)への冒涜として呼び戻した等と言われている。今回の公演は、ぎくしゃくした中朝関係を改善するワンステップとして企画されたものというが、この“ドタキャン”で関係が逆に更に悪化する恐れがある。」とし、「なお、中国は2千人の兵士を北朝鮮国境に急きょ派遣している。」と報じた。
12月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュースは、「金氏が女性バンドを呼び戻したことで中国側困惑」との見出しで、「中国はこれまで、北朝鮮と他国との関係の仲介役を果たそうとしてきたが、12月11日に持たれていた南北高官対話が何の進展もなく終わったことに不快感を示したためか、当初政治局員(共産党指導部)が同バンドを観賞する予定だったが、急きょ副部長級(次官級)に格下げした。これに金氏他北朝鮮側が激怒して、公演を急きょキャンセルしたのではないかと言われている。」とし、「近年中国側は、金氏や側近の気まぐれで予測不可能な態度・発言に嫌気しており、習主席は特に金氏と距離を置き始めているという。」と伝えた。
同日付カナダ
『ロイター通信』は、「北朝鮮の女性バンド公演キャンセルは、反米ソングが理由か」との見出しで、「中国当局は、北朝鮮バンドが披露する歌の中に、米国を“粗野なオオカミ”と呼んだり、1950~1953年の朝鮮戦争を賛美したりする歌詞が含まれており、いたずらに米国を挑発することに懸念を示した。しかし、同女性バンドメンバーの人選からショーの中味まで金氏が関わっていると言われていることから、北朝鮮側が反発して急きょ呼び戻したのではないかとみられる。」と報じた。
一方、同日付中国
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英語版)』は、「中国、国連での北朝鮮非難決議に反対票」との見出しで、「国連総会は12月17日、北朝鮮の人権問題を非難し、かつ、国連安全保障理事会に対し、北朝鮮を国際刑事裁判所に告発するよう求める決議を採択した。賛成119票、反対19票、棄権48票だったが、中国は反対票を投じた。但し、中国は、北朝鮮の人権問題は許されると認めた訳ではなく、中国の主張である、国内問題に他国は干渉すべきではないとの立場から、反対したものである。」とし、「中国国民からみれば、国内にも反対の声もあるのに、中国がこのように、結果として北朝鮮を擁護する対応をしているのに、中朝交流の一環で企画された北朝鮮女性バンドの公演を急にキャンセルするなど、北朝鮮は本当に不可解な国だと思われるはずだ。」と批評している。
なお、中国関係者の直近の情報では、モランボン楽団らの公演のリハーサルをみた中国当局関係者が、背景の映像に、同公演本番日の3年前の2012年12月12日に北朝鮮が行った、長距離弾道ミサイルの発射実験の様子が含まれていたことを認めた。この時中国政府は、自重を求めていたにも拘らず発射実験を行ったことに不快感を示していたが、2013年2月12日に北朝鮮が3度目の核実験を行ったことで、ついに中国の堪忍袋の緒が切れて、中国は、同年3月に提議された国連安保理の対北朝鮮追加制裁決議の賛成に回っている。従って、中国の顔に泥を塗るような、ミサイル発射実験の映像を流させることなどとても容認できず、習主席自身が、当該映像をあくまで流すというなら、即刻帰国させるよう指示を出したと言われている。
なおまた北朝鮮は2013年12月12日、当時No. 2だった張成沢(チョン・ソンテク、金第一書記の叔父)を粛清している。中国にとっては、北朝鮮との経済関係の交渉・調整役と認めていた張氏の排除についても、非常な不快感をもたらす事件だっただけに、2015年12月12日にも、金氏が何かしでかすのではないかと疑心暗鬼になっていたことも背景にあるとみられる。
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