日本が来年にも調査捕鯨を開始、海外の反応
先週、日本の水産庁が、年明けから日本が調査捕鯨を開始することを発表した。もちろんこれには国際社会とりわけオーストラリア、環境保護団体から非難の声が寄せられている。捕鯨を開始する根拠、オーストラリアや環境保護団体の反応について各メディアは以下のように報じている。
11月28日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は、日本が南極海で来年3月末までには捕鯨を開始する予定であることを報じたうえで、オーストラリア政府と環境保護団体が非難の声をあげていると報じている。日本の水産庁は先週金曜日に国際捕鯨委員会(IWC)に対して、日本は捕鯨数を従来より3分の2程度減らして333頭に設定して、以前のものから修正した計画に基づき、調査としての捕鯨を開始する意向であるという。しかしながら、この「修正した計画」に対しては、IWCから懸念の声が寄せられているという。...
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11月28日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は、日本が南極海で来年3月末までには捕鯨を開始する予定であることを報じたうえで、オーストラリア政府と環境保護団体が非難の声をあげていると報じている。日本の水産庁は先週金曜日に国際捕鯨委員会(IWC)に対して、日本は捕鯨数を従来より3分の2程度減らして333頭に設定して、以前のものから修正した計画に基づき、調査としての捕鯨を開始する意向であるという。しかしながら、この「修正した計画」に対しては、IWCから懸念の声が寄せられているという。
同記事はオーストラリアの地元紙の記事を引用し、環境大臣のハント氏が、日本は一方的に国際司法裁判所の判決や科学者らの忠告に反して捕鯨を開始することは許されないと語ったとしている。国際司法裁判所は、去年の3月に、日本が調査捕鯨としている捕鯨は、実質的には商業捕鯨にあたるとした上で、数十年にわたり南極海で行ってきた捕鯨を止めるべきとする判決を下している。ハント氏は「オーストラリアは日本の南極海での捕鯨に強く反対している。このことは、日本が捕鯨に対して寄せられている科学的疑問に対して答える体裁をとったとしても何ら変わるものではない」と述べたという。また、同氏は、オーストラリア政府はこの問題についてIWCを通す間接的な方法にとどまらず、日本政府に直接働きかけていく方針であるとしたという。
11月29日付
『ザ・エポック・タイムズ』も日本が国際司法裁判所の判決にもかかわらず捕鯨を開始するとした上で、日本政府の言い分としては判決を考慮に入れて、従来よりも規模を縮小して調査捕鯨を行うとしていることを伝えている。
同記事は、日本が去年の11月にIWCに対してミンククジラのみを対象とした調査捕鯨を行うための計画書を提出していたことを伝えている。しかしながら日本は過去に、ミンククジラを捕獲するとしつつも、ザトウクジラを捕獲していた過去があることを伝えている。そして今回の水産庁の発表に対しては、イギリス、オーストラリア政府および環境保護団体が非難の声を上げているという。
同記事は日本の「朝日新聞」の記事を引用し、日本の鯨の研究家らは鯨を殺すことなく個体の表皮のみを調査する意向だが、水産庁は最終的には商業捕鯨の再開を狙っていると伝えている。
数ある環境保護団体の中でも戦闘的なことで特に知られる「シーシェパード」は、日本による捕鯨が行われるならば、捕鯨船に対して以前と同様の措置を講じるつもりであると発表しているという。「シーシェパード」のリーダーであるコーネリセン氏は「手つかずの自然が残る南極海が、再び密猟者らの危機にさらされている。我々は日本政府に対して、南極海が国際法、オーストラリア法、そして我々により守られており、鯨の聖域が侵されることがあれば、それは犯罪に該当することを警告する」とのコメントを発表したという。「我々は密漁に反対する。我々は南極海の貴重な生態系を脅かす密漁を発見、記録し、報告する用意がある。それは密漁がどんな形をとり、どの生物の生命を脅かしても同じだ。もし我々が密漁の場面に出くわしたならどんな対処方法をとるかは、今までの歴史をみれば明らかだ。常に、直接的に密猟を阻止する」。また、同団体はオーストラリアのターンブル首相に対しても日本の捕鯨船が日本を出発しないよう行動を起こすよう求めているという。
11月29日付
『ヤフー.com』は日本の捕鯨船が「シーシェパード」から10年近くにわたって妨害を受けてきたことを伝え、やはり国際司法裁判所の判決の判決を受けて昨年度は捕鯨を中止せざるを得なかったが、来年はそれにもめげず、調査捕鯨である論拠を揃えて捕鯨を開始する旨伝えている。
また、同記事は「シーシェパード」がこの日本の方針に猛反発していることを報じたうえで、日本の捕鯨が中断に追い込まれていた間、同団体が南極海近辺で希少動物の密漁やマゼランアイナメ(通称メロ)の密漁を監視しており、必要とあらば日本の捕鯨活動に対応する準備があることを示唆している。
同記事は日本の「NHK」の報道を引用し、日本がオーストラリア首相を12月に招待する意向であることを報じている。同記事の取材に対し、「シーシェパード」のオーストラリア担当であるハンセン氏は「ターンブル首相は12月に予定されている訪日の際、日本の恐ろしい密漁の実態を最優先議題として掲げるべきだ」と語ったという。
ただ、オーストラリア政府の対応もあまり当てにはならないようだ。同記事は、オーストラリア国内では以前から、税関の監視船を南極海での日本の捕鯨を監視するために使ってはどうかとの案が出されいていたが、外務大臣であるビショップ氏は未だに態度を明確にしていないという。同氏は国内のメディアに対して「政府は日本に対して捕鯨を再開しないこと、および国際社会で求められる義務を順守するよう求めてきた。先週末オーストラリアを訪れていた岸田外相にも直接このことを申し入れている」と述べたにとどまっている。
そして同記事は表面上は調査目的で捕獲された鯨肉は、食用に加工されていることは隠しようのない事実だ、と締めくくっている。
捕鯨を行っている国は他にもある。にもかかわらず日本がこれだけ非難され、日本としても引くに引けない状況になってしまっている。日本は面目を保ちつつ、捕鯨の規模を年々縮小していくのか。
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砂糖製造業者と大手農業関連業者が甘味料をめぐる争いに終止符
現在は砂糖以外にも様々な甘味料が存在する。購入する食品の原材料をくまなくチェックすることは少ないかもしれない。しかし、甘味料業界の中では熾烈な争いが繰り広げられており、アメリカでは砂糖業界とトウモロコシを使った甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者の間でも、互いに訴訟が提起されていた。この険悪な状況を打開すべく、この度両者間で法廷外での和解が結ばれたことが明らかになった。各メディアは以下のように報じている。
11月22日付
『OTC アウトルック』(米経済紙)は砂糖製造業者とトウモロコシを用いた甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者らの間で、法廷外での和解が成立し、争いに終止符が打たれることになったと報じている。
今回の和解は、ロサンゼルス連邦裁判所に提起された裁判の審理過程で合意に達したものであり、同記事はどちらの業界にとってもプラスとなるであろうとしている。法律の専門家らは今回のように法廷外での和解により訴訟が終了することにより、双方の業界への影響が抑えられるであろうと予測しているという。...
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11月22日付
『OTC アウトルック』(米経済紙)は砂糖製造業者とトウモロコシを用いた甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者らの間で、法廷外での和解が成立し、争いに終止符が打たれることになったと報じている。
今回の和解は、ロサンゼルス連邦裁判所に提起された裁判の審理過程で合意に達したものであり、同記事はどちらの業界にとってもプラスとなるであろうとしている。法律の専門家らは今回のように法廷外での和解により訴訟が終了することにより、双方の業界への影響が抑えられるであろうと予測しているという。今やどちらの甘味料も広く食品に使われており、どちらかに軍配が上がると、片方に大打撃を及ぼす恐れがあるためである。
今回の訴訟に関して、砂糖製造業者らはミネソタ州に拠点を置くアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドや、同じくミネソタ州のカーギルといった「穀物メジャー」(穀物の国際的な流通に大きな影響をもつ商社群)に対し、15億ドル(約1840億円)の支払いを求めて裁判を起こしていたという。その内容としては、「穀物メジャー」が前出のブドウ糖加糖液糖を「コーンシュガー」と名称を変更すべくキャンペーンを繰り広げた際に「砂糖は砂糖。お腹に入ってしまえばどちらも一緒」と謳ったことで、売り上げが激減したためだという。これに対して「穀物メジャー」も砂糖製造業者に対して、ブドウ糖加糖液糖が「コカインと同様中毒性がある」との間違った情報を流したとして5億3000万ドル(約650億円)の賠償を求めて訴訟を提起していたという。
両業界では1970年代にブドウ糖加糖液糖が砂糖に代わる、より安価な甘味料として売り出されて以来、熾烈なシェア争いが繰り広げられてきたという。今回の和解の内容面や金銭の授受に関しては一切明らかにされないという。
11月21日付
『ザ・エポック・タイムズ』(米に拠点を置く在外中国人向け新聞)は砂糖とブドウ糖加糖液糖の歴史と両者の実際の成分の違い、訴訟の傾向について分析を加えている。
当初の売り上げに比べて2000年代半ばあたりからブドウ糖加糖液糖は肥満といった健康問題に関連付けられ、売り上げが落ちてきていたという。そんな折、ブドウ糖加糖液糖のイメージ向上のため「穀物メジャー」がアメリカの食品医薬品局に対して呼び名を「コーンシュガー」と変えるべく働きかけたのだという。しかしながら当局はこの要請を却下し、砂糖こそが「個体で、乾質で結晶化により作られる食品であり、ブドウ糖加糖液糖のようなシロップ状のものはこれに含まれない」との決定を下したのだという。
もっとも、同記事は両者はほぼ成分は一緒である上に、両者とも人体で同じように代謝するという南カリフォルニア大学で薬理学および薬学の研究を行うクレメンツ氏のコメントを載せている。砂糖は蔗糖(しょとう)とも呼ばれ、成分の半分が果糖であり、もう半分がブドウ糖であるという。他方、ブドウ糖加糖液糖は55%が果糖であり、45%がブドウ糖なのだという。
今回の裁判の過程では陪審員がそれぞれどちらかの甘味料を支持するか意見表明することも提案されており、このまま議論がすすんでどちらか一方が勝者と決まることにより商品業界に大きな影響が出ることが懸念されていた。
食品の表示問題や広告問題に詳しい弁護士のハーリング氏はこの先、遺伝子組み換え食品やオーガニック食品などをめぐって同様の問題が起こりうるとしている。そして同氏は「これから販売活動を行おうとする会社は、宣伝文句が市場にどう受け取られるかだけでなく、訴訟問題に発展しないかまで気にかけて行動すべきだ」と語ったという。
今回の訴訟で砂糖製造業者側を担当した弁護士のラニエール氏は「今回の訴訟で、両者とも良きにつけ悪しきにつけ、大きなPRの機会を得た。両者ともが勝者、敗者になることなく持ちこたえたのだ」と語ったという。
同記事は7年前に起きた砂糖と「スプレンダ」と呼ばれる甘味料の訴訟を引き合いに出し、こちらも今回の訴訟と同様の結論が出ているとしている。「スプレンダ」との訴訟では同商品が「砂糖からつくられた砂糖と同じ味がする」と謳って売られている点をめぐり訴訟が提起され、和解の内容も公表されていないという。
白黒つけないことが対立する両者の共存のためであることは理解できるが、この先同様の問題が起こった時に、消費者の利益という大切な視点がないがしろにされることがあってはならない。
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