サル痘についてWHOが緊急事態宣言(7月25日)
欧米などを中心に世界規模で流行が見られる「サル痘」について、WHO・テドロス事務局長は23日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。WHOとしては最高度の警告であるが、強制力はない。中国・武漢経由でコロナが流行っていた時、WHOがなかなか緊急事態宣言を出さなかった時と比較すると今回はかなり早い対応にみえる。
WHOの動きを受けて日本政府は、世界のすべての国や地域を対象に「感染症危険情報」の「レベル1」を出し、海外への渡航を予定し、すでに滞在している日本人に対し「サル痘」に十分注意するように呼びかけている。...
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欧米などを中心に世界規模で流行が見られる「サル痘」について、WHO・テドロス事務局長は23日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。WHOとしては最高度の警告であるが、強制力はない。中国・武漢経由でコロナが流行っていた時、WHOがなかなか緊急事態宣言を出さなかった時と比較すると今回はかなり早い対応にみえる。
WHOの動きを受けて日本政府は、世界のすべての国や地域を対象に「感染症危険情報」の「レベル1」を出し、海外への渡航を予定し、すでに滞在している日本人に対し「サル痘」に十分注意するように呼びかけている。
磯崎官房副長官は、午前中に行われた記者会見で、関係省庁の局長級対策会議を開き、患者が発生した場合に備え、検査や受け入れ体制の準備など、当面の対応を確認し合ったことを明らかにした上で、「現時点ではわが国で感染者が確認されたという報告はないが、諸外国の感染動向などを注視しつつ、関係省庁で緊密に連絡をとりながら適切に対応していきたい」と状況を説明した。
日本人にとってはあまり馴染みがない「サル痘」という感染症だが、実験動物として採集されたサルの一部が感染し、発症していたことが最初の発見の契機となった為、「サル痘」と呼ばれるようになったという。基本的にはリスやネズミなどの保有動物から直接人に、あるいは保有動物からサルを経由して人に感染する感染症のようである。
気になる潜伏期間は通常1週間から2週間で、潜伏期間を経たあと発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日~5日間続き、その後、発疹が顔面から体中に広がり、最終的には、膿が出てかさぶたとなりおおよそ2~4週間ほどで治癒するという。中には肺炎や敗血症など、深刻な合併症を引き起こすこともあり、若年齢者ほど重症化する傾向が高いという点は注意すべき点である。
コロナは罹患しても見た目ではわからないが、「サル痘」の場合には発疹という明確な特徴が表れるため、コロナ以上に恐れられてもいる。
気になるのはどうやってこの感染症を予防するのかということであるが、岡山理科大学の森川茂教授によれば、せっけんでも「サル痘」ウイルスの感染力を削ぐことができるという。まずは手洗いをきっちり行い、基本的なコロナの感染防止策を行うことがかなり効果的であるとのことである。
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イエレン来日、世界的インフレを抑制できるのか(7月3日)
世界をインフレの嵐が襲っている。米国FRBをはじめ、世界の中央銀行が一致団結してインフレに立ち向かおうと一斉に利上げをする中で、黒田・日銀のみがこれと逆行する形で金融緩和策を行い、日米金利差が大きく開き、その結果、ドル高・円安をもたらしている。
9月頃までに米国の政策金利の上げ幅がほぼ見えてきてインフレ懸念はピークアウトするという見方もある。
日本もインフレであるが、物価上昇率だけで見て見ると日本は他国より低く抑えられている。...
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世界をインフレの嵐が襲っている。米国FRBをはじめ、世界の中央銀行が一致団結してインフレに立ち向かおうと一斉に利上げをする中で、黒田・日銀のみがこれと逆行する形で金融緩和策を行い、日米金利差が大きく開き、その結果、ドル高・円安をもたらしている。
9月頃までに米国の政策金利の上げ幅がほぼ見えてきてインフレ懸念はピークアウトするという見方もある。
日本もインフレであるが、物価上昇率だけで見て見ると日本は他国より低く抑えられている。これについては日銀の金融緩和策が効いているからだとの声がある一方で、価格転嫁が末端で抑えられているからだという見方もある。
つまり、既存収益構造ピラミッドの最下層に位置する下請けや末端企業が我慢しているという日本ならではの事情があるのかも知れない。
日本だけが金融緩和をしていることがある意味で、日本の産業構造の特殊性を浮き彫りにした格好となっているという見方もできる。
こうした中、米国・イエレン財務長官が12日に来日する。財務長官に就任してから初の訪日で、日本政府との間で経済分野の連携について意見を交わす予定だという。
名目的にはインドネシアで行われるG20財務相・中央銀行総裁会議に出席する途中で、立ち寄るという話になっているが、日銀の金融緩和政策に注文をつけにくるという推察も成り立つ。
何の注文かと言えば、利上げである。イエレン長官は日本も足並みをそろえてほしいとして、具体的な利上げの数値を持って日本にやってくるのではないか。だとすればこれに日本政府、黒田・日銀はどう応えるのか。
イエレン長官の動きからしばらく目が離せない。
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G7対BRICSの様相(6月25日)
BRICSの拡大首脳会合がオンラインで開催された。中国が主催し、インドネシア・アルゼンチン・サウジアラビア・エジプト・タイ・カザフスタン・UAE・ナイジェリア・セネガルの首脳陣が出席した。
ロシア・プーチン大統領や中国。習近平国家主席など、普段はこわもての指導者たち全員がオンライン上で子どものように手を振り、仲良しであることを強く演出してみせた。
プーチン大統領はこの会議の中で、経済制裁を強化する欧米諸国などを非難し、ウクライナから黒海を経由しての小麦などの輸送が出来ないことについて「ロシアは輸出を妨げておらず、西側が意図的にヒステリー状態を作り上げている」などと述べ、持論を繰り返し、友好国との結束を重視する姿勢を強調した。...
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BRICSの拡大首脳会合がオンラインで開催された。中国が主催し、インドネシア・アルゼンチン・サウジアラビア・エジプト・タイ・カザフスタン・UAE・ナイジェリア・セネガルの首脳陣が出席した。
ロシア・プーチン大統領や中国。習近平国家主席など、普段はこわもての指導者たち全員がオンライン上で子どものように手を振り、仲良しであることを強く演出してみせた。
プーチン大統領はこの会議の中で、経済制裁を強化する欧米諸国などを非難し、ウクライナから黒海を経由しての小麦などの輸送が出来ないことについて「ロシアは輸出を妨げておらず、西側が意図的にヒステリー状態を作り上げている」などと述べ、持論を繰り返し、友好国との結束を重視する姿勢を強調した。
BRICSの世界におけるGDPに占める割合は約24%、世界の貿易に占める割合は16%と侮れない規模である。プーチン大統領によればBRICSは、現在、通貨バスケットに基づく準備通貨の開発作業を進めているという。SWIFTを置き換えるような大掛かりなシステムを指向しているものとみられる。
一方、G7はBRICSのメンバーであるインドと南アフリカに加え、アルゼンチン・セネガル・インドネシアを26日から行われるG7サミットに招待している。両方に参加している国が出てきており、さながら欧米中心の秩序からの脱却を試みる中ロを中心の新興勢力BRICSと、従来からの世界秩序を守りたいG7の勢力争いの様相を呈してきている。
気になるのは両陣営に参加するインドのような国の存在であるが、インドはBRICSに加わっている一方、クアッドやIPEFなどの欧米陣営にも加わっている。今のところ両陣営の調整弁的な役割を果たしており許容できる存在であるが、この先、どうなっていくのかについては注視していく必要がありそうだ。
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再びエネルギー確保の時代に逆戻りか(6月25日)
サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の時価総額が米国・アップルを抜いて世界最大となった。原油高は9年ぶりにサウジアラビアに財政黒字をもたらした。
FAANGといえば、かつてはフェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグルなどITメガテックを指したが、コロナ後の新FAANGは燃料・エアロスペース(航空産業)・農業・原子力・ゴールドを指すとも言われている。「サウジアラムコ」はまさしく新FAANGの「F」を代表する企業となっている。...
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サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の時価総額が米国・アップルを抜いて世界最大となった。原油高は9年ぶりにサウジアラビアに財政黒字をもたらした。
FAANGといえば、かつてはフェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグルなどITメガテックを指したが、コロナ後の新FAANGは燃料・エアロスペース(航空産業)・農業・原子力・ゴールドを指すとも言われている。「サウジアラムコ」はまさしく新FAANGの「F」を代表する企業となっている。
米欧はジャーナリスト殺害事件をきっかけにサウジアラビアに対し冷たい視線を向け続けてきた。特にバイデン大統領は過去に「サウジは嫌われものだ。必ず事件の代償を払わせる」とまで発言していた。
そのバイデン大統領が自らのポリシーを捨て去り、7月中旬にサウジアラビア詣でに出向くことになっている。バイデン大統領は、サウジアラビアへの訪問は、あくまでも同地で開催される国際会議に出席するためであり、サウジアラビアとの個別会談の可能性については否定している。
しかしバイデン大統領にとっては劣勢である中間選挙の情勢を変えるためにも原油高の抑制が必要であり、サウジアラビアに増産を要請しに行くのは誰がみても自明である。原油増産という目標達成のために湾岸産油国を米軍が参加しない形で協力する集団安保体制というお土産を持っていくのではないかとも言われている。
一方、日本にとっても欧州とってもロシア産原油、LNGの輸入をやめればその代替調達先は中東となる。今や日本や米国、欧州がいくら増産を求めても、最後は湾岸産油国のドンであるサウジアラビアやUAEなど中東の一部の国の判断ひとつに世界の行方は委ねられている。それ以外には、ロシア産エネルギーをカバーする他の代替手段がないのが現状である。
脱炭素というスローガンはどこかに吹っ飛んで、世界は再びエネルギー確保のために奔走する時代に逆戻りしたように見える。このことは脱炭素やSDGsを作り出したルールメーカーである欧州にとっては想定外のことであったに違いない。
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半導体に巨額投資進める台湾の真意は?(6月25日)
台湾は10ナノ未満の最先端半導体製造において世界シェア92%を占めている(8%は韓国)。台湾は現在、空前の半導体投資ラッシュである。
その投資額は驚くべきことに約16兆円で、日本の国家予算のおよそ6分の1である。その資金で何をしているのかと言えば、TSMCを含めた4企業(UMC、南亜科技、力晶)による20の新工場を建設中である。
北は新北から、新竹、苗栗、南は台南、最南部の高雄まで台湾全土に及んでいる。...
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台湾は10ナノ未満の最先端半導体製造において世界シェア92%を占めている(8%は韓国)。台湾は現在、空前の半導体投資ラッシュである。
その投資額は驚くべきことに約16兆円で、日本の国家予算のおよそ6分の1である。その資金で何をしているのかと言えば、TSMCを含めた4企業(UMC、南亜科技、力晶)による20の新工場を建設中である。
北は新北から、新竹、苗栗、南は台南、最南部の高雄まで台湾全土に及んでいる。これらの敷地面積を合わせると東京ドーム40個分以上になる。台湾がこれほどまでに半導体に力を注ぐ理由を、国立台湾大学「重点科技研究学院」のケツシタツ院長に聞いてみた。
ケツシタツ院長は「台湾には石油のような資源がない。その一方で、半導体が戦略的な資源となっていて、例えば中国が台湾に侵攻すれば、半導体のサプライチェーンが破壊され、工場が止まってしまうことになり、世界はそれを許さない。再稼働するまでに少なくとも半年から1年間止まってしまい、その間世界経済全体がストップしてしまうからだ」と述べた。
台湾にとって最大の対中防御策は、もはや米国から供与される武器などではなく、自前で揃えた最先端の半導体工場なのかも知れない。こうした台湾の手法は資源がない日本にとっても大いに参考となるものである。
つまり、「世界にとって不可欠な存在になる」ことで自分たちを守るという発想である。日本も世界に真似できない半導体装置や部材で自国を守るという発想を持つべきである。他方、中国はそれでも台湾に戦争を仕掛けて、半導体物資を台湾まるごと取ってしまおうとするかもしれないという見方もある。こうした事について、米国政府の非公式の代表団として台湾を訪問している米国のアーミテージ元国務副長官が、3つの理由をあげ、否定した。1つ目はウクライナにおけるロシア軍の多大な犠牲を中国が見ていること。2つ目は新型コロナによる都市封鎖で中国国内の経済活動が低下していること。3つ目は台湾への攻撃が地理的に非常に難しいことである。
台湾の安全保障は、ほぼ「半導体」の一本足打法に頼り切っているが、狡猾な中国は必ずどこかに隙を見つけて突き崩しにかかる可能性もある。いざとなったらいつでも米国や日本に移転できるオプションを同時に考えておく必要もあるだろう。
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