新しい戦い方試す米国(5月14日)
地域紛争は起こり得るが、大規模な戦争はもはや起こらないと考えていた人類にとって、ロシアとウクライナ間で戦争が起きてしまったこと、さらには戦車や大砲などによる旧態依然とした戦争スタイルが未だに主流であることが明らかになったことは驚きであった。
ロシアとの核戦争に直結する危険があるため米国やNATOは兵士をNATO非加盟国であるウクライナのために兵士を派遣することができない。しかし、このままプーチンに勝利を与えてしまうことは19世紀的帝国主義が世界各地で復活することにつながりかねない。...
全部読む
地域紛争は起こり得るが、大規模な戦争はもはや起こらないと考えていた人類にとって、ロシアとウクライナ間で戦争が起きてしまったこと、さらには戦車や大砲などによる旧態依然とした戦争スタイルが未だに主流であることが明らかになったことは驚きであった。
ロシアとの核戦争に直結する危険があるため米国やNATOは兵士をNATO非加盟国であるウクライナのために兵士を派遣することができない。しかし、このままプーチンに勝利を与えてしまうことは19世紀的帝国主義が世界各地で復活することにつながりかねない。
これを防ぐ為に、米国は兵士を派遣することはないが、米国が目に見えない形で支援できる新しい3つの手法を編み出した。「武器の無制限貸与」と「ウクライナの目と耳となるインテリジェンス情報の提供」、「ロシアにボディブローを与える金融制裁」である。
一つ目の「無制限武器貸与」で言えば、米国はレンドリース法(武器貸与法)を復活させ、ウクライナに無制限に武器を貸与することでウクライナを側面支援することを決めた。今回、この法案が最もロシアに脅威を与えているのは、第二次大戦時、ナチスドイツとの戦いで劣勢だったソ連を立ち直らせ勝利に導いたのが他ならぬこのレンドリース法であったからである。
二つ目の「ウクライナの目と耳となるインテリジェンス情報の提供」では今回、米国はヒューミントに加え、マクサーテクノロジーズやプラネットなどの民間衛星画像会社による衛星画像の他、GPS位置情報、ロシア軍の通信傍受から得られたインテリジェンスを先回りして積極的に公開し、ロシア軍の動きを鈍らせた。例えば5月9日の対独戦勝記念日にプーチン大統領が「戦争宣言」するとの情報を先回りして公開し、プーチンに「戦争宣言」できなくさせた。さらにロシア軍将校や戦艦の正確な位置を割り出し、ロシア将校殺害や軍艦「モスクワ」撃沈につながった。米国は、いわばウクライナ軍の目と耳の役割を担っている。
三つ目のロシアにボディブローを与える金融制裁についてであるが、ルーブルでの支払いを禁じ、SWIFTからはずすなど、かつてない規模の金融制裁をロシアに対して行い、ロシアの体力をじわじわと奪っている。
以上3つの新たな米国の攻撃は非常に効果的であり、長期戦になればなるほどロシアは劣勢に追い込まれるものとみられるが、唯一の懸念は自暴自棄になった核大国ロシアがなりふり構わない核攻撃に出ることである。慎重な見極めが必要である。
閉じる
米国・ASEAN首脳会議“「包括的戦略パートナーシップ」に格上げを”(5月14日)
米国とASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会議が開かれ、双方の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする方針で一致した。
バイデン政権としては東南アジア各国との関係を強化し、この地域で影響力を拡大させる中国に対抗したい考え。
首脳会議後に発表された共同声明では、双方の関係について今年11月に開かれる首脳会議で「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする方針だとしている。「包括的戦略パートナーシップ」は、中国とASEANが既に結んでいるもので、ASEAN各国の間で米国の地域への関与が不十分だとの受け止めもある中、バイデン政権としては改めて関係を強化し、東南アジアで影響力を拡大させる中国に対抗したい考え。...
全部読む
米国とASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会議が開かれ、双方の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする方針で一致した。
バイデン政権としては東南アジア各国との関係を強化し、この地域で影響力を拡大させる中国に対抗したい考え。
首脳会議後に発表された共同声明では、双方の関係について今年11月に開かれる首脳会議で「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする方針だとしている。「包括的戦略パートナーシップ」は、中国とASEANが既に結んでいるもので、ASEAN各国の間で米国の地域への関与が不十分だとの受け止めもある中、バイデン政権としては改めて関係を強化し、東南アジアで影響力を拡大させる中国に対抗したい考え。
一方、ウクライナ情勢をめぐっては、ASEAN各国の間でロシアとの関係に温度差があり、共同声明では、軍事侵攻したロシアを名指しせず「主権や政治的独立性、それに領土の一体性を尊重することを改めて確認した」と述べるに留めた。
閉じる
米国下院・ウクライナ支援・約400億ドル可決(5月11日)
ウクライナへの兵器の供与や人道支援などを強化するため米国議会下院はバイデン大統領が当初求めていた額から70億ドルさらに上乗せしたおよそ400億ドル、日本円にして5兆2000億円の追加の予算案を可決した。
米国の議会下院は10日、長期化が懸念されるロシアの軍事侵攻を巡ってウクライナへの支援を強化しようとおよそ400億ドル、日本円にして5兆2000億円の追加の予算案を賛成368、反対57の賛成多数で可決した。...
全部読む
ウクライナへの兵器の供与や人道支援などを強化するため米国議会下院はバイデン大統領が当初求めていた額から70億ドルさらに上乗せしたおよそ400億ドル、日本円にして5兆2000億円の追加の予算案を可決した。
米国の議会下院は10日、長期化が懸念されるロシアの軍事侵攻を巡ってウクライナへの支援を強化しようとおよそ400億ドル、日本円にして5兆2000億円の追加の予算案を賛成368、反対57の賛成多数で可決した。
米国議会は与党民主党と野党共和党の対立が深刻でさまざまな法案が成立しない状況が続いているが、ウクライナへの支援を巡っては超党派の合意が得られていて、予算案はバイデン大統領が当初求めていた330億ドルからさらに70億ドル上乗せされ、およそ400億ドルとなった。
予算案にはウクライナへの兵器の供与や米軍が提供する兵器の補充、ウクライナ政府への経済支援、それに人道支援などが含まれていて、近く上院でも可決される見通し。米国の有力紙「ニューヨークタイムズ」は「これまでに議会が承認した外国政府への支援としては少なくとも過去20年間で最大規模だ」と伝えている。
閉じる
米国・武器貸与法が成立(5月10日)
米国・バイデン大統領は、ウクライナへの支援を強化するため、武器などの迅速な対応を可能にする法案「レンドリース法(武器貸与法)」に署名し、成立した。
武器貸与法により、米国はウクライナやほかの東ヨーロッパ諸国に武器などを貸与する際、手続きが簡略化され迅速な支援が可能となる。
武器供与と軍事情報供与でロシア追い込む米国(5月7日)
5日、複数の米国メディアは4月の黒海艦隊旗艦「モスクワ」の撃沈は米国側の情報を基にウクライナ軍が攻撃したと報道した。またロシアの将官殺害をめぐっても位置情報を米国政府がウクライナに提供していたとしている。
こうした軍事情報はAWACSや衛星、ヒューミントなどからの情報を基にしており、米国は今後さらなる詳細な軍事情報をウクライナ側に提供する考えを示している。
米国が提供していることを明らかにすることによってロシアがどこにいて何をやろうとしているのか、全て筒抜けになっているということをロシア側にわからせてロシアの動きを止めようというのが米国の作戦である。...
全部読む
5日、複数の米国メディアは4月の黒海艦隊旗艦「モスクワ」の撃沈は米国側の情報を基にウクライナ軍が攻撃したと報道した。またロシアの将官殺害をめぐっても位置情報を米国政府がウクライナに提供していたとしている。
こうした軍事情報はAWACSや衛星、ヒューミントなどからの情報を基にしており、米国は今後さらなる詳細な軍事情報をウクライナ側に提供する考えを示している。
米国が提供していることを明らかにすることによってロシアがどこにいて何をやろうとしているのか、全て筒抜けになっているということをロシア側にわからせてロシアの動きを止めようというのが米国の作戦である。
精度の高い情報を先に出すことでロシアの動きをけん制するというやり方を米国は今回の戦争で終始一貫してやってきた。
直近では5月9日にプーチン大統領が戦争宣言をするという情報も確度の高い米国のインテリジェンス情報であり、これを先回りして公開してしまったため、ロシア・ペスコフ報道官は否定せざるを得ない立場に追い込まれてしまった。
米国には武器供与と軍事情報供与の2本柱でロシア側を圧倒していきたい思惑があるが、ロシア側が正常な判断能力を持っていない場合、裏目に出る可能性もないとはいえない。
逆にプーチン大統領を刺激し、化学兵器使用や小型核爆弾の使用など、なりふり構わない予測不能な手段をとらせてしまうリスクもあるので、そうさせないよう細心の注意を払いながらぎりぎりの攻防を行っていると考えられる。
閉じる
「米国バイデン政権」内の検索