【北朝鮮を追う】
最高人民会議開催される ~金正恩委員長は参加せず~(4月13日)
12日北朝鮮の最高人民会議が開催された。出席者のなかに金正恩委員長の名前はなく、欠席したものと思われる。金正恩委員長が最高指導者になって以降、最高人民会議に参加しなかったのは2014年、15年、18年に次いで4回目。昨年は1日目は欠席したが、2日目のみ出席した。本年はすでに最高人民会議の閉会が告げられている。
最高人民会議では、歳入の予算・決算案や2019年の活動状況および20年の課題など6議案が議論され、採択された。
2019年の歳入は、予算の1.5%増、歳出は0.2%減であった。北朝鮮は指数しか公表していないが、ラジオプレスが発表している昨年までの歳入額、歳出額をもとに計算すると、19年の決算額は歳入で91.54億ウォン、歳出で90.06億ウォンとなり、予算の段階では519万ウォンの赤字であったものが、1.48億ウォンの黒字になっている。ただし昨年に続き、予算執行の面で問題があったことも指摘されている。経済幹部が「経済活動に対する国家の統一的指導と戦略的管理を実現することができず、経済活動全般が活力あるものに前進」できなかったというのである。
一方予算では、歳入が4.2%増、歳出が6.0%増となっており、2019年の決算数字をもとに計算すると775万ウォンの赤字となる。支出では国防費を予算総額の15.9%にするとされており、昨年の予算(決算も)の15.8%より0.1ポイント高くなっている。もっとも2018年も予算では15.9%であったが、決算では15.8%になっていた。国防費の予算に占める割合は、金正恩委員長が政権について以降(2012年の最高人民会議以降)は、2013年に16.0%になったほかは、15.8%から15.9%で推移している。
また今年から国家投資固定資産減価償却金を予算に反映するとしており、減価償却の概念が導入されたことが注目され、また今後企業活動でも減価償却が導入されるかも注目される。
一方活動報告では、工業総生産額は8%増、電力部門は3%増などと報告されているが、化学工業部門は「生産を大きく成長させた」、機械工業部門は「重要指標の年間生産計画を超過遂行した」という表現にとどまっている。この2分野は北朝鮮が力をいれている分野にも関わらず、計画を遂行できなかったものと思われる。
また農業も「不利な気象条件でも穀物生産で最高収穫年度の水準を突破した」という曖昧な表現にとどまっており、計画を遂行できなかった可能性が高い。
さらに観光事業を発展させるために、2019年に金正恩委員長が度々現地指導に訪れていた三池淵市建設や陽徳温泉文化休養地などについては、建設部門のなかで述べられており、前者は「第二段階工事を完工」、後者は「奇跡的な成果を収めた」という表現がなされ、具体的な成果には触れられていなかった。
また経済制裁下では、貿易も停滞しているものと思われるが、「輸出入活動で厳しい規律と秩序をたて」「方法を革新」することが求められており、国の利益を守るために、経済制裁下の隙間をぬって貿易を行うことが求められている。
さらにわざわざ医療保健部門に言及し、医学的監視と隔離によって、コロナウィルスの感染症を防ぎ、たった一人の感染者も発生していないことが強調されている。
今年の活動方針としては、昨年末から再三強調されている「難関を正面突破」することが改めて強調されている。
また党は経済政策貫徹に向けた統一的な作戦を保障するが、経済司令部は内閣が担うとされた。
会議ではこの他に、リサイクリング法や遠隔教育法、除隊軍官生活保障法の採択が行われ、人事問題が話し合われた。
戻る