タリバン支配後のアフガニスタンをめぐる米中関係(8月21日)
バイデン政権は米国国民の厭戦ムードやアフガンに介入から20年という区切りの良さに目を奪われ、アフガニスタンから退避するタイミングを見誤った。
現時点で言えることは、退避すべき米国人や米軍がまだアフガニスタン国内にいるため、8月末の撤収プランは変更を迫られている。これらの人々は、80年代の米国大使館占領事件の時のように人質にされないとも限らないことなどで、バイデン大統領は苦境に立たされている。...
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バイデン政権は米国国民の厭戦ムードやアフガンに介入から20年という区切りの良さに目を奪われ、アフガニスタンから退避するタイミングを見誤った。
現時点で言えることは、退避すべき米国人や米軍がまだアフガニスタン国内にいるため、8月末の撤収プランは変更を迫られている。これらの人々は、80年代の米国大使館占領事件の時のように人質にされないとも限らないことなどで、バイデン大統領は苦境に立たされている。
今後の国家の方向性について、タリバンの上層部は「民主主義に立脚しない政治を行う」と明言していることからわかるように一筋縄ではいかない政権が誕生することは確かである。
今後、タリバンと同じスンニ派のアルカイダやISなど、イスラム過激派がアフガニスタンに集結し、この国が国際テロの温床になる可能性も十分にあり得る。最悪の事態は、タリバンが統治を誤り、内戦状態に陥る可能性もある。
タリバン主導のアフガニスタンがうまくいく場合のシナリオは、中国が強く介入した場合である。中国・王毅外相は「さらなる圧力を(タリバンに」かけるのではなく、(新政府を認めるよう)前向きに考えるべきだ」と対タリバン強硬派の英国をけん制したことからもそうした予兆が読み取れる。
既に中国はタリバンに経済支援と投資を約束しているが、一義的にはアフガニスタンに埋蔵されているレアース、鉄、銅、原油などの豊富な地下資源や安い労働力を狙っているものとみられる。
中国には別の狙いもあり、タリバンを懐柔することによってウイグル族のテロ活動を抑え込み、ウイグル族弾圧を正当化したい思惑と、「一帯一路」実現に向け米国の影響力を徹底的に排除した中央アジアを自らが、グリップしていきたいという強い思いがあると考えられる。
来年2月の北京五輪開幕式でタリバン主導のアフガニスタン選手団の入場シーン見れるかどうかは今後の中国の手腕にかかっていると言っても良いかも知れない。
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始まるアフガンをめぐる米中のせめぎ合い(8月17日)
アフガニスタンの首都カブールが陥落し、米国大使館から米国大使館員がヘリコプターで脱出するという衝撃的なシーンが伝えられた。
この映像で思い出されるのは、46年前の1975年、ベトナム戦争終結時の映像である。サイゴン陥落を前に米国大使館からヘリコプターで大使館員が脱出するというこの時の映像は、「米国のベトナム戦争敗北」を象徴する映像として映画でも取り上げられた。今、アフガニスタンでこの時と全く同じことが起きている。...
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アフガニスタンの首都カブールが陥落し、米国大使館から米国大使館員がヘリコプターで脱出するという衝撃的なシーンが伝えられた。
この映像で思い出されるのは、46年前の1975年、ベトナム戦争終結時の映像である。サイゴン陥落を前に米国大使館からヘリコプターで大使館員が脱出するというこの時の映像は、「米国のベトナム戦争敗北」を象徴する映像として映画でも取り上げられた。今、アフガニスタンでこの時と全く同じことが起きている。
今回のアフガン撤退の決断について、バイデン大統領はいつになく強硬だった。米国国内からも、批判の声もあがっていたが、方針は見直さなかった。
退避支援のため、追加で1千人の米軍部隊を派遣し、8月31日までにすべての関係者の撤収を完了させるとしている。アフガニスタン政府に対しては、自国のことは自国で守るよう呼びかけている。米国としては当初の目的であったオサマビンラディンを殺害し、ある程度民主化も進んだと判断した上での決断であった。
一方、タリバンは中国やロシアの協力をとりつけるなど、首都カブールの無血入場に向けて用意周到な準備を着々と進めていた。先月28日にはタリバン政治委員会・バラダール議長をはじめ、宗教評議会、宣伝委員会などから成る外交使節団が中国・天津に出向き、王毅外相がこれを出迎え、タリバンに対する投資を約束した。
タリバン新政権による新生アフガニスタンが、隣国で反米のイランやパキスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンなどと連なり「一帯一路」構想の中に組み込まれていくことは必然的な流れである。
中間選挙に向けて共和党・トランプ大統領がアフガニスタンからの米軍撤退について「ユーラシア大陸において中国を勢いづかせるきっかけになる」と攻撃材料にしてくる可能性もある。大きな変化が予想される。
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北京五輪・米国国連大使・中国に厳しく対応(8月10日)
米国・トーマスグリーンフィールド国連大使は、東京五輪の閉会式に米国政府代表として出席。来年冬の北京五輪について、同盟国や友好国と協議を進めているとした上で、新疆ウイグル自治区などでの人権状況をめぐり中国に厳しく対応していく姿勢を示した。
バイデン政権は北京五輪について、参加をめぐる米国の立場は変わっていないとしているが、米国議会は政府関係者の派遣を見合わせる外交的ボイコットを求める内容を盛り込んだ法案を可決。人権状況をめぐり超党派で中国への圧力を強めている。
オリンピックにみる米中の争い(8月9日)
先端技術や貿易、軍事、安全保障などありとあらゆる分野で深刻化する米中対立だが、平和の祭典であるオリンピックも例外ではなく、両国は熾烈なメダル争いを展開した。
金メダルの数で中国にリードされていた米国チームは最終日に女子バスケットボール、自転車女子オムニアム、女子バレーボールの3種目で金メダルを獲得し、金メダル数を39個にし(中国は38個)、金メダル数でも総メダル数(米国は113個、中国は88個)でも中国を追い抜き、民主主義のスポーツ大国としての意地を見せた。...
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先端技術や貿易、軍事、安全保障などありとあらゆる分野で深刻化する米中対立だが、平和の祭典であるオリンピックも例外ではなく、両国は熾烈なメダル争いを展開した。
金メダルの数で中国にリードされていた米国チームは最終日に女子バスケットボール、自転車女子オムニアム、女子バレーボールの3種目で金メダルを獲得し、金メダル数を39個にし(中国は38個)、金メダル数でも総メダル数(米国は113個、中国は88個)でも中国を追い抜き、民主主義のスポーツ大国としての意地を見せた。
最終日を迎えるまでは中国の方が金メダル数が多く、米国は苦しい立場に追い込まれていた。
中国は五輪の独占放映権を持つ米国・NBCが総メダル数ベースで順位をつけ、米国を1位にしていることについて「悪意に基づく偏向報道だ」とクレームをつけていた。
米国が置かれた厳しい状況は選手の表情にも反映されていた。中国選手団は明るく生き生きと見えた一方で、米国選手団の方はどことなく元気がなく、精彩に欠けているようも見えた。
2022年に行われる冬季北京五輪は中国は地元開催ということもあり、中国がかなりの数のメダルを獲得するものと予想される。
米国が、人権問題を理由に参加ボイコットでもしない限り、われわれは金メダル数、メダル総数で中国が米国を上回る光景を目撃することになるかもしれない。
現実にそうなった場合、中国はこれを北京五輪でお披露目されるハイテクや、2022年に完成する中国版宇宙ステーションと絡めつつ、今やスポーツ分野、宇宙分野、ハイテク分野においても、中国の方が米国より上であるということを世界に伝えるための政治宣伝に利用してくる可能性は高い。
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中国・ベンチャー企業の締め付けを強化(8月7日)
ここにきて中国当局が国内新興ベンチャー企業に対して締め付けを強化している。特にIT系企業に対する中国政府の風当たりが相当厳しくなっている。
国営新華社通信系国営紙・経済参考報はゲームを「精神的アヘン」と批判し、「テンセント」に圧力をかけ、その後、同社は12歳未満の子供に対する全面的なゲーム禁止に踏み切る可能性を示した。
6月にニューヨーク証券取引所で新規株式公開を果たした大手配車サービスの「ディディ」や、2014年に上場済みの「アリババ」も中国当局の規制対象となっている。...
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ここにきて中国当局が国内新興ベンチャー企業に対して締め付けを強化している。特にIT系企業に対する中国政府の風当たりが相当厳しくなっている。
国営新華社通信系国営紙・経済参考報はゲームを「精神的アヘン」と批判し、「テンセント」に圧力をかけ、その後、同社は12歳未満の子供に対する全面的なゲーム禁止に踏み切る可能性を示した。
6月にニューヨーク証券取引所で新規株式公開を果たした大手配車サービスの「ディディ」や、2014年に上場済みの「アリババ」も中国当局の規制対象となっている。
「アリババ」傘下の電子決済サービス「アリペイ」を運営する「アントグループ」の上場が中止に追い込まれたことは記憶に新しいが、同グループは金融データの引き渡しを当局から要求されるなど、厳しい管理下に置かれている。
2030年にもGDPで米国を追い抜こうという中国だが、中国経済に勢いをつけた立役者であるこうした企業群に対して、規制を強化することは、一歩間違えれば、自分で自分の勢いを削ぐに等しい行為である。
中国がこうした強い措置を取るようになった背景には、彼らが中国共産党の1党支配を脅かすほどに大きくなり過ぎたということがある。
中国当局の裏をかいて覇権を争っている米国で上場を果たすというようなことは中国共産党の面子を潰す行為であり、絶対にあってはならないことであったとも言える。
こうした企業を中国は一気に潰すことはしないとみられるが、少なくとも影響力を低下させ、彼らがもっていたビッグデータや技術を国家に移行しデジタル監視国家を構築を目論んでいるものとみられる。
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