緩和と緊張を使い分け韓国を翻弄する北朝鮮(2月3日)
いよいよ平昌五輪開幕直前となった。アイスホッケーの南北合同チーム結成など、韓国・文政権は南北融和ムードを最大限に演出しているが、一部の韓国メディアはこうした動きに批判的な姿勢をみせている。こうしたメディアに反発し北朝鮮は、金剛山での開催を予定していた南北合同文化行事を一方的にキャンセルしてきた。北朝鮮は、緩和と緊張を使い分けながら韓国、国際社会を翻弄している。
喫緊の懸念は北朝鮮の軍事パレード
喫緊の懸念は平昌五輪開幕日の前日に北朝鮮が行うとしている軍事パレードで、五輪直前になって本来、別の日だった朝鮮人民軍創建記念日をわざわざこの日に変更してきたという経緯がある。...
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いよいよ平昌五輪開幕直前となった。アイスホッケーの南北合同チーム結成など、韓国・文政権は南北融和ムードを最大限に演出しているが、一部の韓国メディアはこうした動きに批判的な姿勢をみせている。こうしたメディアに反発し北朝鮮は、金剛山での開催を予定していた南北合同文化行事を一方的にキャンセルしてきた。北朝鮮は、緩和と緊張を使い分けながら韓国、国際社会を翻弄している。
喫緊の懸念は北朝鮮の軍事パレード
喫緊の懸念は平昌五輪開幕日の前日に北朝鮮が行うとしている軍事パレードで、五輪直前になって本来、別の日だった朝鮮人民軍創建記念日をわざわざこの日に変更してきたという経緯がある。北朝鮮は米国が五輪終了後すぐに米韓合同軍事演習を行うとしていることに反発し、国連に対し「完全に軍事演習を中止させるための努力を期待する」と訴えるなどしているが、長距離ミサイルなど自国の最新兵器を米国にアピールするデモンストレーションとして軍事パレードを使うものとみられる。「38ノース」は衛星画像で1万2000人の兵士と110台の戦車などが北朝鮮の訓練場に集結しているのが確認できたことを明らかにしたが、軍事パレードに向けた動きなのかが気になるところだ。
日米の動き
トランプ大統領は1月30日に行った一般教書演説で「北朝鮮が核・ミサイル開発で近い将来、米本土への脅威となりうる」と北朝鮮に対する強い危機感を表明し、「米国は過去の政権が犯した過ちを繰り返すわけにはいかない」として、北朝鮮に最大限の圧力をかけ、北朝鮮に譲歩しない姿勢を示してみせた。また2日夜には安倍首相と電話会談を行い、両首脳は北朝鮮に最大限の圧力をかけていくことで一致した。こうした動きから見ていくと五輪後の米韓合同軍事演習の中止を米国が応じるとは考えにくく、北朝鮮も予定どおり軍事パレードを行うものとみられる。
北朝鮮軍事パレードが最大の焦点
軍事パレードが行われた場合、確認すべきポイントは米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)である火星15号が登場するかどうかという点である。昨年11月に金正恩委員長が「火星15号を大量生産し、ただちに実戦配備せよ」と言っていたことは記憶に新しいが、もしこれが登場した場合には、いよいよ北朝鮮がICBMの実戦配備に入ったというシグナルと米国がとらえる恐れがあり、米国の先制攻撃論に拍車がかかる可能性がある。前回もお伝えしたがグアム・アンダーセン航空基地には、合計15機3種類の米空軍主力爆撃機が集結し不測の事態に備えているという状態にあり、平和の祭典の裏で緊張が極度に高まっているといえそうだ。
北朝鮮・中国・ロシア念頭に米国がNPR発表
こうした中、トランプ政権は中長期の新たな核戦略を示した核体制の見直し(NPR=Nuclear Posture Review)を策定し発表した。この中でトランプ政権は「脅威に対抗し、攻撃を未然に防ぐには、核による抑止力を強める必要がある」として、これまでの方針を大きく転換させ、爆発力の小さい低出力核弾頭(小型核)や核巡航ミサイルの新規開発を表明した。NPRは米国や同盟国のインフラなどに対する非核攻撃にも核で報復する可能性を明記し、北朝鮮やロシア、中国などを念頭に入れた内容となっている。安全保障環境の悪化を危惧し米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は地球滅亡までの時間を象徴的に示す「終末時計」を30秒進め、残り2分としている。
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平昌五輪開会日前日に北朝鮮が軍事パレード(1月27日)
米国が平昌五輪を理由に韓国にフリーハンドを持たせているかのような状況の中で、北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長はまるで日米の足元を見ているかのように北朝鮮軍の創設記念日を平昌五輪の前日に変更することを決定した上、この日に軍事パレードを行ない、核・ミサイル技術の完成と核保有国の地位獲得をアピールするよう指示した。五輪開会式の前日にパレードを行うことで世界の関心を北朝鮮に集めさせ、いつでも戦える姿勢をアピールしたい狙いがある。...
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米国が平昌五輪を理由に韓国にフリーハンドを持たせているかのような状況の中で、北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長はまるで日米の足元を見ているかのように北朝鮮軍の創設記念日を平昌五輪の前日に変更することを決定した上、この日に軍事パレードを行ない、核・ミサイル技術の完成と核保有国の地位獲得をアピールするよう指示した。五輪開会式の前日にパレードを行うことで世界の関心を北朝鮮に集めさせ、いつでも戦える姿勢をアピールしたい狙いがある。韓国情報筋によれば軍事パレードでは北朝鮮が保有するほぼすべての兵器を動員させ、核搭載ICBMと移動式発射台も登場するという脅威度の高いパレードになる可能性が高いという。
(気がかりな大会中の北朝鮮の動き)
今回の平昌五輪はサムジヨン管弦楽団の参加やアイスホッケーでの南北共同チーム結成など南北融和や北朝鮮の話題一色であり、まるで平壌五輪のようだと言われている。南北融和の雰囲気を醸成したその先には五輪期間中だけ延期させた米韓合同軍事演習の凍結を北朝鮮は見据えているとみられる。その動きに文政権が同調した場合には日米韓の間にくさびが打ちこまれる形になり、北朝鮮情勢は重大な局面を迎えることになるだろう。その場合には中国やロシアが仲介の準備があると言い出してくる可能性がある。一方で気がかりなのは、北朝鮮が軍事パレードを行うとしている開幕式前日(8日)で、この日はサムジヨン管弦楽団の公演も予定されている。軍事パレードに連動した内容を楽団が計画している可能性もないとは言い切れない。2015年には、北朝鮮のモランボン楽団が中国公演をキャンセルしたが、その背景には同楽団の楽曲や演出が金正恩委員長を讃えたり、ミサイル発射を賛美したりする内容であることが事前にわかったためだともいわれている。今回、仮にこうした動きが察知された場合にはサムジヨン管弦楽団の公演もキャンセルとなり、北朝鮮の選手団なども一斉に五輪から撤退する可能性もあり、一気に融和ムードは消失することになるが、北朝鮮としては軍事パレードに世界の注目を集めさせただけでも成功といえる。
(不測の事態に備えて着々と予防戦争準備を進める米国)
現時点で北朝鮮にこけにされた格好になっている米国だが、この状況をただ、指をくわえて見ているわけではない。水面下では不測の事態に備えて着々と予防戦争準備を進めているようだ。米海兵隊・ネラー総司令官はCNNのインタビューで「これまで経験したことのない困難な戦いに備えなくてはならない。その戦いには人間離れした強さが必要になるだろう」と述べ、着々と米軍が対北朝鮮との戦争準備を進めていることを示唆した。すでにグアム・アンダーセン航空基地には、合計15機3種類の米空軍主力爆撃機が勢揃いしているという。
(北朝鮮情勢の今後を占う試金石となる日韓首脳会談)
こうした中、安倍総理は平昌五輪開幕式の参加を決断した。一時は日韓合意をめぐり、不参加も検討されていた。韓国側はこの決定を歓迎し、日韓首脳会談も9日、五輪会場付近で行う方向で調整されている。安倍総理としては韓国・文在寅大統領に日韓合意を着実に履行するようしっかりと伝え、北朝鮮に対して、日本、米国、韓国の3カ国が連携して、最大限の圧力を維持する方針を強調するものとみられる。現時点では文大統領は北朝鮮寄りの姿勢を鮮明に打ち出しているが、北朝鮮出身の文大統領にとって朝鮮半島統一は自らの悲願でもあり、今回の平壌五輪はその願望達成のための願ってもないチャンスともいえる。一方、北朝鮮側は韓国を呑み込んだ形での朝鮮半島統一を考えており、水面下での両国の主導権争いが透けて見えている。
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米国財務省“北朝鮮の関与”個人・企業など制裁(1月25日)
米国財務省は24日、北朝鮮による大量破壊兵器の開発や資金稼ぎに関与しているとして、中国やロシア国内で活動する個人や企業などの団体、それに船舶を、米国国内の資産を凍結するなどの制裁の対象に追加すると発表した。
制裁の対象となる個人は、北朝鮮の軍関係の取り引きや化学兵器の開発にも関与しているとみられる北朝鮮企業の代表として中国やロシアなどで活動する11人と、中国の銀行に口座を保有しキムジョンウン政権の資金稼ぎを手助けしているとする北朝鮮籍の5人。...
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米国財務省は24日、北朝鮮による大量破壊兵器の開発や資金稼ぎに関与しているとして、中国やロシア国内で活動する個人や企業などの団体、それに船舶を、米国国内の資産を凍結するなどの制裁の対象に追加すると発表した。
制裁の対象となる個人は、北朝鮮の軍関係の取り引きや化学兵器の開発にも関与しているとみられる北朝鮮企業の代表として中国やロシアなどで活動する11人と、中国の銀行に口座を保有しキムジョンウン政権の資金稼ぎを手助けしているとする北朝鮮籍の5人。
また、約95億円相当の貿易を行った中国企業2社をはじめ、北朝鮮の海運会社が所有する船舶6隻などが制裁の対象となった。
この中には、去年8月に採択された国連安全保障理事会の制裁決議で、輸出が一切禁止された石炭をロシア・サハリン南部のホルムスクの港に運んだ船も含まれている。
米国・ムニューシン財務長官は声明で「中国やロシアなどで活動する違法な関係者を標的にしており、それらの者の追放を求める」と強調し、制裁逃れの防止などで、中国やロシアに一層の対応を促す狙いもあるとみられる。
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米国・CIA長官“北朝鮮次は複数同時発射能力”(1月25日)
米国CIA中央情報局・ポンペイオ長官が講演した。
その中で、北朝鮮が核・ミサイル開発を断念する兆しが見られないという見方を示し、そのうえで「論理的に次の段階は兵器集積だ」と述べ、北朝鮮が次に目指すのは米国に向け弾道ミサイルを複数同時に発射する能力だと指摘し、それを阻止する考えが重要だという考えを示した。
(融和モードの裏で核ミサイル開発を続ける北朝鮮)
五輪で南北間には融和モードが高まっている。北朝鮮側は平昌五輪にフィギュアスケートペア、クロスカントリー、アルペンスキー、アイスホッケー女子の4種目に参加する意向を示している。南北次官級協議では平昌オリンピックにおいて両国が統一旗を持って入場することや、北朝鮮が美女応援団を含む230人規模の応援団を派遣することが表明された。最も注目なのは南北合同チームが女子アイスホッケーに参加することだが、選手や監督からは不満が出ている。...
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(融和モードの裏で核ミサイル開発を続ける北朝鮮)
五輪で南北間には融和モードが高まっている。北朝鮮側は平昌五輪にフィギュアスケートペア、クロスカントリー、アルペンスキー、アイスホッケー女子の4種目に参加する意向を示している。南北次官級協議では平昌オリンピックにおいて両国が統一旗を持って入場することや、北朝鮮が美女応援団を含む230人規模の応援団を派遣することが表明された。最も注目なのは南北合同チームが女子アイスホッケーに参加することだが、選手や監督からは不満が出ている。平昌五輪への参加で韓国との融和ムードが高まる裏で北朝鮮は今も核ミサイル開発を続けている。さらに北朝鮮は、五輪開会式前日に軍事パレードを行う動きを見せている。米国の北朝鮮研究機関「38ノース」は海軍造船所の衛星写真を公開し、SLBM潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験に向け、最終段階に入った可能性を指摘した。北朝鮮は安倍首相が東欧で北朝鮮への圧力を訴えて回っていることに対して反発を強めていることが気がかりな点といえる。
(今後の北朝鮮情勢はどうなる?)
米国の基本的な方針にはまったく変わりがない。五輪は平和の祭典なので、正式に冷や水を浴びせるようなことはできないが、今は短い間の平穏を保ちつつ、準備は着々と進めている。ティラーソン国務長官も北朝鮮への圧力継続をはっきりと表明している。マティス国防長官が北朝鮮問題に対して「軍事計画がある(15日)」と述べたのは核放棄の姿勢を示さない北朝鮮との行き過ぎた南北の融和ムードに釘をさすためだった。五輪終了後に今までの緊張状態が再燃するものとみられる。
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