12月25日、その日の朝は冷え込んでいた。食事を済ませ9時半ごろ自宅から、江戸川に出て市川橋を渡った。
空は曇って、手元のウォッチで気温を確認すると、7℃でかなり寒かった。
それでも、河原での野球場は全て埋まっていて、みんな元気に声を出していた。
土手上のサイクリング道を北上し、柴又の寅さん公園に隣接している「山本亭」に向かった。
実は、その日は船橋の三番瀬に行こうと考えていたが、自宅からその方向を見ると、江戸川から湾岸道に出る辺りで、白い煙がもうもうと上がっていたので、火事でもあったのかと推察し、行く先を変えたのだった。後から、テレビのニュースで、それが火事だとわかり驚いた。
「山本亭」は、東京でも3本指に入る日本庭園で、前にも数度行ったことがあった。
北総鉄道がかかる鉄橋を過ぎると、間もなく寅さん公園に着いた。
その日は、そこから公園の中の坂を自転車で下ってみた。入梅の頃松の下で、雨宿りしていた猫を発見し、動画で撮影した場所であった。
綺麗に整備されている表の庭から、その家の中に入った。
そこから見る庭園は、手入れが良く、真ん中に作った池には、錦鯉が泳いでいた。
確かに、小振りではあるが、池を挟んで松や造作が大正時代の日本庭園を感じさせてくれた。
新しくしつらえた畳に座り、白玉が入った汁粉をそそり乍ら、しばし庭を目で楽しんだ。
その邸宅の裏には「防空壕」と称する井戸のような形状に竹で編んだ覆いがしてあったのが印象的であった。
大正、昭和を駆け抜けてきた、時を感じさせてくれた。
見れば、今は江戸川の堤防もうず高くがっちりしているが、当時はその邸から川面を直接見ることができ、矢切の渡しの船の往来も一望できたのかもしれないと想像した。
そんな感傷にふけりながら、再び江戸川の土手を走り、帰宅した。11時半ごろ再び、気温を確認すると8℃であった。
寒く、とても汗などかくはずもなかったが、今年最後の江戸川巡りも終わった。
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