3月26日、その日は寒い1日だった。毎年3月の陽気は、春を感じさせるポカポカの日もあれば、真冬を感じさせる日もある。
東京では桜が開花したと発表されてたが、また花が閉じてしまうのではないかと心配になるほどの寒い日がやってくる。
しかもその日は、朝からしとしとと雨が降り、寒さをひとしきり感じさせた。
サイクリングをあきらめ、前日庭園内に入らず、素通りした清澄白河にある「清澄庭園」に電車で行くことにした。
JR市川駅から朝10時頃、快速電車に乗り、錦糸町で地下鉄半蔵門線に乗り継ぎ、「清澄白河」駅で降りた。
前日走った、細い道を歩くと、入り口があった。
入場券を買い中に入ろうとすると、中年の男性が声をかけてきた。
「ボランティアでガイドしていますが、良かったら案内させていただきますか」と傘をさしながら、もう一方の手にバインダーを抱えていた。
予期しない事に、一瞬戸惑ったが、「あっ、お願いいたします」と応えていた。
入り口から見ると、大きな池が目の前に広がり、松がその周りに綺麗に配置され、瀟洒な橋が架けられた、美しい日本庭園が眼前に広がった。
「130年前に、三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎が作った庭園です」とガイドされ、大きな手水鉢のような置物から、その庭園の物語が始まった。
とにかく、大きく形の良い石が、あちらこちらに配置されていた。中には伊豆から運んできた礎石や磯石などが、調和のとれた位置に置かれ、趣向を尽くした造りが印象的であった。
その中には、赤石もあった。佐渡から運ばれてきたもので、鉄分が多く含有されて、表面が赤色に染まっていた。
大きな池の向こうには、富士山を模った大きな造作も存在感があった。
涼亭と呼ばれる、緑の二重屋根を擁した建物が、池の水の上に建っていた。
桜の一種と思われる、少し濃いめの花が咲いている木々も彩を添えていた。
「古池や・・・」と書いた大きな碑も、そこにはあった。ガイドによれば近くにある松尾芭蕉庵所縁のものだそうだ。
かっては、隅田川から水を引いていた名残の古い水路もあった。
奈良から運んできたという、背の高い灯篭があっちこちに配してあった。
木間から見える隣の「深川図書館」の明治風の建物が、風情にマッチしていた。
少し大きめの小石の群は、川の流れを表現しているのだと聞いてみると、なるほどと頷くことができた。
池には、沢山の鴨が浮かんでおり、風情を増していた。
時々、すれ違う外国人達も、こうした和風の庭園を満喫しているのか、お互いに会釈して通り過ぎた。
大財閥の創始者が造り、楽しんだ庭園を現代では、気楽に満喫できるとは、なんと幸運な事かと感謝し、その公園を後にした。
寒さを癒すために、近くのそば屋で、暖かいものを口にした。
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3月19日、その日9時過ぎに江戸川に着き、市川側の土手を南下し、東京湾を目指した。
手元のウォッチでは、既に13℃の気温を表示していた。確かにこれまでの寒さは一気に消え去ったが、その代り強い風に悩まされた。
行徳橋を渡り、少し走ると右手にメトロの巨大な操車場に10両編成ほどの車両が3、4列止まっているのが確認できた。
数本のピンクに色づいた桜の木が見えた。夏になるとバーべキュー広場になる辺りであった。
9時半ごろには、人の気配がなかったが、12時過ぎに戻ってくると、そこには大勢の人が集まって楽しそうにやっていた。
東京湾の突先から、湾岸道路を使い、浦安の美浜で海沿いのサイクリングロードに出た。
暫らく、海を左手に見ながら走ると、無数の鴨が海に浮いている光景に出っくわした。堤防沿いに数キロにわたり鴨が波間で遊んでいる様子が見えた。
時折、カモメがスーっと気持ち良さそうに空を飛んでいた。
太陽は雲に隠れたままの薄曇り状態であったが、遠く幕張や貨物船の影がうっすらと確認できた。
その道が丁度、曲がる辺りには、見晴らしの良い休憩所があり、そこからまさに海縁に降りると、海鳥たちが目の前に迫ってきた。
風が強いのに、あえてカモメは羽を広げ、滑空していた。海が広く見え、波間に海鳥達が揺れていた。
その辺りから引っ返して、湾岸道路から今度は、市川塩浜方向に右折した。
海辺に出ると、小さな漁船が何隻もコンクリートの防波堤に囲まれた小さな港に係留されていた。
市川にもこうした漁港があるのかと改めて認識した。防波堤に2か所ほど、レストゾーンがあり階段を上ってみるとコンクリートの椅子が用意され、片隅に「三番瀬の自然」と題した案内板が置いてあった。
先週行った、船橋の三番瀬とこの辺りは一体になっているようだとの印象を持った。季節ごとに様々な渡り鳥がやってくるようだが、その時は発見することができなかった。
湾岸道路から、また江戸川へと戻った。強い向かい風に苛まれながらなんとか1時前に帰宅できた。途中に「無人の風力観測所」があったので、その表示を探したが見つからなかった。
しかし、金属でできた風車は、えらいスピードでぐるぐる回っていた。
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