ジョー・バイデン大統領(78歳)は3月下旬、世界の主要40ヵ国の首脳を招待して気候変動対策を協議するサミットを開催するとぶち上げた。同大統領にとっては、前政権の不始末の是正(パリ協定復帰や自国第一主義の否定)をアピールする場として有益かも知れないが、環境問題専門家らは、対面ではない首脳会議で、実のある気候変動対策が協議され、結論が見出されることは期待できないと分析している。
4月20日付
『AP通信』:「バイデン大統領主催の気候変動サミット、対面外交ではなくオンライン形式」
最も実践的な政治家と言われるジョー・バイデン大統領が今週、世界の主要40ヵ国の首脳に声掛けして気候変動サミットを開催する。
同大統領の明白な目的は、ドナルド・トランプ前大統領が内向きの政策で世界を困惑させた4年間の修正で、気候変動対策に関わるパリ協定復帰を改めて宣言することである。...
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4月20日付
『AP通信』:「バイデン大統領主催の気候変動サミット、対面外交ではなくオンライン形式」
最も実践的な政治家と言われるジョー・バイデン大統領が今週、世界の主要40ヵ国の首脳に声掛けして気候変動サミットを開催する。
同大統領の明白な目的は、ドナルド・トランプ前大統領が内向きの政策で世界を困惑させた4年間の修正で、気候変動対策に関わるパリ協定復帰を改めて宣言することである。
ただ、ホワイトハウスが、4月22、23日に開催される当サミットの意義を強調すればする程目立つのが、オンライン形式の会議であることから、バイデン大統領が得意とする対面外交の場ではないということである。
実際問題、同大統領が4月16日に、初の外国首脳として菅義偉首相(72歳)を招いて会談した際、“対面会談以上に有意義な会合は考えられない”とし、“菅首相との直接会談が持ててとても貴重なことだ”と発言している。
そして、同大統領就任後の2月に初めて外交首脳と会談したのが、カナダのジャスティン・トルドー首相(49歳)であったが、オンライン会議であったことに失望していた。
ホワイトハウスによると、韓国の文在寅大統領(ムン・ジェイン、68歳)が5月に来米するとし、また、バイデン大統領自身が6月に外遊するという。
ただ、そのときまで対面会談が持てない以上、目立った外交成果は期待できず、気候変動サミットも例外ではない。
環境問題専門家も、今回の気候変動サミットにおいて、2015年の歴史的なパリ協定と同レベルの展開があると期待してはならないとしている。
かつて、国連気候変動枠組み条約事務局長としてパリ協定成立にも一役買ったクリスティアナ・フィゲレス氏(64歳、コスタリカ外交官、2010~2016年同事務局長在任)は、“パリ協定最終案を詰めるのに、コンマやピリオドも、また一文一文も全て100回余り交渉して全関係者の同意を得る必要があった”と述懐している。
従って同氏は、“今回のオンライン会議では、各国がこれまで表明してきた努力目標について、改めて表明することに留まろう”とコメントした。
もしかしたら環境活動家は、バイデン大統領の説得によって、日本や韓国、更には中国が突然、新設石炭火力発電所への資金投入を止めると宣言することを期待しているかも知れない。
しかし、マサチューセッツ工科大学(1861年設立の私立大学)地球環境変化研究センター共同創設者のヘンリー・ジャコビー教授は、“世界が見守る中で、40ヵ国の首脳がオンライン会議の席上で何か大きな決断をするはずがないし、できるはずがない”と笑って否定した。
従って、今週の気候変動サミットは、言わばバイデン大統領他の首脳の顔見世会合の意味合いが強く、気候変動対策での実のある大きな進展は、今年11月にスコットランド(英国)で開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)まで待たねばならない。
ビル・クリントン及びジョージ・W.・ブッシュ両政権下で、国務省気候変動対策担当であったナイジェル・パービス氏は、11月までの7ヵ月間に気候変動対策協議で奮闘するのは各国首脳ではなく、例えば直近で中国含めた諸国を歴訪したジョン・ケリー気候問題担当大統領特別特使(77歳)らの担当外交官の仕事となるとコメントした。
また、国連のアントニオ・グテーレス事務総長(71歳、元ポルトガル首相)も4月19日、スコットランドでの直接会合による気候変動対策協議進展に期待していると表明している。
なお、バイデン大統領も、今週の気候変動サミットをオンライン会議とする必要性についてよく理解している。
何故なら、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題の収束が見えない中、多くの首脳に移動を強いて、また一堂に会することによってもたらされるリスクを考える必要があること、更には、政権として、感染拡大防止のために旅行や移動は控え、可能な限りリモートでの対応を推奨している手前、今回のサミットを対面会合とするのは相応しくないと考えられるからである。
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