イスラム教国パキスタン(1947年英国より独立)では、国技と呼ばれる程クリケット人気が高く、その元代表選手で1992年クリケット・ワールドカップにおいて同国に初優勝をもたらしたイムラン・カーン氏(68歳)が第23代首相に就いている。ただ、同氏が率いる与党・パキスタン正義運動(1996年設立)は、国民議会(下院に相当)では多数派を形成しているものの、元老院(上院に相当)では野党連合に負けている。そこで、直近の元老院議員選挙に現職財務相を候補に立てたが、僅差で野党々首に敗北してしまった。しかし、同首相は選挙に不正があったとして無効を主張し始め、国民議会での信任投票を強行しようとしている。なお、信任投票は賛成多数で可決された。
3月5日付
『AP通信』:「パキスタン野党、カーン首相の信任投票強行にボイコットで対抗」
パキスタンの野党連合代表は3月5日、イムラン・カーン首相が国民議会で週末に強行しようとしている信任投票に対して、ボイコットで対抗すると発表した。
実は3月3日に実施された元老院議員選挙(注後記)において、同首相が推したハフィーズ・シーク財務相が、野党・パキスタン人民党(1967年設立)党首で元首相のユスフ・ラザ・ジラーニ氏(68歳)に僅差(164対169)で敗北してしまっている。...
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3月5日付
『AP通信』:「パキスタン野党、カーン首相の信任投票強行にボイコットで対抗」
パキスタンの野党連合代表は3月5日、イムラン・カーン首相が国民議会で週末に強行しようとしている信任投票に対して、ボイコットで対抗すると発表した。
実は3月3日に実施された元老院議員選挙(注後記)において、同首相が推したハフィーズ・シーク財務相が、野党・パキスタン人民党(1967年設立)党首で元首相のユスフ・ラザ・ジラーニ氏(68歳)に僅差(164対169)で敗北してしまっている。
そこで、同首相は、選挙に不正があったとして投票が無効だと主張し始めた訳だが、野党から退陣要求が提出されたことに抵抗して、国民議会で3月6日に信任投票を実施すると宣言するに至った。
同首相の与党・パキスタン正義運動は、前回2018年元老院議員選挙で躍進して、最多議席を獲得しているものの、野党連合に対しては53対47で依然劣っている。
しかし、国民議会(定数342)では与党は157議席と多数派を形成していることから、連合を組む他党からの賛成票を得ることによって、過半数を優に超える180票を獲得し、信任される可能性が高い。
そこで、野党連合パキスタン民主運動(2020年、11党で構成)代表のファズルー・リーマン国民議会議員(67歳)が3月5日、当該投票をボイコットすると宣言した。
なお、同首相としては、元老院でも多数派を構成すべく画策したものの、主要候補者が惜敗したことに我慢ができず、選挙管理委員会に対して、自由で公平な選挙を実施できなかったと責任追及しただけでなく、国民議会議員が選出する元老院議員候補者に対する投票で15、16票の“買収”が行われたとまで主張した。
これに対して、選挙管理委員会も3月5日、どの政党も政治家も“選挙結果を真摯に受け入れる”ことが肝要だとした上で、選挙制度そのものを貶めてはならないと猛反論している。
3月6日付『パキスタンAP通信』:「イムラン・カーン首相、賛成多数で信任」
イムラン・カーン首相は、3月6日にパキスタン国民議会(定数342)で実施された信任投票において、過半数を優に超える178票を獲得して信任された。
同首相が、3月3日に実施された元老院議員選挙で不正があったと言い出したことから、野党連合が同首相の退陣を要求した。
そこで同首相は、野党連合の要求を拒否しただけでなく、国民議会での信任投票を実施することを決定した。
野党連合パキスタン民主運動(議席数160)はボイコット戦略を取ったが、与党連合(同180)が僅かの造反者を出しただけで難なく勝利を得たものである。
(注)元老院議員選挙:1973年に設立された元老院は、定数104、任期は6年で半数が3年毎に改選。選挙では、88人が4州の州議会議員による間接選挙、8人が国民議会議員による間接選挙、4人が首都選出議員として大統領が選出、残り4人が宗教的マイノリティより選出。
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