既報どおり、中国は来年2月初めに北京冬季大会開催を控えているが、西側諸国や国際人権団体が、中国の人権問題を理由として開催に否定的である。しかし、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題をいち早く収束に向かわせ、自国開発のワクチンの提供にも積極的であることから、中国政府は国威発揚、国際社会の支持獲得のためにも、是が非でも同大会開催に漕ぎ着けよう。一方、日本は、依然COVID-19抑制に難儀しているばかりか、ワクチン接種も主要国より大幅に遅れていることもあって、国内外から予定どおりの開催を危ぶむ声が日増しに多くなっている。
3月3日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「中国の冬季大会開催必至で東京オリンピック開催が至上命令に」
1年延期された今夏の東京オリンピック・パラリンピックについて、日本の主催者等が開催必須と繰り返し強調している理由はいろいろ挙げられるが、公に取り沙汰されていない理由がもうひとつある。
それは、来年2月初めに迫った北京冬季大会の開催である。
中国は、COVID-19発症地として種々苦難があったが、欧米諸国に先んじてほぼ収束に向かわせているばかりか、自国開発のワクチンを提供していくことで国際社会からの支持を得ようと画策している。...
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3月3日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「中国の冬季大会開催必至で東京オリンピック開催が至上命令に」
1年延期された今夏の東京オリンピック・パラリンピックについて、日本の主催者等が開催必須と繰り返し強調している理由はいろいろ挙げられるが、公に取り沙汰されていない理由がもうひとつある。
それは、来年2月初めに迫った北京冬季大会の開催である。
中国は、COVID-19発症地として種々苦難があったが、欧米諸国に先んじてほぼ収束に向かわせているばかりか、自国開発のワクチンを提供していくことで国際社会からの支持を得ようと画策している。
すなわち、中国の冬季大会開催は必定的である。
しかし、菅義偉首相(72歳)にとって、依然COVID-19感染が抑制できていないことや、世界における感染状況も収束が中々見通せない現在、果たして東京大会が予定どおり開催できるのか非常に深刻な問題となっている。
早稲田大学(1882年前身設立)国際政治学のデイビッド・レーニー教授は、“もし日本が、COVID-19を収束させられず、ワクチン接種も十分行われないことを理由として東京大会が開催できず、一方で中国は冬季大会を開催できるとなれば、日本にとって大きな打撃となろう”とコメントした。
中国は、日本にとって最大の貿易相手国である一方、安全保障上の脅威ともなっていて、領有権を争う尖閣諸島周辺海域では、双方の監視船が領海侵犯しないようにお互いに牽制し合っている。
ただ、国際的大イベントであるオリンピック開催は、日中双方にとって、世界に対するプレゼンスを発揮する最大の機会でもある。
しかし、東京大会については、北京大会に比して旗色が悪い。
COVID-19感染問題で1年延期されたばかりか、依然この収束が見通せないことから、世論の支持が低くなっている。
そして、更に悪いことに、女性差別発言で主催者代表が辞任に追い込まれるスキャンダルが発生したかと思えば、開催に漕ぎ着けるために無観客を条件とすることも取り沙汰されるようになり、華やかさも活況もとても期待できない恐れが出てきている。
それでも菅首相は1月29日、世界経済フォーラムのオンライン会議の席上、“人類がCOVID-19に打ち勝った証しとして、東京大会を是が非でも開催する”と高らかに宣言している。
一方、日本にとって不吉な前兆として、国際オリンピック委員会(IOC)が2月初め、公式ツイッター画像を北京冬季大会のものに入れ替えていることが挙げられる。
うがった見方をすれば、IOCは東京大会を、2022年北京大会の1年前カウントダウン・イベントの扱いに変更したとみられなくもない。
冬季大会の規模は、夏季大会に比べて大きくはないが、中国にとって、夏季大会も冬季大会も同じ都市の北京で開催することは世界初のことであるため、非常に大きな意味を持つ。
すなわち、COVID-19発症地との悪いイメージを払拭するには十分な効果をもたらすと考えられるからである。
ただ、中国にとっても、北京大会開催に全く問題がない訳ではなく、特に西側諸国や国際人権団体が問題視している、中国政府によるウィグル族イスラム教徒等の少数民族への迫害政策である。
国際人権団体は、各国オリンピック委員会や国際競技団体に対して、北京大会ボイコットを呼びかけているし、2月下旬には、西側諸国を代表するかのように、カナダ下院議会が、ウィグル族の人権侵害が“民族大量虐殺”だと非難する決議を圧倒的多数で採択している。
東京大会が昨年3月下旬、1年延期に追い込まれたのも、カナダが(COVID-19蔓延の最中)東京大会に選手団を派遣しないと決定したことも原因のひとつと考えられることから、北京大会開催に向けて、カナダが吹かす逆風もどれだけ強くなるのか予断を許さない。
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