茂木敏充外相(65歳)は1月19日の記者会見で、前日になされた文在寅大統領(ムン・ジェイン、67歳)の発言に関して、“姿勢の表明だけでは、評価を行うことは難しい”とコメントした。これについて、米メディアは、前日の同外相による国会でのスピーチに言及して、日本政府主張を含めた経緯を淡々と報道するも、韓国メディアは、日本政府が“大統領発言へのコメントを保留”したことを強調して報じている。一方、香港メディアは、日韓関係がこじれているだけでなく、新型コロナウィルス(COVID-19)問題に伴う景気後退もあって、2019~2020年にかけて173社の海外企業が韓国を撤退しているが、今後更に増えるだろうと伝えている。
1月19日付米
『AP通信』:「日本政府、韓国政府に対して戦時賠償請求を棄却するよう要求」
茂木敏充外相は1月18日の国会におけるスピーチで、韓国側が、第二次大戦当時の慰安婦及び徴用工に関して“違法な”賠償請求をしていると非難した。
同外相は、今月初めにソウル地裁が、元慰安婦12人の賠償請求を認める判決を下したのは、“国際法上も、また、日韓両国の関係上も、全く受け入れられないこと”だと強調した。
日韓関係は、2018年に韓国最高裁が元徴用工による賠償請求を認める判決を下して以来、険悪な状態になっていたが、今回の地裁判決で、両国間の緊張が益々高まっている。
日本側は、1965年に合意した日韓基本条約によって、慰安婦も徴用工の問題も含めた補償として5億ドル(編注;当時の韓国の年間国家予算に相当、他に民間借款3億ドル)拠出しており、全ての問題は解決済みだと主張している。
一方、文在寅大統領は1月18日、最高裁判決に基づいて被告日本企業の資産が現金化される前に、両国間の外交上の解決策に合意できなければ、“両国関係にとって望ましくない”と表明した。
更に同大統領は、慰安婦問題に関わる地裁判決も、日本との関係改善に努めている最中であることから、“正直言って事態を複雑化”しかねないとも発言した。
しかし、同大統領は、外交上努力しているとする詳細については一切明らかにしていない。
なお、慰安婦問題に関して、日本側は1995年、官民合同での「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を立ち上げ、詫び状とともに61人の韓国人元慰安婦に対して、1人当り500万円(4万8,200ドル)を支給している。
更に2015年にも、日韓両政府が最終的かつ不可逆的な解決を確認した「慰安婦問題日韓合意」に基づき、10億円(900万ドル)を拠出している。
しかし、文政権は、前政権による当該合意は不完全なものだとして、これを取り消している。
同日付韓国『KBSニュース』(1927年設立の公共放送):「日本、歴史問題に関わる文大統領の発言について評価を保留」
茂木外相は1月19日の記者会見で、前日になされた文大統領の発言に関して、姿勢の表明だけでは評価を行うことは難しい、とコメントした。
文大統領は、直近のソウル地裁判決に関して、日本との関係改善のための外交上の努力をしている最中のことで、少々困惑していると述べていた。
なお、同外相は、両国はお互い重要な隣国だとしながらも、直近数年にわたり、韓国側が両国間合意事項を反故にしていると強調した。
一方、同日付香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙:「“慰安婦”に関わる直近判決で日本企業が更に脱韓する恐れ」
2018年の韓国最高裁による、戦時徴用工損害賠償請求を認める判決を契機に、日韓関係が険悪となったことから、2019~2020年にかけて、日産やオリンパス等の日系企業45社が韓国から撤退している。
それ以外にも、文政権の経済政策失敗に伴って韓国経済の深刻度が増したことから、合計173社が撤退している。
日本企業以外で多いのは、米国25社、香港17社である。
国際経済評論家の分析によれば、今回の“慰安婦”に関わる地裁判決が出されたことにより、在韓の日系企業が更に引き上げるだろうという。
また、COVID-19問題に伴う世界的不況によって、他の外国企業も韓国から撤退するとみられている。
なお、菅義偉首相(72歳)は1月18日の国会での施政方針演説の中で、これまでの両政府間合意に基づいて、韓国側に対して適切な対応を求めていくと言及した。
一方、文大統領は同日に、2015年の慰安婦問題に関わる日韓合意は公式なものと認めながらも、それぞれの歴史認識に基づいて両国間で解決策を見出していくことが必要だと述べている。
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