議会占拠という事件を受けツイッターは、ドナルド・トランプ大統領の投稿がさらなる暴力を扇動する可能性があるとしてアカウントを凍結。他社もこれに続いた。IT企業の対応は妥当か、言論の自由はあるのか、意見が分かれるところである。
1月11日付米国
『フィナンシャル・タイムズ』は「ツイッターVSトランプ:大手IT企業はやりすぎか?」との見出しで以下のように報道している。
SNS上での暴力扇動への取締りを受け、言論の自由に関する議論が起きている。先週の議事堂での暴動を機に、トランプ大統領のツイッターやFacebookのアカウントが凍結された。アップル、グーグル、アマゾンは、熱心な右翼支持者らの多くが使用するparlerの取締を始めた。...
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1月11日付米国
『フィナンシャル・タイムズ』は「ツイッターVSトランプ:大手IT企業はやりすぎか?」との見出しで以下のように報道している。
SNS上での暴力扇動への取締りを受け、言論の自由に関する議論が起きている。先週の議事堂での暴動を機に、トランプ大統領のツイッターやFacebookのアカウントが凍結された。アップル、グーグル、アマゾンは、熱心な右翼支持者らの多くが使用するparlerの取締を始めた。これにより、IT企業のコンテンツポリシー違反者への検閲権か、個人の表現の自由かの間で論争が起きている。
トランプを批判する人は、締め出しを遅すぎるくらいだと肯定的にとらえている。しかし一方で、政治権力を一部の民間企業が握っているのではとの懸念も起きている。長年、SNS企業は、トランプ氏への対応をすべきだというプレッシャーを受けてきた。左派は、プラットフォームが暴力を煽り、陰謀を助長し誤情報を拡散するツールだと危惧していた。そして、トランプ派による議会議事堂への襲撃により、SNS凍結肯定への総意に至ったのである。
ツイッターの元幹部は、同社はこれまでトランプに対し、非常に寛容であったと言う。だが、20日のジョー・バイデン氏の就任式に向けて、更なる暴動となるのを抑えるため、やらざるを得なかったのだという。トランプ氏や支持者は、怒りの反応を見せ、ホワイトハウスは、ツイッター社員らはトランプ氏を黙らせるため、「民主党や急進左派と結託している」としている。
一方で、この取締は遅すぎたという意見もある。バークレー校の公共政策教授で、元クリントン政権の労働長官ロバート・ライシュ氏は、「IT企業は、4年遅すぎる。トランプの噓や陰謀、憎悪が根深くなるのを助長した。」とする。しかしながら、IT企業は民主党やバイデン次期政権の規制の動きによる批判を避け、自社の利益のために動いているに過ぎないとの見方をする者もいる。
現在トランプ氏は支持者や世界中との交信の場が限られている。独自のプラットフォーム立ち上げを謳ってはいたが、それもウェブ運営側からの取締の対象となる場合もありだろう。多くは、Facebookが大統領を永久凍結するかを見守っている。 「Facebookのアカウントが復活するような場合は、そこが新たなツイッターの役目となり、主な投稿の場となるだろう。だが、反対派の中心的存在としての政治的影響力は限られたものとなるだろう。」とメディアマターズ・フォー・アメリカ(右派メディア監視機関)のAngelo Carusone 氏はいう。
同付英国『ガーディアン』は「トランプのSNS凍結で分かれる意見」との見出しで以下のように報道している。
SNS上でのトランプのアカウント停止で世論が割れている。議事堂占拠をうけ、ドナルド・トランプとその扇動的な投稿をどうするかを巡り、IT企業が出した答えはアカウント凍結だった。まずツイッター、その後はFacebook、そして Snapchat、Spotify、Twitch、Shopify、Stripeがそれに続いた。一方、Reddit、TikTok、ユーチューブ、更にピンタレストまでもが大統領やその行動を支持する投稿を制限するに至っている。これが言論の自由を巡る議論を呼び、IT企業が審判を下せるのかとの賛否が巻き起こっている。
これまで傍観していた人でも、今回の議会事件で賛成派へ考えが変わっている。言論の自由活動家Jillian・York氏は、アカウント停止を肯定しつつも、企業を褒めるのは注意すべきだという。「特にFacebook はそれに値しない。何か月も要求がありながら、最後まで対策を取らなかった。何か月もやろうとしてきたが、現職大統領への対応を問題としたツイッター社はまだマシな方だ。」とする。リチャード・ブルーメンソール上院議員は、「議会での命の犠牲の上に、政治の風向きが変わった。IT企業がやっとトランプの脅威に気づいたのだ。」とツイートしている。
反対意見は以下である。当然、ドナルド・Jr.は、「左派に支配され、言論の自由がない。」と反対している。「サンデータイムズ」(英紙)の論説は、「現職大統領の締め出しは、どちらにせよ、言論の自由への反対と映る。ミシェルオバマがIT企業に要求する声を上げたことで、政治意図が働いたとの疑惑が生じるのは必然だ。」としている。ドイツのメルケル首相は月曜、言論の自由を基本的な権利だとし、トランプのアカウント停止を「問題視する」との姿勢を示した。
シリコンバレーの影響力を懸念する声もある。ビッグ・ブラザー・ウォッチ(市民の自由とプライバシー擁護組織)は、「自国の大統領から国家を守るため、当該司法機関や民主主義ではなく、企業のサービス停止に依存するとはアメリカの民主主義の危機である。」とする。世界の指導者、ボルソナロやモディ等のツイッター上のヘイトスピーチは問題視せず、アメリカの政治に過度に関心を寄せるリスクも懸念される。「トランプだけを叩くのは問題。我々は社会全体の問題として捉えねばならない」とする。
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