中国は、トランプ政権が進めた対中強硬政策に業を煮やしていた。ここへきて、中国マネーになびいていたはずの欧州やアジアの一部の国々も表立って中国に反発する対応を取り始めている。そうした中、バイデン新政権も基本的に中国に厳しく当たることが予想され、益々中国包囲網が進むことを懸念してか、欧米対峙で同様の立場にあるロシアに対して、相互扶助を再確認すべく、習国家主席がプーチン大統領に直接の電話で訴えている。
12月30日付米
『ニューズウィーク』誌:「習国家主席、プーチン大統領との電話会議で中ロ関係が“切っても切れない”固い絆で結ばれていることを確認」
中国国営メディアによると、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)は12月28日、盟友であるウラジーミル・プーチン大統領(68歳)との電話会談において、中ロ関係は“特別で”かつ“切っても切れない”固い絆で結ばれていることを称賛したという。
ロシア大統領府も、両巨頭が、現在の中ロ関係は“史上最も高度なレベル”となっているとお互いを褒め称えたと公表している。...
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12月30日付米
『ニューズウィーク』誌:「習国家主席、プーチン大統領との電話会議で中ロ関係が“切っても切れない”固い絆で結ばれていることを確認」
中国国営メディアによると、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)は12月28日、盟友であるウラジーミル・プーチン大統領(68歳)との電話会談において、中ロ関係は“特別で”かつ“切っても切れない”固い絆で結ばれていることを称賛したという。
ロシア大統領府も、両巨頭が、現在の中ロ関係は“史上最も高度なレベル”となっているとお互いを褒め称えたと公表している。
両国は、ともに西側諸国から制裁を科されていることもあって、習国家主席としても、両国が経済発展及び軍事提携で“戦略的連携”を益々強化していく必要があると考えている。
『新華社通信』によると、習国家主席は、“危機的状況にあるからこそ、中ロの特別な緊密関係が益々重要となる”と発言したという。
中ロ両国は先週、米国が政権交代期にあることもあって、両国間の連携をアピールする目的で、両軍戦闘機によって日本海及び東シナ海上空の監視飛行を実施した。
日本及び韓国両政府は、4機の中国軍H-6K爆撃機及び2機のロシア軍Tu-95爆撃機による領空侵犯を懸念して、12月22日にスクランブル発進を行った旨発表している。
なお、同日に王毅外交部長(ワン・イー、67歳)はセルゲイ・ラブロフ外相(70歳)と電話会談を行い、両国間の“満足のいく”強力関係を称え、同時に米国による両国への一方的な制裁措置に対して一緒になって非難している。
一方、ジョー・バイデン次期大統領(78歳)は、選挙期間中に習国家主席を“ならず者”と呼んでいたが、12月28日に改めて、アジア太平洋地域の民主主義国と協調して中国に対抗していくと語った。
バイデン氏は、“中国による貿易、先端技術、人権問題他に関する不当な政策は看過できず、同様の考えを持つ国々と連携し、より強い力を以て対峙していく”と述べている。
バイデン政権は、アジアにおける米国の国際安全保障確保及び影響力行使に対して、中ロ両国が最大の脅威となると認識するであろうが、中ロ両国の連携強化にてこずる可能性がある。
何故なら、中ロ両国にとって2021年は、2001年に江沢民国家主席(チャン・ツェーミン、94歳)とプーチン大統領間で締結された中ロ善隣友好協力条約の20周年に当たり、両国間関係が新たな段階に発展するものと考えられるからである。
プーチン大統領は10月、米大統領選の結果が判明する以前に、当初は可能性がないとみられていた中ロ軍事同盟について、“理論的に十分考えられる”とほのめかす発言をしている。
同日付中国『新華社通信』:「ロシアの専門家ら、中ロ関係は他国にとって良い参考となるパートナーシップと称賛」
ロシア人専門家らは、中ロ関係は他国にとって良い参考例となるパートナーシップだと評価するコメントを出した。
彼らは『新華社通信』のインタビューに答えて、2020年は世界にとって散々な年であったが、であるからこそなおさら、中ロの包括的なパートナーシップ戦略は他国にとって見習うべき好例となるだけでなく、世界の戦略的安定を維持する上で大きな貢献をしていると語った。
ロシア経済大(1992年設立の公立経済研究大学)アジア研究学部長のアンドレイ・カメーエフ教授は、“中ロ関係は両国の安定及び社会経済の発展に寄与しているだけでなく、両国は国際問題で共通の認識を保有している”とした上で、“両国は決して自国だけでの利益を追求することなく、国際社会全体の発展に努めている”と述べている。
また、サンクトペテルブルク大(1724年設立の公立大学)のヤナ・レクシューチナ教授は、“今年は大変な一年だっただけに、国際社会の安定に寄与しようとしている中ロパートナーシップがより成果を上げている”とした上で、“両国が出資している新開発銀行(NDB、注後記)が、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題で社会経済に大きな打撃を受けた国々に対して資金援助を行っており、これこそが両国が他のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)新興国と共に国際社会に貢献している証左である”と力説した。
更に同教授は、“2001年に締結された中ロ善隣友好協力条約の下、両国間のパートナーシップが更に強化、発展した”とした上で、“同条約締結20年周年を迎える来年、両国が同条約を更新し、更に広い分野での連携強化が図られることが期待される”とも付言している。
(注)NDB:BRICSの5ヵ国が運営する国際開発金融機関。国際通貨基金(IMF)の補完・代替を目指す目的で2014年に設立。本部は上海及びヨハネスブルグ。「BRICS銀行」と呼ばれることもある。
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