米国に対抗する国々は、大統領選から新政権に移行するまでの2ヵ月間の空白期間に、思い切った行動に出ようとしている。ロシアもそのひとつで、欧米諸国がお互いに牽制している間に、地球上の天然資源の2割余りが賦存する北極圏の開発に着手する構えを見せている。
12月12日付
『PJメディア』オンラインニュース(2004年設立の保守系メディア):「新たな冷戦:ロシアが米国に先んじて北極圏の資源開発に着手意向」
北極圏(注1後記)には、地球上に賦存する石油・天然ガスの22%に加えて、その他膨大な鉱物が眠っている。
これまでのところ、同地域から天然資源を回収する技術がなかったが、今後の最先端技術開発によって収益性の伴う資源開発が行われるようになれば、同地域に領土を持つ諸国間で資源の奪い合いが起こる可能性がある。...
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12月12日付
『PJメディア』オンラインニュース(2004年設立の保守系メディア):「新たな冷戦:ロシアが米国に先んじて北極圏の資源開発に着手意向」
北極圏(注1後記)には、地球上に賦存する石油・天然ガスの22%に加えて、その他膨大な鉱物が眠っている。
これまでのところ、同地域から天然資源を回収する技術がなかったが、今後の最先端技術開発によって収益性の伴う資源開発が行われるようになれば、同地域に領土を持つ諸国間で資源の奪い合いが起こる可能性がある。
米国は、大自然の宝庫であり、ホッキョクグマの生息域でもあるので、保護すべき場所だとみている。
しかし、ロシアは、米国他の国々に先行する戦略を取ろうとしていて、果たして北極圏資源開発に収益性が期待できるのか見極めたいとみられる。
確かに、ロシアは北極圏内に領土の約20%があるが、それ以上の国際上の権利を主張する
考えである。
国連海洋法条約(UNCLOS、注2後記)では、海岸線から200海里(約370キロメートル)までを排他的経済水域(EEZ)と宣言できるが、領土から続く浅瀬が“大陸棚(注3後記)”と証明できれば、EEZを350海里(約650キロメートル)まで拡大することが可能となる。
従って、UNCLOSに基づくロシアの主張が認められれば、欧米諸国の干渉を無視して北極をロシアのEEZに帰属させることが可能となる。
また、中国は北極圏から900マイル(約1,440キロメートル)も離れているため、北極圏に直接関わる国ではないが、“北極至近”の国と主張し始めている。
何故なら、中国はこれまで、北極圏内のグリーンランド、フィンランド、アイスランドに巨額の投資を行ってきており、そこを通じて同圏内の資源開発を進めようと考えているとみられるからである。
更に、中国はロシアから大量の天然ガスを買い付けていることからも、間接的に北極圏に関わっているとも言える。
なお、ロシアが一度北極圏内で掘削を始めてしまえば、どんな契約もまた国際会議の決定もロシアの活動を制約することになるまいし、また、ホッキョクグマの生息域保護の問題も全く関心を示さないであろう。
(注1)北極圏:北緯66度33分の緯線で、北半球の地理学上の寒帯と温帯とを区分する境界線。夏至の日はこの緯線上で太陽は地平線下に沈むことがない白夜となり,冬至の日は終日太陽が現れない。この以北に領土を持つ国家はアイスランド、米国、カナダ、スウェーデン、デンマーク(グリーンランド)、ノルウェー(本土とスヴァールバル諸島)、フィンランド、ロシア連邦がある。
(注2)UNCLOS:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月に第3次国連海洋法会議にて採択され、1994年11月に発効した条約。2019年4月末現在、168の国・地域と欧州連合が批准しているが、米国、トルコ、ペルー、ベネズエラは非締結。ただし、深海底に関する規定以外の大部分の規定が慣習国際法化しているため、これら非締約国も事実上海洋法条約に従っている。国際海洋法において、最も普遍的・包括的な条約であり、基本条約であるため、別名「海の憲法」とも呼ばれる。
(注3)大陸棚:深海に向かって著しい傾斜の増大が生ずる深さまでの大陸を取り巻く海底地域。
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